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~少女仙機譚短編~迅雷のヴァルリッツァー

作者: 藤辰

挿絵(By みてみん)

 ~気現歴344、初春の出来事である~


モニターが点滅し、けたたましいアラームが鳴り響く。

いや、それだけに留まらない。既に爆音と振動は、この制御室まで届いていた。敵が到達するのも、時間の問題であろう。

男は大慌てでモニターを操作する。

残されたすべての罠を展開し、敵を駆逐しようと試みる。

しかし、展開した瞬間につぶされる。知略や戦略ではない、単純な力技。こちらの想像を上回る出力の何かが、全てを無に帰している。

冗談ではない。ここまで準備期間に5年、実際に動き始めてから更に3年かかっているのだ。今さら計画がとん挫するなど考えられない。

考えられないのだが……。

「ダメだ!!  全て突破された!!」

もうすぐそこまで、敵は迫っている。

男はここにきて後悔する。もっと早い段階で、逃げだしておけばよかった。

初めからこの計画をかぎつけられた段階で、正面から戦う事など無謀だったのだ。だからこそ、ずっと陰でこそこそと計画を進めていたのだ。

残り3日という期間なら、戦い抜けるなどと考えるべきではなかったのだ。

だが、それも後の祭り。今はこの後突っ込んでくる敵に対し、正面からの勝負を挑む他ならない。

男は愛用の杖型の伝機を掴む。

残っているモニターで、再度敵影を確認する。

少女だ。おそらくまだ十代前半の、幼さの残る顔立ち。

しかしその手には剣型の伝機。装備は所々に銀色の鎧を身にまとっている。間違えなく、その少女は仙機術師であった。

だが、男もそのくらいのことならば動じない。彼もまた仙機術使い。その実力は、軍人のそれに近いものがあった。

問題は、そこではないのだ。彼女の使う高威力の攻撃。それは間違いなく旧文明の遺産が絡んでいた。

旧文明の遺産。人類に牙をむく過去の遺産。……自分が使おうとしていた、強大な力。

しかし、まさか同じ旧文明の遺産を持つ存在が、攻めてくる事など予測して居なかった。

男は、冷静に術式を組む。

彼は偶然手に入れた旧文明の遺産を掌握していたし、過去にも旧文明の遺産との戦いを制した経験があった。故に、旧文明の遺産に関しての扱いや対処法は心得ていた。

少女の持つ旧文明の遺産は、高威力、高範囲の攻撃型とみられる。ならば、それに対応した術で迎え撃つしかない。

狭い空間に、そして敵は未知のフィールドに突っ込んできている。ならば、敵が現れた瞬間に不意をつければ良い。

だが、その程度のことは相手も考えているはずだ。おそらく突入と同時に、でたらめな力を解放してくるだろう。

男はそこまで読む。読んだ上で術式を組む。

高威力の攻撃に真っ先に反応しカウンターで発動する術。効果は、麻痺と気絶。ようは、使い手が行動不能になればいいのだ。

術式を組み終える。カウンター罠タイプの術。あとは、突入してきた敵の気を引けば、確実に仕留められるはずだ。

次の瞬間、爆音とともに部屋の入口が破壊された。

同時に突っ込んでくる少女の影。しかし罠は発動しない。どうやら、男の作戦は看破されたらしい。

(ただの仙機術でこられたのか!?)

だとすると、その程度の出力の技では、罠は発動しない。あくまで、攻撃特化の旧文明の遺産の出力を意識して設置した罠である。

だが、男は未だ冷静である。すぐに攻撃を切り替え伝機に仙気を走らせると、それで突っ込んできた少女を殴り飛ばした。

勢いよく弾き飛ばされる少女。随分あっけなく攻撃を受けている。

どうやら素人……とまでいかなくとも見習いの術者のようである。

これならば、まだ勝機はあるかもしれない。男は僅かながらに希望を見出した。

この後はもう、脱出して身をひそめるしかない。

身をひそめて……、しかしまた時間が経った時にひっそりと計画を再開すれば良い。

時間がかかっても良い、気の長い話でも構わない。

ただ自分が覚えてさえいれば、何度でもやり直せるのだ。

「……ん?」

ふと、自分の足元に何かが転がっている事に気付いた。

もちろん扉は破壊されたし、少女が吹っ飛ばされた衝撃で部屋のモノは散乱している。

だが、そこに落ちているものは身に覚えのないもの。

そしてどこか異質で、ここにあってはならないように感じるもの。

一言で表現するのなら、適当に顔が描かれた黒い人形………。

「奪って!! 『忘れられた少女』よ!!」

不意に吹っ飛ばされた少女が叫んだ。

その瞬間、人形がケタケタと笑った。口も目も適当にしか書かれていないのだが、なぜか男には『笑った』と認識できた。

と、それと同時に、頭の中が急にグルグル回り始める。

おかしい、考えがまとまらない。いや、まとまらないと言うよりは、無理やり頭の中をぐるぐるかきまぜられているような感覚。

同時に、男はどんどんさまざまな事を忘れていく。

自分のやりたかった事。自分の大切だったもの。自分の絶望。自分の僅かな希望。全てを賭けた数年間。全てを失った数年間。それがどんどんと頭から抜けていく。

全ては『アレ』にかかわる記憶だ。

しかし、男は気付く。『アレ』とは一体何だったか? 今回失敗したとしても『アレ』を使えば、またやり直す事は出来たはずなのだ。だが、今となっては何をやりなおしたかったのかも解らなくなっていた。

ああ、どうやら自分は何かの策略にかかってしまったようである。

だが、それもどうでもよい。もう、何も思い出せなくなっている。

次自分が目覚めたとき、きっと何も解らなくて戸惑うかもしれない。

だが、男はホッとしていた。

そうか、全てを忘れられるのか。

既に自分の名も忘れた男は、どこか安心しきったように意識を失った。





通信機の向こうの声は、相変わらず迷いのなさそうな明るい声であった。

『と言うわけでライン。今日からアムテリアに向うから、多分1週間後の始業式には間に合いそうよ』

「まったく……よくもまあここまでギリギリになって解決してくるものよ」

『あ、ごめんごめん。世界が滅亡すると思ってた?』

「とりあえずあんたを信じてたわ。と言うよりは、そんな設定すっかり忘れていたわよ」

『ひど!! こっちは世界を救うのに命がけだったのよ!!』

「あーハイハイ。お疲れさん。まあ、とりあえず早く帰ってきなさいよ。1日か2日か、少しでもゆっくりして備えないと、1学期の授業でまた落ちぶれるわよ?」

『む……むぅ。流石に同じことは繰り返したくないなぁ』

「ならば早く帰ってきなさい。じゃ、私も仕事中だから、ここらで切るわよ」

『あ、ごめんごめん邪魔しちゃったわ』

「いいわよ。というかもうちょっと多く連絡くらいよこしなさいよ……」

『ん? ごめん電波が悪くって良く聞こえない』

「……何でもないわよ。それじゃあね」

ピっと、スカイワインは通信機を切った。

「……さてと」

スカイラインは、スッと正面を見る。

そこには、3人の仙機術師が立っていた。いずれもそれなりの使い手、同時に相手にするのは少々無理がある。

ふと、腕の中を見る。そこには少女が居た。褐色の肌で、暗い紫色の不思議な髪の色をした少女。飾り気のない、薄水色のワンピースを着ている。見た目は7歳くらいか。不安そうにこちらを覗き込んでいる。

スカイラインはため息をつく。この状況を打破するのはなかなか難しそうである。

与えられた使命は、この腕の中の少女を無事本国に連れて帰ることなのだが………、なにせ敵の質が良すぎる。

少女を守りながら、敵3人を相手にするなど、スカイラインにはまだ難しすぎる状況であった。

だが、それでもここは突破しなければならない。

自分の最大のライバルが、今日世界を救ったのだ。それに比べればこの状況の打破など、難しい話ではないはずだ。

だから、スカイラインは少女に問いかけた。

「何があっても、最後まで私を信じてくれる? 私の言葉を、私の考えを、全て信じてくれる?」

ある意味、一番難しい問いかけだったかもしれない。なにせ、この少女とはまだ出会ったばかり。せいぜい一時の逃走を共にした程度なのだ。

まだそんな深い関係でもない。だが、それでも今は自分を信じてもらうしかない。スカイラインとしては、それ以上の手がないのだ。

コクリと、少女が首を縦に振る。

その答えに、スカイラインは満足そうに笑った。

「OK。それじゃあ早いところ助けてあげるから、一緒に帰りましょう。新学期も近いしね」

そして、最愛のライバルも帰ってくるのだから……。





サリーヌ・ルブランの一件から、ヴァルリッツァーの当主はスカイラインに積極的に家の手伝いをさせた。

ここで言う家の手伝いとは、家事のたぐいの話ではない。ヴァルリッツァーが昔から行ってきた、政府の裏の仕事関係であった。

初めの一~二件は問題なかった。せいぜい旧文明の遺産の護送やら、政府要人の護衛程度。確かにあまり表立って話題に出来ない内容ではあったが、まだ『そう言う事もあるだろう』といった内容であった。

しかし数件こなしていくうちに、徐々にその内容は違法で異常なものに成っていく。

やれ秘密の研究施設がバイオハザードを起こしただとか、やれ秘密裏に発掘していた施設が暴走を始めただとか。

そんな内容の案件を、ヴァルリッツァーの当主は眉一つ動かさずに、

「やっとけ。この程度なら、今のお前になら任せられる」

等と言って仕事を振る始末である。

実際にスカイラインも問題なく仕事をこなしてしまい、更に過酷で黒い仕事が振られてくる。

しかし当のスカイラインは、その事に関して不満を持っていない。幼いころから薄々は感じていたことなのだ。自分の家は仙機術を生業とする一族で、政府との関係も深い。黒い話だって、少ないはずはないのだ。

国が持てあます件は、自分たちのような力のあるものが解決する必要があるのだ。

それを理解したうえでのスカイラインであった。幼いころより心に秘めたヴァルリッツァーの次期党首としての意志は、この程度の真実や事実に衝撃など感じることはなかった。

全てを、自分の使命と思った。

全てを、こなしていこうと決意した。

そう、自分にできないはずはない。だって、あの子は世界すら救うんだから。

自分にこのくらい出来なくてどうするんだ……。

全てをこなすくらいの力が無くてどうするんだ……。

そんな思いを胸に、少女は今日も戦っていた。





白のキュングと言えば、周辺の国ではそれなりに名の知れた傭兵の通り名である。

いや、実際はここ数年は一つの国での仕事をこなしている為、もしかしたら傭兵というイメージはないかもしれない。

だが彼女たちを抱え込んでいる国も、彼女たちが牙をむいた国でも、共通してその実力は認めているであろう。

その実力は伝説級には程遠いが、少なくとも実力のある軍人にも引けを取らない。

さらに彼女は仕事の成功率も高かった。ここ近年での失敗は、2件のみ。そのうちの1件は、ヴァルリッツァーの当主と正面きっての戦いを余儀なくされた事があった為であるが、これは仕方がないと言うものだろう。相手が悪すぎたのだ。

ともあれ、ヴァルリッツァーの当主の手からも逃げ伸びられたあたり、やはりキュングの実力は折り紙つきだ。

近年では二人の部下を招き入れ、その仕事にもさらに磨きがかかった。

そして久々のアムテリアでの仕事。内容はアムテリアが極秘裏に進めていた研究のサンプルの奪取であった。キュングも内容が内容だけに、今回も敵の追手も激しいものに成るだろうと考えていた。

いや、言ってしまえば前回辛酸をなめさせられたあの男が、また立ちふさがるのではないかと期待していた。

なぜ期待か。言うまでもない。あの時のリベンジを果たせると、そんな事も考えていた。

考えていたのだが……。

「師匠、あの娘が本当にヴァルリッツァーなのですか?」

キュングは声をかけられた方を見る。彼女の右後ろには、二十歳前後の男性が駆けていた。

「確かに、キュング姉さまが言うほどの相手じゃなかったわね」

今度は左前方より声が跳んできた。そちらは十代半ば頃の少女。赤いツインテールをたなびかせながら、やはり駆けている。

「あんな簡単に、作戦目標を差しだしてくるなんて、本当にちょろい相手だったわ」

少女がケラケラ笑う。

キュングは自分の腕の中で抱かれている少女を見る。まだ7歳くらいの外見。だが、見た目に騙されてはいけない。これこそが今回の作戦目標だったのだ。キュング達の使命は、この少女を雇われているとある国に持ち帰る事である。

アムテリアの研究所を襲撃し、少女を奪取した。その後、帰還途中で不意を突かれて一時的に少女を奪い返された事もあったのだが、すぐに相手の術師を追いつめて更に奪った。

一戦交える覚悟もあった。しかし向こうの術師が勝算なしと踏んだのか、あっさりと目標を差しだしてきた時は拍子抜けしたものだ。

「……あんな頼りない小娘じゃない。ヴァルリッツァーは、四十前後の中年だ」

「そうですか……。しかしあんな使い手を送りこむとは、今回のこの目標はあまり重要視されていないのでしょうか?」

男の意見に、赤髪の少女は答える。

「あんなご大層に隠されていた施設の研究サンプルが? 重要じゃないとは思えないわ」

「……となると、相手側の人選ミスか」

「陽動って可能性はないのかしら?」

「ちょっと待ってほしい」

男は探査の仙機術を使い、周囲の気配を探索する。

「…………いや、やはりここら一帯でさっきの少女以外の形跡は見当たらない」

「ふぅん。となると、今回の作戦はこのまま成功ってことかな」

赤髪の少女がそうつぶやいた。しかしキュングはすっと目を細めて、男に聞く。

「アウロス。……さっきの少女から離れてしばらく経つけど、あなたの探査範囲は、あんな遠くまで確認できたかしら」

キュングの質問に、アウロスと呼ばれた男は少し慌てた様子で答える。

「い、いや違います。どうも、こちらをつけているようで……。距離もあるし、どうやら追いつけない様子で、徐々に距離は広がっているのですが……」

その言葉に、赤髪の少女は呆れたように言う。

「なによ、まだ諦めていないっての? 今さら追ってきたところで、状況は変わらないのにね」

「仙気力も精々三〇〇程度でした。これ以上底力はないと思いますし、このままいけばそのうち向こうもこちらを見失うと考えられます」

キュングは考える。

アウロスの読みは悪くない。このまま逃げていけば、自然と雇い主の元にたどり着ける。そこまで行かなくとも、国境を超える時点で、相手も簡単に手が出せなくなるはずである。

故に、放っておいても問題はない。この状況を追ってくるだけで打は出来るとは考えにくい。

だが、キュングはその上での可能性を考える。

「アムテリアの使い手は、私たちの仙気術とはまた異質の術を使う。彼らは特に『戦い方』において自分のスタイルを持ち、能力を伸ばす傾向がある」

「……つまりどういう事ですか? 師匠」

「ヴァルリッツァーは、特に『防御』に関しての能力が、測定した仙気力を上回る力を発揮していた。今回の彼女が、一体何に関して秀でている存在かが、まだ解らない。……それが懸念だ」

その言葉を聞いて、赤髪の少女は眼をキラキラさせながら問う。

「じゃ、じゃあさ!!  やっちゃっていいの!?  大丈夫だよ、何かが秀でたとしても、仙気力三〇〇でしょう!?  あたしなら楽勝だよ!!」

その少女の言葉を、キュングは左手を前に出して止める。

代わりに、アウロスに尋ねる。

「アウロス、お前の仙気力はいくつくらいになった?」

「先日、三五八を記録しました」

「……そうか、良く鍛練しているな。いいだろう、お前は念のため、足止めに回れ」

「解りました師匠。行ってまいります」

そう言うと、アウロスはキュング達と逆の方向に駆けて行った。

その姿を見送り、キュングは自分の左前方を走る少女に声をかける。

「……そうむくれるなメック。アウロスでは、これ以上速く走れないのだ。なるべく追手から距離を取るには、アウロスをぶつけた方が良い」

その言葉に赤髪の少女メックは、やはり少しばかりふてくされたような声で答える。

「解ってますけどねー。なーんか最近、キュング姉さまはアウロスにばかり美味しい思いをさせているわ」

「……くだらない思い込みをしているのなら置いていくからな。お前にかまってやれるほど、仕事中の私は余裕ではない」

そう言うと、キュングは走る速度を上げた。

「あ、まってよー!!」

置いて行かれまいと、メックも速度を上げる。

二人は風のように、森の中を駆け抜けていった。





アウロス。二〇歳の若者で、若干細身だが芯のある顔立ちの男。数年前、とある事情でふさぎこんでいた時に出会ったキュングに感化され、それまで何の関わりも無かった仙機術を学ぶことに成る。

仙機術を学んだのは三年。つまり一七歳の時に学び始めたわけだが、これは彼の国でも学び始めは遅い部類に入る。実際のところその年齢から学び始めては、使い物に成る使い手に成るまで時間はかかる。

しかしアウロスはその類稀ない才能を実直に育て、そして現在は軍人には及ばないにせよ実戦で戦えるほどの人材となった。

その手には、槍型の伝機『氷風』。キュングの仕事に同伴するようになってからの愛用の伝機だ。

木々かき分けて、アウロスは敵に迫る。

相手はすぐ見つかった。一定の速度でこちらを追って来ていたのだ。思いのほか早く遭遇出来た。

ザッと一定の距離で、相手は歩を止める。

少女だ。赤毛を短く切りそろえており、小さな髪留めで結っている。服装は赤く染まった服であるが、おそらくは学生服に何らかの術式を組み込んで防御力を底上げしているようである。見た目から察するにまだ十代前半。仲間のメックよりも年下であろう。目標を奪取する時に一度出会っているが、こんな少女に一度は出しぬかれたかと思うと何度相見えても驚きを隠せない。

とりあえず、アウロスはこちらの意志を口にする。

「……悪いがここは通さない」

「ああ、そう!!」

アウロスのセリフなどお構いなしに、少女スカイラインは彼に襲いかかる。

しかし、アウロスも冷静に対処する。

「我が身を冷たく閉ざせ、静かなる氷壁よ!!」

防御の術式を組んで、解放する。アウロスの前方に、氷の壁が展開する。

スカイラインはその壁に阻まれる。しかし動きは止めず、そのまま迂回をして再度アウロスに跳びかかろうとする。

「させるか!! 我が身より涼やかに靡け、鋭利なる氷渦よ!!」

今度は槍の先端から、凍てつく氷の渦を発生させ横から迫りくるスカイラインに打ち込む。

スカイラインはその攻撃を住んでのところで回避する。しかしそのまま体勢を崩してしまい、隙ができる。アウロスはその隙を見逃さない。大きく振りかぶった伝機を、スカイラインめがけて叩きおろした。

それでも、スカイラインは攻撃を避ける。なんとかギリギリのタイミングで愛用の伝機を滑り込ませ、アウロスの攻撃を逸らした。伝機に仙気が流れていなかったことが幸いしたのだ。そうでなければ、スカイラインは伝機ごとたたき折られていた。

ザザッと音を立て、アウロスから距離を取るスカイライン。その動きは素早く、アウロスの追撃も許さなかった。

その動きを見て、アウロスはつぶやく。

「……ヴァルリッツァーの使い手は、主にカウンターを主とすると師匠が言っていたんだが」

その言葉に、スカイラインはクスリと笑う。

「そう言うあなたは白のキュングじゃないみたいね。話に聞いていた戦い方をとは違うわ」

師匠を知っているのか、そんな言葉がでかかったがアウロスは踏みとどまる。余計な情報を与える必要はないだろう。

「……白のキュングを知っているのか?」

「あなたがヴァルリッツァーを知っている程度にはね」

スカイラインの言いぶりから、アウロスは勘づく。

(この娘明言はしていないが、どうやらやはろヴァルリッツァーに縁のある術者だな)

キュングは過去にヴァルリッツァーの当主と戦っている。

故にアウロスとメックもヴァルリッツァーの話を聞いていた。

それと同様に、相手も白のキュングについての情報を仕入れていても不思議ではない。ただでさえ今回の件は、前もってこちらの実行犯が相手にばれていた形跡もあるのだ。

これは、少しばかり情報を聞き出しても良いかもしれない。

「ヴァルリッツァーの当主は引退でもしたか?」

「まさか。あんたたちの相手なんて、わたしで十分だってさ」

「……それは良い事を聞いた。つまりアムテリア屈指の術師は、今この場に居ないと言う事か」

「当主が出る幕じゃないってのよ。そもそも、ヴァルリッツァーの術師は、……いえ、アムテリアの熟練した術師は当主だけではないわ。その油断ごと、私がたたき折ってあげる」

「へえ、それは楽しみだ」

アウロスはにやりと笑う。『ヴァルリッツァーの術師は……いえ』などと言いなおしたが、おそらくは『ヴァルリッツァーの術師は当主だけではない』とでも言いたかったのだろう。まったく、若い人間と言う者は素直でほほえましい。

どうやら、やはりこの口ぶりはヴァルリッツァーの術師のようである。

先ほどの初撃は、おそらくこちらの実力の様子見か。はたまたこっちに積極的に攻めさせるための布石なのか。

しかし、アウロスは惑わされない。

ヴァルリッツァーの術師は、主に相手の攻撃を利用したカウンター戦法で、一対一の戦いに置いての最強の称号を得ている。

そう、逆にこちらが手を出さずに防御に徹すれば、ヴァルリッツァーの術師とはそこまで怖い存在ではないのだ。

(自分の使命は時間稼ぎ。念には念を押して、安全に目標を持ち帰るための時間稼ぎ。無理はしなくていい……)

アウロスは適当に動き回る為の術式を組み始める。速度上昇、防御力上昇。ただお見合いしても、相手に感付かれれば手を打たれてしまう。

攻撃は積極的にしないが適度に動いて、相手を牽制すれば良い。

そう、無理に勝つ必要はないのだ。

あくまで牽制で……。

「時にあなた、自己紹介がまだだったわね」

「……ん?」

スカイラインはニコリと笑ってその名を名乗る。

「私は、迅雷。迅雷のヴァルリッツァー」

やはりヴァルリッツァーの使い手だったらしい。つまりはアウロスの読みが、作戦が間違っていないと言う事である。

だが、スカイラインは不敵に笑う。

「そう、迅雷。いつか、ヴァルリッツァーを貫き超える存在よ!!」

その一瞬に何が起きたか、アウロスは解らなかった。

理解する間もなく、その瞬間が過ぎ去ってしまったのだ。

まさに雷に打たれたような一瞬。

結局『青のアウロス』と、彼が敵に名乗る事はなかった。





「……アウロスの反応が消えた」

キュングの呟きに、メックはやれやれと言った反応を見せる。

「まったく……あの未熟者は。格下にあっさり倒されたようね」

先ほどよりもさらに速いスピードで、二人は木々の中を駆け抜ける。

「どれどれ。アウロスのやつ、少しは相手にダメージを与えたのかしら」

メックはそう言いながら、策敵術を展開する。

流れてくる情報を見ながら、メックは更に大きなため息をついた。

「なによこれ、さっきとまるで状況は変わっていないじゃない」

あきれるネックに対し、キュングは尋ねる。

「どう変わっていないのだ?」

「どうもなにも、確かに少しばかり距離は稼げたけど、依然敵はこっちに追いつけるころもなく、かといって離される訳でもなくって感じ。この様子だと、ダメージすらまともに与えていないんじゃない?」

その瞬間だった、キュングの眉をひそめる。

「……先ほどよりも更にスピードを上げた私たちに、奴はついてきているのか?」

「…………あ」

メックはその事態に気付く。

アウロスが居なくなったおかげで、自分たちは進むスピードを上げることができたはずだ。

なのに、なぜアウロスが居た状態のこちらに追いつけなかった相手が、今も尚離されずについてこられているのか。

「……アウロスにはこの任務につく前、ヴァルリッツァーの使い手の話を多くした。対処法も学ばせた」

「でもこのスピードは、姉さんの教えてくれたヴァルリッツァーとは少し違うような気がする」

防御主体、一対一の戦い。そしてカウンター。ヴァルリッツァーの使い手の特筆すべき点は、その辺りの要素である。スピードではない。

キュングはアムテリアでの作戦には、おそらくヴァルリッツァーの使い手が出てくると考えていた。

だからこそ、アウロスにもその対策をさせてきた。今の彼なら、当主が出てきたとしても一瞬で倒されることはないだろう。

故にアウロスが倒されると言う事は、相手がヴァルリッツァーの使い手ではなかった。アウロスが用意していた手が裏目に出るような使い手だった、そのように考えられる。

裏目に出たかもしれない。キュングはそう考え始めていた。

「ねえ、姉さん。私思うんだけどさ」

「……なんだ、メック」

「相手はやっぱり、ヴァルリッツァーの術師ではないんじゃない? アムテリアの裏の仕事を請け負う使い手も、他の使い手だっているんでしょう?」

メックも、キュングと同じような事を考えていたようだ。

「わたし、姉さんがなんでアウロスを向かわせたか解ってるよ? 私の戦闘スタイルが、壊滅的にヴァルリッツァーに不利だったんでしょう?」

「いや…………そう言う理由では」

そう言う理由もあった。確かに、撤退のスピードを上げるためにアウロスを別行動させた理由もあったが、もし相手がヴァルリッツァーの使い手だったとしたら、メックの戦い方は相性が悪かった。

言い淀むキュングに、メックは笑う。

「相手がヴァルリッツァーでないのなら、あたしは戦えるよね」

「……確かにそうだが」

「それに私が居なくなれば、姉さんは更に早く走れるよね!!」

「おい!!  メック!!」

キュングはメックを呼びとめようとした。しかし、それよりも早く、メックは逆方向へと駆けて行った。

急に、あたりは静かになる。キュングが駆け抜ける音と、微かに聞こえる腕の中の少女の吐息。

本当ならば、メックには第三の敵が現れた場合の保険としてそばに居てほしかった。

だが、周囲に敵影なし。唯一の懸念材料は、背後から追手来る謎の使い手。

メックの実力は折り紙つきである。ヴァルリッツァーの術師に対して相性が悪いだけであり、他の術師ならば問題なくアウロスではなくメックをぶつけていた。

「……確かに、脅威を無くすことが出来れば、この後もこの国からの脱出が容易になる」

それだけではない。付けられていると言う事は、こちらの行動が筒抜けになると言う事だ。

それは確かに、早い段階で取り除くに越したことはない要素だ。

「メックの仙気力は500と少し。………信じるしか無いか」

どの道、もう呼び戻すには手遅れであった。





赤のメックは、一言で言うのなら『炎の女』であった。紅の鎧に燃え上がるような深紅のグローブ型の伝機。その戦闘スタイルは炎をまとって攻撃力を増加させ、超接近や広範囲破壊術などを繰り出す超攻撃型。

力でねじ伏せる戦闘スタイルは、おおよその敵に対して有効。どんな境地もシンプルに正面突破で突きぬけられる、メックとはそんな使い手だった。

しかし、唯一苦手なタイプがある。その正面突破を逆手に取られる戦法、いわゆるカウンターである。

また、絶対の防御に対しても有利に事を運べない。最後に押しきる自信はあるが、攻略に時間がかかってしまう。

そういう意味では、キュングが以前戦ったヴァルリッツァーは、メックの天敵と言っても過言ではなかった。

メック自身もキュングからの話を聞いていた。だから今回の仕事についても、自分の役割はキュングの支援であると自覚していた。

だが、状況は変わった。どうやら相手の使い手は、ヴァルリッツァーではないらしい。挙動から察するに、スピード重視の使い手。ならばメックでも問題なく対応できる。

と言うよりは、そもそもメックは戦いが好きであった。

使う術がそうだからだろうか、交戦を好む傾向がある。そのために今まで上げた戦果も多く、失態も多かった。

それも近年知り合ったキュングと付き合うようになり、だいぶ冷静に的確に戦場を選ぶようになった。

しかしそれでも、やはりメックは戦いを好む。

「速攻でぶっ潰そう」

両手のグローブに、仙気を流し込む。それを炎の形に具現させ、身体全身にまとわせる。

(相手はスピード重視の使い手。ならば範囲攻撃で足を止めさせて、一気にたたみかける)

戦闘準備を整え、メックは倒れている丸太を飛び越えた。

すると、不意に彼女の右前方で何かの影が動く。

(……速い)

その黒い影を追う様に、メックはステップする。

(まずは威嚇で打ちこむ!!)

左手で印を結び、手のひらから炎の弾丸を撃ち込む。

攻撃は影に向かって飛ぶ。しかし、その弾は影の手前の木にぶつかり無散する。

だが、相手もどうやらその攻撃に対し乗って来たようで、ギュンと向きを変えるとメックに向かって突っ込んでくる。

いや、突っ込んできはしたが、すんでのところで方向転換。メックの背後を突こうとする。

メックは反応……出来ない。

だが、問題ない。

「死角から消えると言う事、つまりあなたはあたしの後ろに居るってことよ!!」

その瞬間、メックを中心に仙気が解放された。

「っくぅ!!」

影……スカイラインが唸る。メックの予想通りこちらに突っ込んできていたようである。

メックが振り向くと、体勢を崩しているスカイラインの姿。

「たて直させないよ!!」

メックはすぐにスカイラインを追撃する。

両手に炎をまとわせて、一気に超接近する。

しかしスカイラインの動きも早い。すぐさま間合いを取ろうとする。

だが、遅い。一歩遅かった。

メックの右ストレートが、スカイラインの胴を捉える。

「ッくぅあ!!」

そのままスカイラインはスッ飛ばされ、背後にあった巨木に背中を叩きつけられた。

「っち、浅かったか」

メックは呟く。その言葉の通り、スカイラインはスッ飛ばされて叩きつけられはしたが、ダメージは軽微であった。

故に、メックは更に追い打ちをかける。

話す事などない、語る事などない。ただせん滅すれば良い。

再度両手に炎をまとわせて、メックはスカイラインに突っ込む。

背中から巨木にぶち当たっていた。相手はスピード重視の使い手、それだけで足に少しキているはずだ。素早く動けるように成るには時間がかかる。

動けない今こそ、メックが攻めるには最大の好機であった。

「サクッと終わらせてもらうわ!!  アムテリアの女!!」

その様に叫ぶメックに対し、スカイラインは……。

「そうね、あなたにも構っている暇は無いのよ」

愛用の伝機、レイレインに『逆流』を走らせた。





「……メックの反応も消えたか」

キュングは頭を抱えた。

嫌な予感はしていたのだ。それはアウロスが敗れた時から、……いや、そもそもヴァルリッツァーの当主が現れなかった時から。

キュングは抱きかかえている少女を見る。

この国の闇の部分。外に出してはいけない情報。下手をすれば国が傾く、そんな存在。

そんな存在を奪取されたのだ。その国の最高の使い手が現れておかしくないのだ。

いや、以前似たようなケースの時は少なくともそうだった。

キュングが初めてヴァルリッツァーの当主と出会ったとき。事の重大さは今回の件といい勝負だった。

事が事だけに、彼が現れたのだろう。

圧倒だった。圧巻だった。自分の力に奢りおぼれる寸前だったキュングの目を、一瞬にして覚ましていった。

アレから更に実力をつけ、キュングは再度この国にやってきた。

少し期待もしていた。リベンジできるかもしれないと、淡い期待も持っていた。

しかし現実彼は現れなく、彼よりも実力は数段劣る使い手が現れた。

少しばかり落胆したのは事実だ。だがそれでもこれは仕事だ。キュングは仕事の危険が少しばかり少なくなったことに対して感謝し、任務を遂行した。

だが実のところ、初めて今回の敵を目視した時、少しばかり嫌な予感がした。

いや、嫌な予感ではない。懐かしい感覚。自分が実力におぼれ、相手の実力を見破れなかったあの日。思えばこの感覚は、あの時の感覚に似ていたのだ。

見た目通りの存在ではない。もっと慎重に当たるべきだ。過去の自分はそう言う事を学んだはずだったのに……。

「……まったく、私も油断していたと言う事か」

更に思い返せば、敵がせっかく奪取した少女を簡単に差し出した時も、もっと警戒するべきだった。

あの解きは、3対1の状況を打破出来ない事に対する降参だと思っていた。

だが、仮にも国の命運を賭けた任務を、あっさりと放棄するだろうか。

何か、打破するための布石の為に、あえてこちらに少女を受け渡したとか。いや、そこまで作戦がなくとも、時間を稼いで好機を狙うくらいのことは考えていたのかもしれない。

一人で付かず離れずおっかけてきたのも、ある種の挑発だったのかもしれない。確かに、追われている身としては良い心地ではないのだ。ついつい、手を出してしまう。

ああ、気付いた。その時に成って初めてキュングは気付いた。

「なるほど、私は戦力を分散されてしまったのか」

三体一なら負ける事はなかった。1体1だから負けているのだ。

敵の力も侮ってしまっていた。敵の能力を図る『仙気力』。自分の現在使える国独自の計算方法だが、やはり他の国の使い手や術者を図る上では、少しばかり当てに成らない事がある。

数値が僅差のアウロスを戦わせるのはミスだった。そのくらいの差では、誤差があることを念頭に置くべきだった。それは数値的にかなりの差があったメックですら、同じことが言えたかもしれない。こちらの情報を信用し過ぎた。

こうなったらもう、二人が稼いでくれたささやかな距離を有効に活用し、この場を離脱するしかない。

幸い、こちらの逃げるスピードも上がっている。逃げ切る事は、難しくはないはずだ。

難しくはない………はずだった。

ズッガァァァァァンと、不意に上空から爆音が聞こえた。

それは、だれしもが耳にしたことがあるだろう音。キュングも、その音に覚えがあった。

「雷鳴……だと?」

キュングは上空を見上げる。木々の間から見える空は無数の雲を確認できるとしても、晴れと言える天気だった。

更にズッガァァァァァンと爆音が鳴り響く。前方の方から響いてきた。

今度こそキュングは足を止める。それと同時に、前方より衝撃風がキュングに襲いかかる。

「……雷でも落ちたか?」

キュングは呟いて、その可能性を頭の中で否定する。

雷の音に似てはいたが、少々違う。なにかそれなりの物体が超高速で吹っ飛んできて、更に着地した。そんな感覚だった。

そしてそれは雷でもなく、はたまた隕石や墜落した飛行機でもないことは想像できた。

「……まったく、。どんな術を使ったら、私に追いつけるのだ」

衝撃波が止む。前方の木々の合間からは土煙が流れてくる。

そして、しばらくして植物を踏むサクサクと言う音と共に、人影が現れる。

「お待たせ。信じて待っていてくれたかしら?」

スカイライン・ヴァルリッツァー。迅雷のヴァルリッツァーが、白のキュングの前に立ちはだかった。





スカイラインは敵を見据える。

先ほど少女を奪っていった三人の中の最後の一人。白いマントに身を包み、その手にはシンプルな白い杖。おそらく20代の後半の女性。三人の中では、一番洗練された身のこなしであったように思える。

「あなたが……白のキュング?」

スカイラインは尋ねる。

「ああ、そうだ」

あっさりと答えるキュング。

自らの正体である。内容が内容だけに、スカイラインは明確な答えは期待していなかった。

だがそれを応えてきた。それはどういう意味か……。

「私にも教えてはくれまいか。愛弟子青のアウロスと、相棒の赤のメックを倒した者の名を」

なるほどそう言う事か。相手は、こちらの正体を知りたがっているらしい。

「悪いけど、素直に答える必要があると思う?」

そう、別に名乗る必要などない。相手は名乗ってしまったが、これはあくまで駆け引きの一つ。相手がミスを犯した、それだけの話である。

「ヴァルリッツァーは、……極星のヴァルリッツァーは名乗ったぞ?」

しかし、そんな事を言ってくる。

なるほど、相手も歴戦の猛者、心得ている。そんな言われ方をしたら、ヴァルリッツァーの使い手として、名乗らない訳にはいかないではないか。

「迅雷、……迅雷のヴァルリッツァーよ」

その言葉に、キュングは眼を細める。

「やはり……ヴァルリッツァーであったか」

「そうよ、極星からあなたの事は聞いているわ。……極めて、難しい相手だと」

「高評価は喜ばしいな。私はあの男に全く歯が立たなかったが……」

「そんなことないでしょ。あなたが使えている国では、面白い強さの測り方があるようね。……一人目の男が357。二人目の女が520? 試しに私の伝機にも実装して貰ったけど、これほど相手の実力を解りやすく出す方法はないかもね」

伝機のディスプレイを操作し、スカイラインは浮き上がった立体映像を見ながら話す。

キュングもちらりと、自分の伝機についている小さな画面を確認する。

「……いや、そうでもない。貴様の仙気力は310だ。理屈でいえば、貴様が一番弱い。……国内の精度は、海外では当てに成らないようだ」

「でも、それでも大差は拭えないんじゃない? 正直、……私はあなたの実力の足元にも及ばないみたいだわ」

スカイラインのモニターに映る数字。

1210。

桁が違った。先ほどの二人とは、明らかに別格なのだ。

さらにスカイラインは理解している。前の二人は弱点を突いて戦う事が出来た。

一人目はヴァルリッツァーの攻撃に対する対策で固めてきていたため、高速攻撃で一気にたたみかけた。

二人目はまっすぐに攻撃を仕掛けてきたため、ヴァルリッツァーの術でのカウンターで対処した。

多少の実力差と言う事もあったが、弱点を突くことによって相手を打ち倒せた。

だが、スカイラインは相手と対峙して感じる。

数値的な強さとか、その様な裏付けが有るか無いかに関わらない。

にじみ出る仙気が洗練されているのだ。なまじ普段から、感覚で相手の強さを測るアムテリアの術者だ。敵の強さを感じ取れる。

そう、隙がない。

前の二人は、まだ付け入る隙があった。故に勝てた。

しかし白のキュングは、その一挙一動が洗練されている。

こう、相見えているだけでも、すぐに戦闘に移れることが見て取れる。

いや、むしろスカイラインの方が危ういくらいだ。逆に相手に隙を取られないように気を配る必要があるのだ。

「……みごとだよ、迅雷とやら」

不意に、キュングが呟いた。

「……何がよ」

「全てがさ。私たちの油断をつき、劣勢を次々と塗り替えた。青のアウロスを倒し、赤のメックを撃破し、わたしとの距離を詰めた。……そのどれもが不可能だと思い込んでいた私たちは、見事に足元をすくわれたわけだ」

そうキュング達は、その点に関してはスカイラインを甘く見ていた。アウロスもメックも、スカイラインとの戦いに敗れるとは思っていなかった。思い上がりであり、油断と慢心であり、……そこをスカイラインにつかれたのだ。

「だが、……今度はお前がそれを感じる番だな。……『一対一になれば勝てる』、そんなふうに期待したお前は、最後の最後で判断を誤ったのさ」

瞬間、キュングが消える。

「っく、迅雷二型!!」

しかし、スカイラインはすぐに反応する。見えていた、急激に速度を上げて、スカイラインの右方向に回り込むキュングを。普段から高速戦をこなしているスカイラインには見えていた。

「だが、遅い」

高速化したスカイラインであったが、すぐにキュングに間合いを詰められてしまう。

スカイラインは高速で指先をカタカタ動かし、術式を編む。

「石の剣!!」

間一髪のところで、絶対防御の術式『石の剣』を展開した。

キュングは無表情に杖を振るう。その杖の周囲には風の渦。まるでドリルのように高速に回転し、スカイラインの伝機とぶつかり合う。

ぶつかった衝撃で、スカイラインは自らあえて吹き飛ばされた。その速度をそのまま利用し、相手と間合いを取ろうとする。

だが、やはりそれも詰められる。

「……は、速い!!」

「風使いが白のキュングのスピードだ。貴様も中々だが、まだ未熟よ」

今度は伝機で受けられなかった。スカイラインは胴に強烈な一撃をもらい、吹っ飛ばされた。

「ッぐぅ!!」

しかし、そのままではスカイラインも終わらない。なんとか体勢を整え、伝機に込めた石の剣を無理な体勢でも構える。

そして、自分の吹っ飛ばされた方角にある大木にたたきつけた。

ベキメキッと大木が引き裂かれた。スカイラインも、なんとか直撃を避けることができた。

「っがぁ!!」

しかし、地面には叩きつけられる。一回のバウンドののち、地面を転がりながら、ようやく止まった。

「……っふ、面白いな。今の動きは、素晴らしいと思うぞ?」

朦朧とするスカイラインはその言葉を聞き、ハッとすると伝機を構えなおす。

しかし、追撃はなかった。折れた大木のその先に、白のキュングは静かに立っている。

「………速い」

スカイラインは再度呟く。

速さで誰もを圧倒するスカイライン。だがそれも、学生の中での話。プロの術者で、しかも速さを極めんとする相手と戦うのはこれが初めてであった。

「貴様も中々だ。本当に仙気力310なのか? 速さだけなら、800近いと思うぞ? やれやれ、アウロスが負けてしまうわけだ」

「それはどうも。お褒め下さり光栄ってね」

しかし、これでさらにはっきりした。

「わたしでは追いつけない」

「貴様では追いつけない」

スピード勝負に持ち込んでも、術式『迅雷二型』では追いつけないのだ。

迅雷二型はスカイラインの戦術の中核を担う術である。高速に動くことができ、他の術との切り替えも容易にできる工夫があるのだ。

この術最大のメリットは、大きな実力差でもない限り、こちらの速度に追いつけないところにある。速度に全てを回しているので、たとえ正規の軍人と言えども、そうそうに追いつくことなどできない。

だが逆を言えば、スカイラインの速度を更に超えて追いつかれてしまえば、防御も攻撃も無いただの動く的である。今の状況がまさにそうなのだ。

ではこの際、ヴァルリッツァー仙機術を前面に出して戦えば良いのだろうか。しかしスカイラインは、それを考えるも現状を打破するには適切でない事を結論する。

ヴァルリッツァーはあくまで防御とカウンターの仙機術なのだ。こちらがそんな構えをしたら、キュングは喜んでこの場から去っていくだろう。相手はこの場から離脱出来ればいいのだ。ヴァルリッツァー仙機術は、相手に攻められたり追われる時こそ真価を発揮する。現状では適切ではない。

そう、今はスカイラインが攻めなくてはいけない。

実のところ…………一つだけ、相手の意表をつける技がある。

相手は迅雷二型がこちらの最速だと思っているようである。

ならば、それ以上の速度で、一気にたたみかければ勝機はある。

だが、熟練した相手にそこまでの隙はない。

「……さて、では貴様に問いかけよう」

「何よ……」

「この場を退くか?」

「……わたしもアムテリアの密命を受けたのよ。はいそうですかと、引きさがれるわけ無いじゃない」

「ならば……死ぬか?」

「……っく」

ゾクリと、スカイラインは寒気を覚える。

キュングの目が、スッと冷たいものに変化したのだ。

歴戦の戦士、……いや、裏の世界で生き延びてきた闇人だから出来る気配か……。今だ若く、それなりに表世界で生きてきたスカイラインには、初めての感覚であった。

「若者にはまず忠告しておこう。近年では仙機術の発達により、お互いの命を奪わなくとも勝負をつけることができるようになった。……だが、それは戦争も紛争も無い世界での話だ。面倒事を回避するために、人の命は簡単に奪われる。……お前に、その覚悟があるか?」

本当に、本当に暗い眼。スカイラインは、ごくりと唾を飲む。

ハッタリではない。この女なら、白のキュングならスカイラインを殺すことなど簡単であろう。

スカイラインは震える心に問いかける。

(私は……私にそんな覚悟があったか……)

黒い話を理解していた。裏の世界がある事も理解していた。

自分の家がそれに深くかかわっている事も、納得できていた。

だが、自分はどうだったのだろうか。理解も納得もしていたが、もっと明確な覚悟は?

それを抱えるだけの覚悟は?

そう例えるのなら、………命をかけられるのか?

だが………。

『こっちは世界を救うのに命がけだったのよ!!』

不意に、そんなセリフを思い出した。

「……………………考えるまでも無いじゃない」

スカイラインは命掛けて世界を救った少女を知っている。

彼女だけには負けたくない。彼女よりも弱く有りたくはない。

自分のやりたい事、自分がこなしたい事があるのだ。出し惜しみなどできるわけがない。

今やるべきことはただ一つ。

(この命をかけて、あの子を救う事だ!!)

スカイラインは、伝機を構える。

キュングはと言うと、ため息をつきながら伝機を構えた。

「忠告はしておいたからな。……もう、恨みっこは無しだ」

「………煩い。あなたこそ、何正々堂々と戦おうとしているのよ。そこまでその世界で生きていたのなら、とっとと私を殺せばいいじゃない」

その言葉に、キュングは眼を丸くし、そして笑った。

「っふ、おっしゃる通りだな。だが私も、ヴァルリッツァーは乗り越えるべき壁の一つなのだ。せっかくの壁だからな、ヒビ等入っていたら台無しではないか」

「余裕かましてるわね。……あんたなんか僅かな隙でもあれば、一撃で沈められるわ」

「大きく出たな? だが、貴様はその隙が見つからなくて攻めて来れないのだろう? そうさ、隙などないのさ。少なくともこの状況下ではな、お前につけいる私の隙などない」

「ええ、だから何か起きるのを待っているのよ。あなたの隙ができる何かを。それさえあれば、私はあなたに打ち勝てる」

「だから、そんな隙など簡単には……っむ」

不意に、キュングは腕の中に違和感を覚えた。左の腕の中には、例の少女。その少女が不意にモゾリと動いたのだ。

もちろん、それだけではキュングの隙になどならない。

だが、キュングは驚愕することに成る。

それまで何も語らなかった少女が、じっとこちらを見ている。

そして、一言。

「…………死ね」

そう言って、手を伸ばしてきた。

キュングも理解していた。

この少女はただの少女ではない。旧文明の技術で作られた、魔力からつくられた人工的な少女。

今は大きな力を持ってはいないが、いずれはどのような存在に成るか解らないブラックボックス。

不確定要素や不安要素が多い、不安定な存在。

また、旧文明の遺産や魔力、魔族に関する知識や畏怖は、熟練の術者ほどよく知るものであった。

だからこそ、その言葉と行動は、キュングに大きな戸惑いを起こさせたのだ。

その一瞬が命取りだった。

キュングが一瞬で反れた気をスカイラインに戻した時。

「勉強になった、感謝するわ」

『刹那の逆流』を使い、一瞬で間合いを詰めたスカイラインを見た。





森の上空から、スカイラインは少女を抱え超高速で降り立った。

恐ろしいスピードだった。これもスカイラインが逆流に手を加えて作り上げた新術式である。

一直線にしか進めないが、超高速で瞬間的に進むことができる。障害物がある場所では使えなく、轟音が成るため隠密行動時には使えないが、上空などを一気に突き進むときなど便利な術だ。先ほど、キュングに追いつくために使ったのもこの術だ。

轟音と土煙がたつ。しかしそれも次第におさまり、その中心でスカイラインはスクリと立ち上がる。

「ふう、なんとかなったか」

ため息をつく。

距離は稼いだ。相手の策敵範囲からも出ることができただろう。

未だ油断は出来ないかもしれないが、それでも少しだけ安心できる。

スカイラインは腕の中の少女に声をかける。

「大丈夫? 怪我はない?」

「……うん、大丈夫」

挿絵(By みてみん)

少女は地面に足をつけ、スカイラインから一歩離れる。

「ありがとう、また助かった」

「ま、二度目に捕まったのは私のせいだからね。当然よ」

取り返す算段はあったが、あれも一種の賭けだった。自分の力不足のせいで、少女を危ない目にあわせたことに対してはスカイラインも負い目に感じている。

しかし、助ける事は出来た。それも、少女がこちらの意図を察してくれたからなのではあるが……。

「しかしまあ、良く私の意図が解ったわね」

あの場面で少女が隙を作ってくれなかったら、スカイラインは勝つ事が出来なかった。白のキュングの実力を、スカイラインもあの場面まで舐めていたのだ。実のところ本当に八方ふさがりだったのは、むしろスカイラインの方だったのだ。

「だってお姉ちゃん、『私の言葉を、考えを、全て信じて』って言ってたから」

スカイラインは眼を見開く。少女を相手に受け渡した時に、確かにスカイラインはそんな事を言った。

「……記憶力が良いわね。あなた、将来有望よ」

しかし、だからと言ってそれをそこまで信じられるものなのだろうか?

スカイラインとこの少女が出会ってから、まだ丸一日もたっていない。そんな状況で、この少女はスカイラインを信じた。

どう言った理由なのだろう……。

「わたしって、そんな信頼におけそうだった?」

「だって、私を『助ける』なんて言ったのは、あなたが初めてだったから」

確かに、そんな事も言った。スカイラインは助けると、この少女に言った。

だが、不意に気付いてしまう。

自分は、本当にこの少女を『助けた』のだろうか?

この少女に待ち受けているのは、今後も研究対象としての人生なのだ。

それは、この少女にとって救いなのだろうか。

「……救いなわけ、無いじゃないか」

だが、スカイラインには何もできない。

このまま少女を連れ帰って、機関に受け渡して、それでスカイラインのミッションは終わり。

しかし、それでは少女一人救えたとは死んだって言えない。

ライバルは、世界も救ったと言うのに。

何か、何か出来ないのだろうか。

自分に、出来る事はないのだろうか。

だからこそきっとその言葉が出たんだろうと、スカイラインは思った。

「……強く成りなさい」

「……え?」

少女はきょとんとする。

しかし、スカイラインは構わず続ける。

「強くなるのよ。全て自分で守れるように、全て自分で解決できるように。この世界は容赦がないわ、力がないものは認められない。力がないものは力があるものに蹴落とされる」

それは自分の今まで生きてきた中で、一番強く感じていた事。

強くなければ認められなかった。秀でていなければ評価されなかった。

だからこそ、必死だった。

少しばかり方向を見誤ったかもしれないが、それでもそれだけは自分にとって正解だったのだと思う。

「力があるから、私はあなたを助けることができた」

一時でもそれを否定したら、今日の勝利はなかっただろう。

「でも力がないから、私はあなたを助けられない」

それでもまだ足りないから、スカイラインはこの少女を救えない。

「世の中を自分の有利に進めたいのなら、強く成るしかないの。あなたの過酷な人生を、少しでも有利にしたかったら強く成るしかないの」

そう。どこまで行っても、結局のところ自分を救えるのは自分だけなのだ。他人に手を借りたとしても、自分に力がなければその場しのぎにしかならない。

何かを救うには、力が必要なのだ。『自分』が例外なわけ無いじゃないか。

だからスカイラインは少女を救うために、彼女にそう訴えた。

少女はその言葉をじっくりとかみしめ、そして、スカイラインに問いかけた。

「……わたしも、お姉ちゃんみたいに強くなれる?」

その言葉に、スカイラインは首を横に振る。

「私みたいに、では駄目。あなたにあった力で強く成りなさい。……私が最近知った事よ」

「……何か難しいね」

「強く成るって、難しい事よ」

「そっか」

そんな呟きにも似た少女の言葉を聞きながら、スカイラインは心に誓う。

ライバルは世界を救ったのだ。

ならば、自分は自分の救いたいものを救えるだけの力を手に入れよう。

それにはまだまだ力不足だ。

今日の敵程度で苦戦していてはだめなのだ。

全てをこなすには、本当に役不足だ。

だから……。

「私も、強くなる」





「精が出るな、娘よ」

「パパ、おはよう」

あくる日、珍しくヴァルリッツァーの当主がスカイラインに声をかけた。

今は朝の鍛練中。スカイラインも日課の素振りをしている。

何かと忙しい人物である。家族の会話が全くない訳ではないが、早朝の鍛練中に娘に話しかけるのは珍しかった。

「白のキュングから手紙が来たんだが」

「……なんで敵国に与する人から手紙が来るのよ」

スカイラインは鍛錬をしながら、呆れた声を出す。

「なに、敵国と言っても裏の話だ。表向きはまだまだ友好関係だからな。それに、個人的な手紙だから、問題あるまい」

「……なんて書いてあったの?」

「お前の事を称賛して、最後に次は殺すと書いてあった」

「……割と感情的な人なのね」

「なに、ヴァルリッツァー家としても、鼻が高いぞ」

「そうですか。良かったわね」

気のない返事をしながらも、スカイラインは素振りをする手に、より一層の力が入るのを感じた。

今度戦うときは、相手の油断も誘えないのだ。これは生半可なレベルアップでは勝ち目がないだろう。

しかしどのくらい強くなればいいのだろうか……。

「時にパパ。仙気力って、キュング達が実力の評価に使ってる数値あるじゃない」

「ああ、あるな。だが、あれはそもそもアムテリアとは違った仙機術の区分に則って計測する数値だから、参考になるものでは無いぞ?」

「それでも、ある程度の指標にはなるでしょ。あれで測ると、パパはどのくらいなの?」

「1800だった」

「……そう」

なるほど、キュングが1200だった。そりゃあ、敵わない訳である。

つまるところ、キュングに圧倒するには、そのくらいの実力が必要ってわけで。

スカイラインは、自分の数値を思い出す。

「……あと、1500も上げろっていうの?」

途方も無い。……だが、それでも当主の実力とはそういう次元なのだ。

まったく、やはり自分はまだまだ弱い。

「ああ、そうだ。あともう一つ」

不意に、当主が思い出したように話す。

「お前がこの前キュングから奪取した被検体なんだが……」

「あの子が?」

「なぜかいきなり力に目覚めたみたいで、魔族としての本質か、かなり攻撃的な能力を開花させてきているらしいぞ?」

ピタリと、スカイラインは動きを止める。

「もう、既に正面きっての戦いだと、駆けだしの軍人では手に余るほどらしい。……まったく、今までおとなしい被検体だったのだが、いったいどんな心変りが起きたのか……。ん? どうした娘よ、随分と汗をかいているようだが……」

「…………ちょっと、鍛錬に身が入り過ぎただけよ」

用意していたタオルをとり、かいた汗をぬぐう。

「なんとしても、強くならないといけないから」

更にその理由が出来てしまったことに、スカイラインは少しばかりの焦りを覚えた。




はじめまして、こんにちは。ゆにわ荘102号室の藤辰です。この度は『~少女仙機譚~迅雷のヴァルリッツァー』をお手にとっていただき、誠にありがとうございました。


時間軸的にはイースフォウの戦いから3カ月程度の話です。

本の題名にもした話です。迅雷ことスカイラインが主人公のお話。前作のその後を少し書いてみました。イースフォウもスカイラインも、それなりに元気そうでなによりです。

イースフォウが強くなる理由。それは、イースフォウが迷わないから。迷わず前に進めるから、自然に力を身につけてしまうからです。彼女には強くなる理由は必要ない。ただただ迷わず目の前にあるものをこなせるから、最終的に強くなっていくのです。

しかし、スカイラインはそうはいかない。スカイラインは家のために、ヴァルリッツァーを継ぐものとして強くなる必要がある。しかしその強くなる理由は、本人にとって全力を傾けられるものになるかと言われるとそうでもない。そのうち今度は彼女が疑問を持ち、ブレーキがかかってしまうと思います。ヴァルリッツァーとしてではなく、スカイラインとして強くなる理由が彼女には必要だと思いました。

それはきっとヴァルリッツァーの頭首も同じことを考え、あえてこの若さから裏の仕事を任せるようになったのです。その狙いは今回の話を読んでいただければ、上手くいったかどうか解るかと思いますが、あえてここでは言いません。

ただスカイラインはきっと、この話の後も様々な出会いをし、さまざまな理由を持って強くなっていきます。間違いなく、彼女は迅雷のヴァルリッツァーとなっていくことでしょう。

……まったく、イースフォウよりも主人公っぽいなぁ。

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