これは...
見知らぬ土地。
見知らぬ建物。
何もかもが見たことのない場所だった。
俺はそこの、黒くて固そうな道に立っている。
両側に白線が引いてある、なんとも奇妙な道だ。
辺りに並ぶ家もどこか近未来風で、レンガ造りの家が主流のうちの国とは大きな違いがあった。
きっとこの国は文化が発達しているのだ。
...奴隷制度があるのなら、この国の奴隷は大変だな。
文化の発達した国には必ず奴隷の苦労があるのだ。
それを生身で体験している俺は、いるかも分からないこの国の奴隷を尊敬した。
朝なのか人通りは少なく、家々の明かりもまだちらほらとしかついていない。
道に音と呼べるものは存在していなかった。
だからこそ、その空気感を全く気にしていないような彼らは記憶に残ったのかもしれない。
最初は少女が歩いているだけだった。
白い長袖のシャツの首元に赤いリボンをつけ、短すぎるスカートを履いている。
上半身と下半身の装備にワンシーズンほどの差がある気がするが、それは置いておく。
少年が道に現れたのはその少しあと。
少女と同じようなシャツの首元にはネクタイをつけ、黒い長ズボンを履いていた。
「流莉ー!」
手を振りながら少女の方へ駆けていく。
少年の明るさとは裏腹に、少女は声が聞こえた瞬間青ざめた。
「いやー、朝から流莉に会えるなんて」
少年は少女の歩幅に合わせて歩き始めた。
少女の反応は気にしていないのか?
それもわからないバカなのか。
「気安く、話しかけないでください。」
刹那、少年の腹に少女のバック?がクリーンヒット。
そんなやり取りも、どこか楽しげで。
自然と羨ましく、何故か懐かしく思った。