男爵
侯爵家の書斎。重厚な扉がゆっくりと開かれ、ショウイチは緊張を抱えつつ中へと進んだ。
グランツ侯爵は書斎の奥、重厚なデスクの前に座っていた。
「ショウイチ、よく来た」侯爵は穏やかながらも威厳ある声で言った。
「先日の戦功により、君に正式に爵位を授けることにした」
侯爵は長い箱を開け、中から美しい紋章のついた男爵の勲章を取り出す。
「これを受け取れ。君は今や正式に男爵だ」
ショウイチは言葉を失い、深く一礼した。
「ありがとうございます。まるふく商店の名に恥じぬよう精進します」
侯爵は微笑みながらも厳しい視線を送った。
「男爵は名誉と責任を背負う。油断するなよ」
ショウイチは力強く頷いた。
「分かっています。これからも皆の力になれるよう、料理人であり男爵として歩んでいきます」
侯爵は「それでこそだ」と呟き、書斎の扉が静かに閉まった。
こうしてショウイチは異世界で正式に男爵の爵位を得た。
彼の名は今後、料理だけでなく領地の運営や政治にも影響を与える存在となっていくのだった。
しかし数週間後、
ショウイチは書類の山にうんざりしながら頭をかいた。
「やっぱ数字とか事務仕事は苦手だわ。こりゃ完全に詰んだな」
そこへリナがゆるっと入ってきて、軽く鼻で笑う。
「なによ、それぐらいで大げさな。あんた男爵なんだから、もっと肝据えてよ」
ショウイチは苦笑いしてリナを見る。
「お前がいなきゃ俺、完全に終わってる。お前の方が貴族だし、俺の仕事は料理と人をぶっ飛ばすことだけにしとくよ」
リナはちょっと得意げに胸を張る。
「その通り。あんたはその二つに専念してて。私が事務と経営の部分は全部引き受けるから」
ショウイチはホッと息を吐く。
「お前がいなかったらとっくに潰れてるよ。頼りにしてるぜ、リナ」
リナはちょっと照れながらも、笑顔で答えた。
「当然でしょ。男爵様の相棒なんだから、甘やかさないわよ」
二人のやりとりは軽口混じりだけど、信頼は固かった。
このコンビなら、どんな困難も乗り越えられそうだと、ショウイチは思った。




