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君の笑顔はどこへ行く

作者: 辰野

 君とは昔からの知り合いで、ずっと俺の隣にいた

 君の隣には俺がずっといるものだと信じて疑わなかった


 だけど、それは叶わない

 いつしか君の隣には俺ではない、別の男が立っていた



 君と一緒の登下校、君と一緒の休み時間

 だけどそこに君の姿はない


 俺の隣には誰もいないけれど、

 君の隣にはあの男がいた


 とても楽しそうに笑って、すごい幸せそうだった

 そんな君を見て

 嬉しくもあり、寂しかった


 君の選んだ道だから、僕は後ろでそっと見守っていようと決めた

 俺がどんなに辛い思いをしようとも、君が幸せならそれでいい

 知ってしまった恋心は心の奥底にしまうことにした



 いつからだろうか、君の笑顔がどこか引きつっているように感じ始めたのは

 気になりはしたものの、君を問いただすことはしなかった



 それから約1ヶ月、君の笑顔が消えた


 いつもぼーっとしており、感情をあらわにすることがなくなった

 話しかけても反応がない

 次第に、誰も寄り付かなくなった



 君の隣にはもう俺はいない、君の隣にはあの男がいる


 けど、心配ぐらいはさせてくれ

 人を傷つけてしまったんじゃないのか、人に言えないようなことがあったんじゃないのか、重い病気にかかってるんじゃないのか、

 思いついたのは悪いことばかりだ

 君の隣じゃないかもしれないけれど、君の親友ではあるはずだ


 君は授業が終わるとすぐにあの男の下に行く


 急いでる君の手をとって話を聞こうとした

 そしたら君は驚かず、声をあげず、

 ただただ振り向いただけだった


 誰が見てもただ振り向いただけ

 それでも俺には君がとても痛がっているように見えた


 試しに肩の上に手を置いてみた

 いつもなら怒るのに抵抗しようとしない

 今度はハッキリと君が痛がっているのが分かった


 誰にも見つからないように君を多目的用トイレに連れ込み、制服を脱がせた

 それでも君はなにも抗うことなく、俺の言うとおりに制服を脱いだ



 ひどいありさまだった


 体中に痣や火傷のあとがあり、見ているだで痛そうだ

 それも、服で隠せられるようなところに集中しているのがえげつない


 なにも言わなくても分かった

 君から笑顔を奪ったのはあの男だった


 俺の代わりに君の横に立った男

 俺の代わりに君を笑顔にさせてくれるはずの男


 そんなあいつが君から笑顔を奪っていた


 許せない

 君を痛い目にあわせたあの男、君を幸せにしてくれなかったあの男、

 そしてなによりも、

 君がこうなるまで気付けなかった俺自身が許せなかった


 いつのまにか俺は君を抱きしめていた

 君は痛みで顔を歪めながらも逃げることはなかった


 絶対に君を守り続けるから

 何があっても君の隣に立ち続けるから


 君は涙を流しながらも唇を重ね合わせてきた

 唇が離れる頃には君はかすかに笑っていた

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