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色熱《いろねつ》  作者: 花咲乱世
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第一章 食事会

サークルが一緒で、いつも仲の良かった3人組。

主婦になっても年に2回か3回はランチや食事会、旅行をしようという約束をしていたけど、現実にはそうそう経済的にも行けるものではないし、子供の育児もある。

自分には子供が二人いるし、綾子には子供が一人だけどご主人の親御さんと同居で、勝手に出てばかりもいられるわけがない。

陽子には子供がなく都心の高級マンションでご主人と二人暮し、料理好きが高じて料理研究家なるものになって、今では講師として教えたり雑誌の取材も受けたりと結構忙しい毎日を送っているらしい。

料理のプロなだけあってランチのお店はいつも陽子がチョイスして予約が必要ならそれもしてくれる。

良かったのは3人共、結婚しても都内にいることができたので、年に2~3度はランチをして近況報告や昔話、噂話で盛り上がる事ができる。三人仲良く今年37歳になる。


ホテルのロビーに入ると二人共、来ていた。

「ごめ~ん、待たせちゃったかな」

「冬奈、ひさしぶり~」

「久しぶり冬奈、半年ぶりくらいね?」

「うん、もうそんなにつのね、早いわね~」

「じゃ、そろったところで行きましょう」

「ふふ、楽しみね冬奈、ここのビュッフェ美味しいんですって、それに上の方の階だから窓際は景色もいいのよ、ねぇ陽子」

「そうよ、予約取るの結構大変なんだから」

「コネで取ってくれたの?」

「冬奈ったら、当然よ!でないと私達なんて一年先くらいまで入れやしないわよ」

「綾子ったら、大げさ」


 3人で軽い会話を交わしながらエレベーターに乗り込み、昼間ビュッフェをやっているイタリアン・レストランへと入った。

 入り口で名前を告げると、背の高いちょっとイケメンの給仕が窓際の席へと案内してくれた。

置いてあった予約カードが取りはらわれ、

料理類やフルーツ・デザート類の場所の説明をしてドリンクメニューを置いて行く。


「ねぇ、すごいねマジにホテルの食事じゃない?サービスもいいし、これで2500円って、予約いっぱいなの理解できたわ」

「そうね、一時間半っていう時間制限があるけどね」

「うはっ!一時間でも充分なくらいだわよ」


 時々、若い時分のノリのまま話す綾子。

雰囲気もどこかキャピキャピ感が残ったまま母親になったという感じで、しぐさや顔立ちもいまだに可愛らしい。

大人っぽいのが陽子、やはり社会に出て働いているからだろうか?少しホロ酔いにでもさせたら大人の色気が漂ってきそうなタイプ。根がしっかりしているのが、表に出ていなければ、どこに行っても男性が放っておかないわね。

「そうね、席にくる時にざっと料理が見えたけど品数もかなり豊富ね。でも、まずは飲み物を頼んでから取りに行きましょう」

「あ、私グラスワインにする~、ロゼで」

「私も綾子と一緒で」

「そうね、じゃ三人共同じ物ね」


 陽子がさっきの給仕と目を合わせると、オーダーを取りにササッと歩み寄ってきた。

う~ん歩き方も練習するのかしら?

いいホテルだとボーイさんも格好いい。

穿いている制服のズボンも清潔だわ。

店はいいのに制服が汚いままのボーイが料理を運んでくると折角美味しそうな料理でも食欲が落ちる。

食べ物を扱うお店なら、制服も綺麗であって欲しいものだとつくづく思う。

グラスワインを3つ注文して席を立った。


 トレーを手に皿をのせる、前菜らしき物が並んでいるところでゼリー寄せにエビのカクテル、トマトカップに何か詰めてイクラがのってる物等、数種類を少量ずつのせて、サラダへ向かい、混ざって手の込んだ物より生野菜を多く取った。

 空腹に目の毒、生唾を飲み込む。

 メイン料理の整えてある方へと移ると綾子と陽子がいた。

二人と一緒に話しをしながらグラタン風のものやキッシュ、魚料理、ムール貝の入った炒め物、チキンソティ、ポークピカタ、牛肉の赤ワイン煮込み等あれこれと取り分けた、ざっと見てメインだけでも15種類ほどあるみたい。

ようは三人共全種類の味見をしたいので、テーブルでお互いにつつけるように選んだ。

 ローストビーフはその場で切り落としてくれた。

パスタの種類も豊富だけど早めに手を出すと後が続かなくなる。デザートも、甘党なら泣いて喜びたくなるほど色鮮やかにたくさん並んでいる。

三人がテーブルに置いた料理は、色とりどりの野菜や魚貝に生ハムにチキン、ポーク、ローストビーフ等と共に綺麗なソースやドレッシングが添えてある。どれも適温に温められており、香りが良い。


「ふ~美味しそうね、私、朝食摂ってなかったから、選んでるときお腹が鳴りそうだったわ」

「ふふ冬奈ったら、でも本当、すっごい美味しそう。材料も良い物使ってるんじゃないの」

「そうね、素材もいいし、色も綺麗、後はお味ね」

「はい先生、では早速頂きたいと思うのですが?」

 綾子のおちゃらけが始った。

昔からいつも場をなごませて楽しくしてくれるムードメーカー。


「では、乾杯をしてワインで空腹感をさらに感じてから食すように!」

「はは~~」

「あはは、陽子まで、、ふふ」

「さてそれじゃ、乾杯ね、半年ぶりでも三人で元気に楽しく会えた事に、かんぱ~い」

 陽子が音頭をとった。

「かんぱ~い」

「かんぱ~い」


 一口飲んで、胃に入ると空腹にみてキリリとした。

「半年もったとは思えないけど、二人の顔が見られてホッとしたわ」

「うん冬奈の言うとおり、これがたとえ一年でも五年でも、ううん、十年以上会ってなくても、会えたときには今と同じ気持ちで会いたいね」


 誰からともなく、料理を口に運びはじめる。


「綾子のわりには、随分真面目な発言が出たじゃないの。ふふ」

「ああ~ひどい陽子ったら、マジで思ってるのに~」

「ふふ、ごめんごめん、わかってるって。三人共同じ気持ちよ」

「そう、不思議ね。昔はそんなこと考えないで、いつでも会えるっていうのが当たり前だから考えもしなかったのに、三人共年を取ってきたってことかしらね?」

「あはは、冬奈きっつ~い。年取ったとは考えたくないな~。ねぇ陽子」

「でも、そうかも知れないわね。年々自分の時間がありそうでいて無くなっていって、反対にもっと年取っちゃえばヒマで友達と会うのが楽しみ~ってなるかもね、まぁ、それまで三人共長生きしましょうよ」

「あ~あ、陽子ったら結論言っちゃったら、終わっちゃうじゃん」

「あはは、悪い癖よね、ごめん」

「ふふふ」


 料理を味わいながら雑談が弾む、三人揃ってグラスワインをお代わりした。


「美味しいわね」

「うん、料理ももちろんだけど、外で友達とってのが私はうれしいな。普段、うちの人帰りが遅くて家で食べない事の方が多くて、食事は彼の両親と毎日一緒、別に嫌じゃないけど、たまには違う人と食べたい」

「うちも主人の帰りが遅いから、子供達と三人で食べるのがほとんどよ。そのうえ、上の由菜は本格的な反抗期に突入してるし」


「あは、由菜ちゃん本格的になってきたんだ?」

「もう、すごいったらないわよ。毎日心がボロボロよ、言ってる本人もボロボロになってるんだろうに、それに気がつかないのね」

「そんな頃もあったわよね、冬奈も負けず劣らずお母さんに言ったくちじゃないの?」

「綾子…ご名答!だから余計に腹が立つのよ」

「ふふ、似たもの親子ってわけね」

「そう思ってもね、口論してる時はそんな安穏あんのんと考える事ができないの。陽子はいいわよね、ご主人と二人でいつまでも新婚気分じゃないの?」


「そんなわけないじゃない、料理研究家なんて云ったって、今じゃ家で作る事の方が珍しいくらいよ。私が少しばっかり忙しい分、主人は主人で自分の時間過ごしてるわ、忙しい時間が同じ時間帯とは限らないでしょ。結構やりにくいもんよ」

「どこの家庭でも、何かあるのね~」

「そうね、主人なんて由菜の反抗期に気づいてないんじゃないかしら?休日は接待ゴルフだとか取引先の展示会だとかで私と話す時間もほとんどないし、あ~あ結婚してってしつこく迫って必ず大事にするって云ったのは、何処どこにいっちゃったのかしらね」

「あははは、そうよね~そういえば新婚の頃遊びに行ったら熱々《あつあつ》で見てられなかったもんね~」

「ふふ綾子と行った時、ビックリしちゃったわよね!私たちがお客なのに、奥さんの冬奈の方を下にも置かないような扱いで。結婚して主人に話したら恋女房なんだろうって」

「あはは恋女房・・冬奈、恋女房なんだ~」

「違うってば!あの当時だけよ、綾子、声大きいってば、今なんてかまってくれやしないわ」


「あ……」

「うん?どうしたの綾子?」

「冬奈のかまってくれないで思い出したの」

「何を?」

 面白そうだと思ったらしい、陽子が食いついた。

「あのね半年近く前かな、良美って覚えてる?サークルの時の遠藤さん」

「あ、ええ覚えてるわ、懐かしいわね~。時々一緒に食事したもの、ねぇ冬奈も覚えているでしょ?」

「ええ、目のクリッとして日焼けが健康的な子だったわ」

「そう、忘れた頃に時々電話やメールくれるんだけど……」


 綾子の声が低く小さくなった。

「メールくれた時、色々話してたら出会い系サイトで知り合った人とお友達付き合いしてるんだって、云ってた」

「今時流行りの出会い系サイトね」

「ええ?危なくないのかしら?」

「それがね、とっても優しいんだって。あ、もちろん良美、ご主人いるんだけどね。もう何年もかまってくれなくて、ご主人とは無くなってしまった甘酸っぱい思いと優しくなれる自分がいるんだって」

「友達で終わればいいけどね、男と女で友達って昔からの知り合いとか主人と共通の友人ていうのでもなければ、あり得ないんじゃないかしらね、同窓会でも多いらしいじゃない、

お互いの中に若い頃の自分を見るのか知らないけど」


 もっともな意見だし、同感の意味を込めて陽子に頷いた。


「うん、でも一人じゃなくて何人もの人とメールしてると友達で済むんだって。一人にらわれなくなるって。それに会わずにメールだけでもいやされるって云ってたよ。ああ、そうなのかな~って納得したけど。ちょっとうらやましいなって思った」


「ふ~ん、寂しさをまぎらわすために始めたのね、最初は皆、そうやって始まるのかも知れないわね」

「そうなの?ちょっと怖い気もするけれど、綾子はどうなの?」


「え?私は……冬奈ったら、嫌だなぁ。あるわけないじゃん、彼の両親といるんだよ、うちは子供もまだ幼稚園だし」

「そっか、良かった。心配しちゃった」

「ふふ、本当心配しちゃうじゃないね。で、その後、良美からの連絡は?」

「あれから、まだ無いわ。近況聞いてみようかな?面白そうだし……」

「大変な事にでもなってなければ、次のランチの話題にもってこいかもね」

「だよね!なってても面白いけどね!じゃ、近いうちに連絡して聞いてみるね」


 テーブルの伝票立ての伝票で時間を確認すると、あと15分ほどあるので、陽子は、もう一杯グラスワインを頼み、綾子と私はデザートを取りに行った。

デザートはケーキ、ババロア、プリン、ゼリーと多く、どれも一口二口大ほどにカットされている。マカロンまであり、シャーベットの類も数種あった。

二人とも、デザート皿にたっぷりとのせた。


「あ~あ、そんなにデザート食べて平気なの?

何年かしてから来るわよ、脂肪がドカンと」

「だって~美味しそうで、我慢できないよ~」

「うん、たまにだし。やっぱり数年してくるもの?」

「そうよ、運動量が減って代謝も悪くなったころにドカドカとくっつき始めるのよ」

「じゃ、次回はもっと美味しくない所にしてよ~」

「ふふ、綾子、本当にいいの?」

「うっ……陽子のいじわる」

「ふふふ」

「あははは」

「ふふふ」

 本当に楽しい、ひと時のランチ。

これでまた明日から、いえ帰宅してから主婦業が頑張れそう。

自分だけ美味しい物を食べてしまったような罪悪感があるから、皆には何か美味しい物を作ってあげたいな。


ランチ代を払ってロビーに下りる。グラスワイン2杯と税がついても4000円までいかなかった。

すごくお得なランチを味わった気分。

陽子が選んでくれるお店は、どの店も大満足できる。

三人で駅の方向へと歩き出す。


「陽子、今回もいいお店を選んでくれて有難う、すっごく美味しくてお財布にも優しくて大満足よ」

「本当、陽子有難うね、助かっちゃうよ、肥っちゃうと困るけど」

「ええ、また良いお店見つけておくわ、だからそれまでに綾子はネタを仕入れてくるのよ」

「はい先生、了解しました、あはは」

「ふふ」

「今度は三ヶ月ぐらいで会えるといいわね」

「うん、そうね。由紀人もこの春には小3になるから、大丈夫だと思うわ」

「はい!では三ヶ月以内に事後報告を集めて参ります」

「寂しくても。それに慣れるしかない時もあるのにね」

 妙にしんみりと陽子が言った。

 その時、私には良美へのなぐさめに聞こえた。

駅に着くと、陽子は地下鉄なのでここでお別れ。

「ふふ、じゃ三ヵ月後ね。2週間くらい前になったら連絡入れるけど、どうしてもダメな日がわかってる日は、先に教えてね」

「先生、了解しました」

「わかったわ、三ヵ月後ね」

「じゃ、バイバイ」

「バイバイ」

「うん、バイバイ」


 別れぎわになると楽しかった分、いくらかの寂しさもこみ上げてくる。。

もっと三人で楽しみたい。

もっと話したい。

 綾子と一緒に駅構内にあるケーキ店でケーキを購入した。

二人で切符を買う。

乗り換え駅までの数駅が一緒。

改札を入りホームへ向かいながら、

「冬奈ぁ……」

「うん?な~に綾子」

「うん、陽子の前だからああやって云ったけど、本当は出会い系サイトに登録してみたんだよね」

「え?本当なの?」

 ホームに入ってきた電車に乗り込む。


「あ、うん、子供じゃないんだから全然大丈夫だけどさ、本当に優しいメールくれる人がいっぱいで、登録したその日のうちに50本以上メールが届くのよね。まだ会ったことは無いけど、会うことも考えて写メとかも添付頼むと半数くらいのメールが来なくなるかな。

年齢も20代から50代くらいまで幅広くて、結構楽しい」

「彼のご両親もいて、メールやりにくくないの?」


「うん、両親が寝て、うちの人が帰ってくるまでの間にやってる事が多いの。メールする前までは、うちの人も毎日遅いしイライラしてる時が多かったんだけど、メールしてからイライラがおさまってきて、うちの人が遅くても気にならなくなった。それより、このメール書くまで帰って来ないで!みたいな」

「……それって……罪悪感とかは?」

「ないよ、だってイライラが取れれば両親やうちの人にも優しくなれるし。大体忙しくても、放っておく方がひどいじゃない」

「それは……そうかも知れないけど」

 由一さんの事を振り返り共感した。


「それにね、顔半分下だけの写メをプロフィールに掲載してるんだけど、みんなベタめしてくれるから、なんか嬉しいし綺麗になれそうな気もしてくるんだよね」

「写メって……大丈夫なの?」

「あはは、わかるわけないじゃん。誰にわかるっていうのよ。顔そのまま載せてる人もいっぱいいるんだよ」

「信じられない……」

「冬奈も今度覗のぞくだけ覗いてごらんよ、登録しなくても写メ見られるサイトもあるし」

「……あまり興味ないけど」

「そうだよね!冬奈は恋女房だもんね!あはは」

「そんなんじゃないわよ、本当に」


「何人か会ってみてもいいかな~って人がいるんだよね」

「……やめた方がよくない?」

「お友達として、人が多いところで会うならいいじゃない」

「それって、ご主人がいない時間をめたいだけでょ?」

「そうかも知れないけど、冬奈もメールしてみると解るよ。一人一人メールでも違うのがわかるから。いない時間を埋める相手が誰でも良いわけじゃないんだよね」

「よく解らないけど・・気をつけて。綾子も立派な大人なんだから」

「うん、解ってる。大丈夫だよ」


 綾子の乗り換え駅のホームに電車が入る。


「綾子、本当に気をつけてね。無理はしないって約束してね?何かあったらすぐに連絡して」

「あはは、有難う。でも平気平気~。じゃ、面白い事あったら連絡するね~バイバイ」

「うん、バイバイ、またね」


 心配が心に残った。綾子のばか。楽しいランチの後で心配させるような事云って。

でも、いつもと同じ明るい笑顔してた。

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