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Episode︰4

 夕焼け空は徐々に霞み始め、辺りはほんのり暗くなる。

号令が掛かったように街灯の(あか)りは芸術的に光を放ち始めていた。

それはさて置き、俺の煽りにゴブリン達は怒りの声を荒げているではないか。

「俺様達が低俗だとぉ!?」

「その減らず口、二度と聞けないようにしてやるぜ!」

俺はその煽りに全く動じず考え事をする。

テロ組織に追われてた時は確か防御、攻撃、回復。全て出来ていたな。

という事は『トリプル』!?

『トリプル』とはスキルの種類で、攻撃防御回復サポートの中、そのどれか三つを所持している状態の事だ。

まさに俺は攻撃防御回復の三つを所持しているからトリプルって事になるが、そんなの聞いた事ない。

せめて『ダブルスタンダード』と呼ばれる二種類の所持までしか……


 「おい貴様!聞いているのか!」

ふと気付けばゴブリンの群れが目前1mの所まで来ていてビビった。

(おっと、防御防御……)

そう思い防御スキルを展開しようとしたその時。

「大丈夫か少年」

落ち着いた声が俺の耳に届く。

女性の声だ。

街灯の光を反射し白銀に輝く騎士の姿をしているその人は俺の目の前にいたゴブリンを切り刻んでいた。

そしてそのまま残りのゴブリン達も倒してしまった。

「ふぅ……超級スキル『白銀の翼』だよ」

女騎士は静かにそう呟いた。

(どこかで聞いたことがあるな……)

その白銀の翼というスキル名をなんとなく聞いた覚えが俺にはあった。

サリィの阿修羅よりは知名度低いのかな……

そんな事を頭で考えていたら女騎士が驚いたように声を上げる。

 

 「くっ……また来たか。今度はゴブリンキラーの群れかっ!」

ゴブリンキラーの群れだと!?

ゴブリンキラーというのはゴブリンの完全上位互換の魔物だ。

ゴブリンキラーが10匹群れればデュアドラゴンと呼ばれる龍型の強い魔物に並ぶレベルには力がある。

要はかなり厄介なんだ。超級レベルのスキル所持者1人でやっと勝てるくらいには。

うん……つまり今の俺(神級スキルの所持者)には驚く要素0だな。ついクラスB時代の感覚が蘇ってしまった。

そんな事を思いつつゴブリンキラーの群れを見てみる。うーん、10匹分群れているな。

「少年下がっていろ。どうせ戦えないんだろ?」

女騎士は俺を勝手に戦えない奴扱いしてきた。

正直癪に触ったがまぁいい。

この女騎士がどの程度戦えるか見てやろう。

俺はこの神級スキルを所持してから何だか余裕ができた気がするのは気のせいじゃないだろう。


 女騎士は先頭にいたゴブリンキラー2体目掛けて突撃をかます。

スキル『白銀の翼』の効果により出現した光の剣を振りダメージを与えた。

(ふむふむ。威力は凄まじいな。ただ範囲的に攻撃はできないようだ。群れ系の魔物の討伐には少々時間が掛かる)

暇なので女騎士の分析を俺はしていた。

なんかサポート系のスキルで速度を早めたりしたいなぁ。

そう思った俺は無意識に女騎士に手を翳していた。

すると……

スキルが勝手に発動した。

「な、なんだ?回復?攻撃?防御?今必要ないはずだがっ!」

そう独り言のように呟いたと同時にすぐさま理解する。

(まさか……サポートスキル!?)

「身体が……軽いっ!この速さなら」

女騎士は唐突にそう言い放ち、迅速な身のこなしでゴブリンキラーの群れを攻撃し始めた。

そして10秒前後で討伐完了させてしまう。

対象の身体スピードを向上させる効果と見たが、他にもあるかもしれない。

普通サポートスキルというのは1種類だけの効果が多い。

スピードを上げるならそれ一筋の種類となる。

攻撃上昇一筋のパターンもある。

でも俺のスキルは覇王の剣。

神級のスキルだ。

サポートなのにダブルどころかトリプルぐらい付与効果の種類があっても何らおかしくない気がする。


 「少年大丈夫か?考え事?」

女騎士はその美麗な顔を俺に近づけていた。

「おわっ!?ちかっ!だ、大丈夫ですよ」

俺は慌ててそう言うと女騎士は不思議そうに呟いた。

「何だか身体が軽くなったんだよな。まさか少年のスキル?いやそんなはずは……」

(もう隠しても意味ないか……)

俺はそう判断し今の一連の事は自分のスキルで起こした事実だと告げる。

「そうですよ!俺のスキルです!あとこの服装、どう見ても学生服でしょ。何かスキル所持してるかな〜。それなら戦えるかな〜とか発想まで至らないんですか……」

俺はジト目になりそう不満を溢した。 

「まだ1年生なのかなって思ってさ。なぁ〜んだ。君もう2年生以上なのね!ごめんごめん戦えないとか勝手に思っちゃってさ」

「べ、別にいいですよ……」

俺はこの女騎士のドジっぷりに少々苛つきながらそう呟いた。

女騎士は「あはは……」と苦笑いした後に言う。

「私はこう見えて国家自警士なんだ。『ベルセルク街の安全調査』という国家クエストの元、この街……"ベルセルク"の見回りをしてたんだよ」

「へぇーそうだったんですね」

やはり国家自警士か。そういう国家クエストがある事は知っていた俺は別に驚きもしないが適当に相槌を打っておいた。

ただ気になる点がある。

女騎士の格好を何故しているのだろう?

いや、国家自警士の服装なんて各自"何でもいい"という決まりではあるが気になるな。


 「あの……なぜ騎士の格好を?」

「へ?」

女騎士は呆気に取られた後、気を取り直し言う。

「彼の……真似かな」

何やら暗い表情をしてそう言う女騎士に俺は少し驚く。

(聞いちゃいけない事臭いな。話題変えよっ)

「あ!そういうことですか!それより……えーと。神級スキルってあると思いますか!?」

慌てふためいてしまい、苦肉の末思いついた話題は神級スキルの事だった。

「神級スキル!?少年そんな御伽話信じてるわけ?

ププッ……あ、ごめんごめん」

「信じてないって事ですね」

「そりゃそうでしょ。ま、別に信じる事自体は良いんじゃない?でも程々にね!お上りさんだと思われちゃうよ?」

女騎士は何言ってるのこの子みたいな顔で淡々とそう言った後、そろそろ帰るというような雰囲気を出し始めた。

「それじゃ、私は国家クエストの報酬貰いに行くからまた何処かで会えたらね少年!」

「はーいさようなら〜」

そして、そう別れの挨拶を告げた。

(ベルセルク街の安全調査の報酬か。どんなクエストだったんだろう)

『街の危険を護る』とかで必要条件をクリアしんだろうな。うん、そうだろう。

まぁいいや。まだ国家自警士になるのは先のことだし詳しい事は……

俺は焦って国家自警士のクエストに思いを馳せていたがそれより今目の前の問題を思い出す。

つまりライバを思い出した。

「アイツ……なんで俺を置いて帰っちゃったんだろ?」


 次の日……

ライバは学校に来なかった。

いつも朝の噴水通りで約束しているのだが、来なかったのだ。

(何してんだアイツ……)

ライバに思いを馳せながら俺はクラスᏚの教室に足を運んだ。

同年代の生徒が集まっている教室の中に例外中の例外が居る。

そうサリィの事だ。

幼少の頃からこのアオ学校へ進学した天才。

現在の年齢は11歳。この教室の中で一人だけかけ離れた年齢をしている。

そのサリィは教室に入った瞬間の俺に話しかけてきた。

「君、クラスᏚじゃないでしょ?なんで入ってきたの?」

サリィが問い詰めるように聞いてきた。

(そっか。こいつあのテロを俺が追い払ったあと早めに帰ってたんだ……)

「いや……それが」

俺がそう動揺し始めたその時。

 

 「そういやサリィには言ってなかったな……ってかサリィの場合すぐどこかにフラフラ〜っと消えちゃうから言うタイミングがないんだけど」

俺はその声の主に目を向けた。

(うわっ!この人……あのクラスᏚ所属の有名人『メイス・カイトル』じゃん本物だ……!)

メイスはサポートの達人と呼ばれ、よくサリィとタッグを組んでいると聞く。

なぜ知ってるのかってそりゃ、彼とサリィは有名人なのでそういう噂を耳にするのだ。

「何を言ってなかったっていうのよ?」

サリィは首を傾げながらメイスに聞く。

「実はカメタ君は神級スキル『覇王の剣』の所持者なんだ」


 それを聞いてサリィは心底驚いた表情のあと「ウッソでしょ!」と言い放つ。

「ちょっと君。えっと……カメタ。校庭に来なさい!本当に神級スキルの所持者なのか確かめてやるんだから!」

背中にある小さな黒いサキュバスの羽をパタパタさせながらサリィはそう叫ぶ。

その後俺の襟首を掴み、強い力で俺は校庭まで連れ去られるのであった……

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