ぐだぐだ彼氏。
愛っていうものは、本当にあるのだろうか。
哲学的な発想が出たのは、愛の告白をされてから。
まるでストーカーのように私につきまとう彼に出会ってから。
その彼に誘われ、彼の自宅で暇を持て余してから。
「ねぇ、デートしよっか?」
「どこに行くの?」
「んー、どこにしよう。迷うなーどこ行っても俺は楽しい自信があるし」
あ、なるほど。
私を楽しませる気はないのか。と白い目で見る。
「あ、違うよ?君にも楽しんでもらえるところを今検索しているから」
手に持っているスマホで調べているのは、なになに。
近く、楽しい、施設。なんだこの検索ワード。下手くそか。
ほらみろ。全部遊園地になってるぞ。乗り物弱いんだから勘弁してよ。
「普通にカラオケとかじゃダメなの?」
「カラオケがいいの?!じゃ、カラオケ探すね!」
いや、別に行きたいわけじゃない。という言葉を飲み込んだ。
彼はすでに検索を開始している。今度はなんだ?
近く、カラオケ。うん。どこから考えて近いかを考え直せ。
住所とか打てよ。じゃないと近いかどうかわからないじゃないか。
カチカチ、の音だけが耳に入る。
彼の部屋に連れてこられたのはいい。
付き合うことを承諾したのは紛れもない私だ。
だがしかし。
テレビもつけちゃいけないのか?
さっきリモコン掴んだら、「ダメ、俺以外の人見ないで!」と言われ、取り上げられた。
自分のスマホを掴んだら、「ダメ、俺以外に集中しないで!」と言われ、私のカバンにしまわれた。
え、もう何もない。
暇過ぎて死にそうなんだが。
これが独占欲というものか。凄まじいな。
暇を持て余した私は、ぼんやりと考え事をすることにしたのだ。
そこで冒頭に戻る。
まぁ、仮に。
この馬鹿で、独占欲だけ強くって、ちゃらい奴から向けられる感情が愛とするならば。
私が彼に向けている想いはなんだろう。嫌悪?じゃないか。嫌いだったら一緒にいないなぁ。
だったらなんでこいつと一緒にいるんだろう。謎すぎる。
「あ、こことかどう?」
ごく自然な形で私に後ろから擦り寄る彼。
見せてきた情報は、近所にあるそこそこのところだった。
「あそこかぁ。今からでも行けんじゃない?」
「んー?今日はいいや。だって今日はこうしてベタベタしてたいもん」
”もん”って、なんだ。”もん”って。
身長が170超えている大きな彼が言うと、ミスマッチすぎる。
私の後ろから抱きついているような彼は、まるで大型犬だ。
温かいところが良い点だ、他は特になし。
「明日、行こっか」
「・・・・」
今、暇なんだけどな。
そう思って一瞬黙った。
すると彼は私の頬にキスをする。
「ね?」
「・・・・・うん」
またほだされる。
本当は嫌なのにな。暇なんて、一番嫌いだ。
でも彼はこういうなんにもない時間でも楽しそうだ。
彼が楽しそうな顔をしているのを、観察するのもいいかな。と思った。
「明日、どうしよっか?何時から何時まで歌える?」
「さぁ?フリータイムとるなら早めの方がいいんじゃない?」
「えーどうしよっか?」
「どうしよっかねぇ?」
例え愛がなくっても、時間は馬鹿みたいにある。
じっくり考え直すのもいいかもしれない。
彼のいいところはどんなとこか。
彼と今後も付き合っていくかどうか。
多分。
これからもこうやってグダグダ付き合っていくんじゃないかなって。
そんな予感を覚えつつ、彼に寄りかかった私がいた。