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パフェと魔法具

 約十五分後に店員が注文したものをテーブルの上に置いた。

「他にご注文はございますか?」

「そうね」

 イーディがメニューを開いて、ピザのところを見ていた。

「追加したい?」

「えぇ。ピザも食べない?」

「いいよ。ケヴィンは?」

「構わないよ。何にする?」

 イーディはメニューと睨めっこしていた。

「たっぷりのチーズとベーコンのピザがいいわね」

 私もケヴィンも反対をせず、それを追加注文した。

 注文を聞くと、店員は去っていった。

「何と迷っていたの?」

「マルゲリータよ」

「こっちもいいものね」

「二人とも、料理が冷めるよ」

 視線を皿に戻すと、とても美味しそう。

 海の幸をたくさん使っていて、口の中で溶けてしまいそうなリゾット。

「いただきましょうか」

「そうね」

 スプーンでリゾットを掬い、口の中へ入れた。

「熱い」

 すぐに舌を冷やすために水を飲んでたら、くすくすと笑い声が聞こえた。

「ケヴィン、私のことをドジだなって思ったよね?」

「ううん、あわてんぼうだなと思ったよ」

「こんなに熱いとは思わなかった」

「味がわからなかったんじゃない?」

「うん、今度は火傷をしないよ」

 ほんの少し冷ましてから、口に入れると、今度は大丈夫だった。

 さらに食べようとしたとき、イーディとケヴィンが食べずに私を見ていた。

「もう火傷をしないよ」

 だから心配しないで、どうぞ自分のものを食べて。

「ちょっと見ていてはらはらしたわ」

「ふふっ、美味しい?」

 どうやらまた同じ失敗をするのではないかと考えたらしく、ずっと見ていたみたい。

 わたしはそこまでひどくないから!

「美味しいよ、とても。二人は?」

 二人が注文したものも気になる。

「結構美味しいわ」

「フローラ、食べることに集中している」

 さっきから手と口を動かしたままだ。

 そんな私を観察しながら、再び食べ始めた。

「この店には今まで入ったことはなかったけど、また来たいと思ったよ」

「それもこれもフローラのおかげだね」

「白魔法が役に立ってよかった。ステラ、普通に歩いている」

 ついさっきまで、足を怪我していたことが嘘みたい。 

 遠くで別の客に注文を受けに行っている。

 こっちに気づき、にこっと笑ってから、中へ入った。

「行っちゃったね」

「いや、こっちに来るよ」

「ん?」

 ケヴィンがそう言ったら、近づく足音は次第に大きくなっていった。

「おまたせいたしました。たっぷりのチーズとベーコンのピザです。どうぞごゆっくり」

「いいわね!食べましょう。フローラ」

「俺も食べることを忘れていないよね?」

「あら、うっかりしていた」

「ちょっと!」

 ケヴィンが怒ると、イーディはペロッと舌を出した。

「冗談よ」

 取り皿を渡してもらい、ピザを一切れ置いてから、手で持ち上げ、齧った。

 味に満足し、私のお気に入りの場所がまた一箇所増えたので、嬉しく感じた。

「チーズがきついかなと思っていたけど、ちょうどいいね」

「ベーコンも美味しい」

「ケヴィン、ときどきここに連れて行ってね」

「場所ならわかったでしょ?いや、前から知っているよね?」

「だって、外食は普段からあまりしていないから」

「俺に払ってほしいだけでしょ?」

「そんなことないわよ」

「フローラと二人きりがいい」

「だめよ、許せない」

 二人の会話を聞きながら、一人でピザやリゾットを食べていた。

「フローラの食べ方が小動物みたいで可愛い」

「そうね。人の食べ方を見て可愛いと思ったのはこの子が初めてよ」

「あれ?スピードアップしていない?」

 ニヤニヤと笑っているケヴィンを視界の端で見た。

 私は照れ隠しのようにひたすら食べていた。

 料理を食べ終えて、水を飲んで喉を潤していると、ステラがやってきた。

「あの、これはサービスです」

 置かれたものは小さなパフェが置かれた。

「サービス?」

「はい!さっきのことを親に言ったんです!」

「いいの?」

「もちろんです。パフェの分は当然お金はいらないので、気にせずどうぞ」

 パフェの容器は冷たかった。中にはフルーツやクリームがあり、その上にチョコソースがかかっていて、上には生チョコや小さなケーキが乗せられている。

「ひょっとして苦手ですか?」

 ステラは不安げな顔になった。

 もちろんそんなことない。食べる回数がとても少なかったから、見た瞬間、こうして食べることができることに嬉しさと戸惑いが入り混じっていただけ。

「ううん、パフェって、あまり食べたことがなかったから」

「そうですか。では、失礼致します」

 ステラはくるりと踵を返して行った。

「まさかサービスをしてくれるとは思わなかったね」

「イーディ、落ち着いて」

 イーディは今にも跳びつきそうになっている。

「甘そう」

 思わぬデザートがやってきたんで、驚きより喜びが大きかった。

 パフェを食べ終える頃には満腹になった。

「もう食べられない」

「もし余裕があったとしても、だめだよ」

「そろそろ行こうか?」

「そうね」

 立ち上がると、ケヴィンがお金を払うために先に歩いた。

 テーブルを拭いているステラに声をかけた。

「パフェをありがとう。また機会があれば来るね」

「はい!是非!」

 外に出たときには二人が待っていた。

「ケヴィン、ご馳走様」

「フローラ、俺よりあとに来るなんて、もしかして出口がわからなかった?」

「わかっていた!ただ、ステラにきちんと礼を言っていたの」

「そういうことにしておくね」

 いや、だからそうなの!何で信じてくれないのかな?

「別の店を見に行く?」

「あちこち行って、本のことを忘れさせようとしていないよね?」

「魔法具を見たいから、あっちに行こうか、フローラ」

「私を無視しないで」

 ここからすぐ近くに魔法具店はあった。

 中には一定の期間だけ空を飛ぶことができる草や透明になれる飴、魔力を高める草、攻撃用の魔法を防ぐことができるブレスレット、見せたいものを見せることができるアロマキャンドルなどが売られていた。商品はたくさんあった。

 だけど目当てのものがなかったので、私とイーディは何も買わなかった。買ったのはケヴィンだけ。

「何を買ったの?」

 ケヴィンは人差し指を自分の唇に当てて、秘密のポーズをとった。

「怪しいものを買ったの?」

 イーディは怪訝そうな表情をして、私をケヴィンから遠ざけた。

「嫌だな、そんなことないよ」

「内緒にされると疑いたくなるわ」

「いずれ教えてあげようかな」

 本当に教えてくれるのかな。彼は気まぐれなところがあるから期待しないでおこう。

「それじゃあ、書店に戻りましょう」

「ちゃんと忘れないでいたのね」

「当然でしょ?」

「仕方ないな」

 イーディは欲しがっていた本をケヴィンに買ってもらい、笑顔が溢れていた。



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