表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

そういえば、この前

作者: 甲崎雄人

もう数週間前の夜のことだけどな

真夜中の12時過ぎに急に俺はどこかに出かけたくなった

その時読んでいた本の影響だろうな

普段見ない、真夜中の街の顔が見たかったんだ

親はまだ起きていたが、問題はない

いつもなら寝ていてもおかしくない時間だったし、寝ているところに入ってくるような親じゃなかった

玄関から靴を取ってくるとそっと窓から抜け出した


俺は夜の空気を吸い込みながら人っ子一人歩いていない道を歩いた

少し冷たい夜の空気とほんのちょっとの罪悪感が俺のテンションを上げていく

これだから真夜中の散歩はやめられない

その時はそんなことも考えていた


夜の街は面白かった

やっぱり昼間とは違う顔を見せてくれた

いつもは人が絶えない道は沈黙に包まれ、ほんの一時間前まではネオンが映えていたデパートも闇に紛れた

十数人で黙々とスリラーを踊る女達や公園で二人きりでイチャイチャする男二人組なんかもいた

さすがに公園では恐くてすぐに引き返したけどね


まぁ、そんなこんなで夜の街を満喫した俺は帰路に着いた

ん?

それだけかって?

そう急くなよ

あくまで、夜の街は抜け出した理由の説明

見たのは帰り道だ


何も別の顔を見せるのは夜の街だけじゃない

いつも歩く道だって夜の顔を見せる

街灯の少ない暗い道は薄暗く不気味で、誰もいない夜の学校を通る時なんて少しの物音にさえびくついてしまう

墓場なんて昼間でさえ近寄りがたいのに夜なんてもってのほかだ


その墓場のそばを通った時だった

最初は気のせいかとも思った

だけど、確かにガッガッ、と何かを打ち付けるような音が聞こえる

そのまま気にせずに帰ればよかった

でも、テンションが高かった俺にはその音に対する恐怖心より好奇心のほうが勝ってしまったんだ

そこの墓場のそばにはお寺があって、立派とは言えないがご神木がある

墓場に入っていく細道に入るとどうやらそのお寺のほうから音がなっているらしい

ほとんど明かりがなく初めは何も見えなかったけど、しばらくすると目がなれてきてご神木のそばに立って何かしていることがわかった

ガッガッ

長い髪のその女はご神木に向かって何かを打ち付けているようだ

気づかれないように俺は墓に身を隠しながら少しずつ近づいていく

近付きながら俺は女がやってることにだいたいの検討をつけていた

携帯の時刻を見るとやはり2時過ぎ

丑の刻参りだ

これで女が藁人形を打ち付けていたら紛れも無くそうだ

それを確かめるために俺はどんどん距離を詰めていくすると、あることに気づいた

打ち付ける音と一緒にビチャッビチャッという音が聞こえるんだ

ただの丑の刻参りじゃ聞こえるはずがないその音に気付いてしまった

普段なら絶対に引き返すであろうその違和感

だが、夜の空気に毒された俺は止まる事ができなかった


そして、俺は見た

髪を振り乱し、木に張り付た血まみれの子猫に向かって何度も何度も釘を打ち付ける女の姿を


自分でも血の気が引いていくのがわかった

これはさすがにヤバイと思って、俺は気付かれないうちに引き返そうとしたんだ


カンッ

空き缶が俺の足に当たり、音をたてる

女に俺の存在を気づかせるには十分だった


「誰だっ!!」


俺はたまらず駆け出した

家はもうすぐそこだったが、あの女相手じゃ家に逃げ込んでもどうしようもない気がしたんだ

逃げるしかなかった


女の足は思うのほか早く、なかなか距離を離すことができない

その事実が俺をさらに焦らせる

それでも、確実に距離は開いていき、俺の気持ちが少し緩んでいたのかもしれない

俺は足がもつれてバランスを崩した

ちょうどその時、何かが頭の上を音をたてて通り過ぎたんだ

カラン、カラン

少し離れたところで何かが落ちる音を聞きつつ、俺はなんとか体勢をたてなおし、必死に走る

ふと目に入ったのはさっき頭の上を通り過ぎたであろう金づち

あの時、体勢を崩さなかったら……と、思うと今でもゾッとするよ

もう走れないと思ったとき、気づけば女の足音は聞こえなくなっていた

その晩はとても家の近くに近寄る気にはなれず、俺はばあちゃんの家に泊まったよ


あれは本当に恐かったな~

でも、この話親には話してないんだ

抜け出したことバラさないといけないからさ

最初はびびってたけど、最近はそこまで気にならなくなってるしなてか、この部屋暑いな

そこの壁にリモコンかかってるからエアコンつけてくれ

サンキュ

それじゃ、今日は親もいないし、酒でも買ってきてパーッとやるか!




そういえば、お前ら誰にうちに入れてもらったんだ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ