第4話 勇者たちの絶望、鍛冶師の覇道
■森の奥、惨状
「くそっ……刃が欠けた!」
剣を地面に叩きつけ、カイルが吐き捨てる。
二度目の戦闘で剣身はギザギザに裂け、盾もひしゃげ、残った矢はわずか三本。
僧侶のリナが震える声で叫ぶ。
「カイル、撤退を! このままじゃ全滅する!」
だが退路を封鎖するように、オーガの群れが行く手を塞いでいた。
大剣を握る戦士ガロが吠える。
「なんでこんなに武器が脆ぇんだよ! ほんの数戦で使い物にならねぇ!」
その答えは誰も言わない。
――ただ1人、レオンを追放したあの日が脳裏をよぎるだけ。
■レオン、辺境の覇王へ
場面は変わり、辺境の町「バロスト」。
鍛冶場の熱気が今日も立ち込め、レオンはすでに町の武具市場を独占していた。
新しい鍛造技術「魔力循環刀身」を導入した武器は、一度振ると魔力が刃に流れ続け、数時間は切れ味が落ちない。
金貨の山が増え、護衛傭兵団も雇い入れた。
その顔ぶれは、かつてカイルたちの仲間だった高レベル冒険者や、別の勇者パーティを追放された猛者ばかり。
レオンのもとで全員が最新鋭の武器を装備し、まるで小国の軍隊のように鍛え上げられていく。
町長までもが膝をつき、言った。
「この町は、あなたの治める領地も同然ですな、レオン殿。」
■勇者パーティの地獄
一方その頃、カイルたちはボロボロの装備のまま、オーガ50体と対峙していた。
「おらぁァァ!」
必死の渾身斬りも、刃が欠け、鎧を貫けない。
仲間の一人が背骨をへし折られ、悲鳴と同時に意識を失う。
カイルは血まみれで叫ぶ。
「クソッ……レオンさえ、まだいたら……っ!」
誰も返事をしない。
その瞬間、かつての見下すような笑顔が、一同の脳裏に重くのしかかった。
■噂、広がる
市井の噂話。
「お前、知ってるか? 町一つを鍛冶で支配したっていう若い職人の話。」
「ああ、名前は……確か、レオンとか言ったな。あの勇者パーティを追放されたって。」
「追放した奴ら、今頃どうしてんだろうな。」
その噂は国境を越えて広がり、王都の商人、ギルドマスター、果ては諜報員までがレオンの動向を探り始める。
「この才能、放っておけば、いずれ国をも揺るがす……」
■ラストシーン
夕焼けに染まる鍛冶場で、レオンは新たな図面に目を落とす。
それは剣でも槍でもない――兵器と呼ぶべき巨大な魔導砲。
「勇者カイル……次はお前たちを助けるんじゃない。粉々にする。」
レオンの目は、炎よりも深く赤く燃えていた。
命からがら戻った勇者パーティ。だが王都はレオンの名を歓迎し、カイルたちを“無能”と切り捨て始める。
プライドも仲間も、すべて崩れ落ちるその日まで――




