無関心
「電波は通っている、と」
自宅、自室のベッドの上、そこに寝転がり、手にした携帯電話をながめつつ秋山聡はそうつぶやいた。
今しがた謎のメッセージを受信した彼は、そのメッセージをすぐさま閉じて、携帯を同じベッドの上に放り投げた。
やわらかいベッドの上でそれは小さくバウンドし、一切の動きを見せない。と思えば、すぐにそれは振動を始めた。
「おう、南か、どうした」
すぐに携帯を手に戻し、聡は電話に答えた。
「さっちゃん、今からお前んち行っていいか!?」
「え、今から?もうすぐ10時だぞ?何しにくるんだよ」
疑問と、面倒だという思いを同時に電話越しの相手に尋ねた。相変わらず元気のいい声で、向こうの相手は言う。
「いやーなんかさぁ、すげぇ面白そうな映画見つけてさあ、さっちゃんの部屋、テレビあるだろ?それで今から一緒に見ようと思ってな!」
「テレビったって・・・」
ちらっと横目でテレビを見る。それは今ではほとんど稼働してはいなかった。
聡はもともとテレビを見る方ではなく、ニュース番組くらいしか見なかった。高校の入学と同時に、勉強、そして趣味のギターに専念することで、テレビを見る時間などほとんどなくなった。しかしそこにはメディア再生機器そのものはないものの、ハイテクなゲーム機があった。それ一つで最近の記録媒体はだいたい再生できた。
「来るの?」
「というかもう家の前だよ」
えっという驚きの声を発し、聡は窓の外を見た。自宅の前で元気よく手を振る彼の姿が、そこにあった。
その手には近所のレンタルショップの袋がさげられていた。
電話を切り、聡は彼の出迎えに向かった。
ペットボトルのサイダーを折りたたみ式の小さなテーブルの上に置き、二人はテレビの前に座った。
聡の親友、南貴彦が持ってきた映画は、1年ほど前に映画化されたらしいアクション映画だった。
ほりの深い海外の俳優がヘリコプターから飛び降りるシーン、そこからストーリーは始まった。
目的地は真下に映る何かの基地のようだ。ある程度まで降下すると、彼はパラシュートを開いた。さすがに見つかってしまうだろう、という聡の突っ込みの通り、あっさりとその基地の人間に発見されてしまう。
基地全体に警報が鳴り響き、基地の屋上、ヘリポートの部分に人が集まってくる。当然と言うべきか、皆アサルトライフルを肩に下げていた。そして、始まる一清掃射。弾丸が彼の肩、腕、脚をかすめた。しかし奇跡的にほぼ無傷である。そして、彼は懐からハンドガンを取り出し、右手に構え・・・画面が消えた。
やっと見入ってきたところで急に消えたテレビ。「あっ」という情けない声と共に、聡は貴彦を見た。
「いや、もうなんか飽きちゃって」
なんとも無責任なことである。そもそも映画を見ようと押しかけてきたのは貴彦のほうであって。
しかも今からが見どころだったはずなのに。
「消すことないだろう、俺、見入ってたのに」
「いや、だめだ、俺達高校生には無駄にする時間なんてないんだ!そもそもだな、敵陣へ向けて空からまぬけに突っ込むのはおかしいと俺は思うんだ」
なんてことをさも偉そうに言い放った貴彦に、聡はため息一つ。
「じゃあなに、どうすんの、帰る?」
「いやまだ早いしな。テレビでも見ようぜ」
画面はアクションシーンではなく、今日のニュースへと切り替わった。
ちまちま書いてみます。