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Episode︰1

 突然だが、俺はヒーラーだ。

この世界ではいかに優秀なスキルを持って生まれるかが大事である。古事記にもそう書いてある。

だがしかし、俺は大したスキルを持って生まれなかったのだ。


 「ふむ……君のスキルは……『キュアハーツ』か。

一般的な下級スキルじゃないか……

では、回復役としてクラスBに任命する。おいカメタ!聞いてるのか?」

教師が茫然自失としていた俺に喝を入れてきた。

カメタとは俺の名前だ。

カメタ・エメラルダス

性別は男。12才。

趣味は友達との魔法鍛錬。

自己紹介終わり。


 ここは国立魔法アオ学校。

今日も『魔法の勉強』が夕方まで続くのだろう。

いやそんな事は今重要ではない。

俺はスキル継承の式にて、自分の授かった下級スキルに動揺し、完全に茫然自失としていた所を教師に突かれている真っ最中なのだ。

『スキル継承の式』とは、この世界の至る所にあるであろう魔法学校で2年生になった最初の月に行われる儀式であり、ここで大体の人はスキルを授かるのがこの世界では一般的なんだ。

スキル継承の式は十中八九、「だだっ広い外の会場」で行われる。

もちろん今、まさにだだっ広い外の会場でその式をやっていて、大勢の生徒に俺は囲まれながら魔性石に手を触れたんだ。


 「す、すいません!クラスBですね?了解です!」

教師の舌打ちを聞き流し俺はすぐさま会場の席に戻った。

(クラスBに任命……か。Cじゃないだけマシだったぜ)

クラスには良い順から『S・A・B・C』がある。

Cは本当にゴミスキルのパターンに配属されるらしいからホント不幸中の幸いだ。


 ふと席の隣の友達……というかライバル?というか親友?が震えている。

そうか。次に呼ばれる番なのだ。

「行ってくる」

そいつはちょっと緊張が入り混じった声でクールにそう言った。

ライバ・ルーカス

性別男。12才。


 人混みが見守る会場の中、ライバは会場の中心にある魔性石へと近づいて行く。

そして、ゆっくりと手を魔性石にかざした。

ライバの周りを蒼白い光が覆う。

「ふむ……上級スキル『光の弓』か。よろしい。クラスAに配属だな」

教師の声に「よし!」とライバはガッツポーズを決めていた。


 その後の俺はまるで絵空を見るかのようにうつつを抜かしていた。

ライバには「クラスA所属……すまんな、抜け駆けみたいでさ」と言われ、クラスBに入った途端、仲間内から「ヒーラーか。ボロ雑巾の様に扱ってやるから覚悟しとけ」とか言われる始末。

 突然だが、この世界のスキルってのは基本的に『防御』『攻撃』『サポート』『回復』の4種類の役割を持っている。

その中でも『回復』は重宝されてもおかしくない筈だ。

しかし、クラスBの治安は悪いようでこのように雑用の様な扱いを受けるのはよくあるらしい。


 「はぁ……いいよなライバは」

帰り道の道中。噴水通りの前を通り過ぎる辺りで俺はそうため息をついた。

「何がだよ。やっぱり例の事か?スキル」

ライバは俺を察したのか『スキル』のことを苦笑で口にした。

「ああ。クラスAなら国家クラスのクエストが受けられるし、クラスBは下らない街のクエストやらされるしな……」

 そうなのだ。

それがこの世界では常識であり、この世界の魔法学校の方針なのだ。

今まで共に歩んできた友だが、『スキル取得』というワンシーンでここまで待遇が変わってしまうのだ。

スキルが全て……か。


次の日、クラスBでの日々が始まった。

魔法の勉強は基本自習というシステムとなり、これからは街のクエスト全般を担う事に。


「早くしろよヒーラー」

「ゴメン……」

俺は情けなさに歯を食いしばりながら、クラスBの受けた傷を治す。

その傷は巨大なスライムの王である『王様スライム』から受けたダメージだ。

「回復だけが取り柄だなお前は」

そう吐き捨てたのはいま俺が回復させて上げたそいつだ。

回復されて貰った身でこの態度……

日々こんなことが続いていたので俺はついに頭に血が上ってしまった。

「お”い……!」

ドスの効いた音が俺の声帯から発せられたがそれをすぐさま遮ったのはスキル取得前のクラス分けされてない時の旧友だった。

「やめとけ……!」

キュウの一言で俺は正気に戻りなんとか事態は事なきを得た。


 「あのカメタがまさかクラスBとはな……」

焚き火の前でそう呟くのは先程助けてもらったキュウという同級生だった。

「そんなに俺を過大評価してたのか?」

「まぁな。お前、魔法の習得の速さや、センスは優等生だったろ?」

そう微笑しながら言う彼の顔は焚き火の光に当たりどこか美しい。

ちなみにこの世界での魔法は、ファイアーとかブリザードなどのかっこいいイメージの魔法ではなく、あくまで生活必需品の様な物だ。

フライパンで料理をする際に火をつけたり、水分補給の為にウォーターを使ったり。そんな感じをイメージしてもらいたい。

まさにいま焚き火を起こす際に俺はファイアを使った。

俺はキュウに言葉を返す。

「スキルは魔法の上手さに関係ないんだろうな。何が魔法学校だよ」

愚痴をこぼす俺にキュウは苦笑した。

 「それより、お前。さっきのあの行動は駄目だぞ?」

どこか真剣な眼差しで俺を見つめるキュウに俺は返答する。

「悪かったよ。ヒーラーになってからあまり楽しい生活を遅れてなくてさ……思わず暴れそうになった。止めてくれてありがとな」

クラス内での喧嘩は御法度だ。喧嘩が一つ起きればその両者の評価は一気に広まり、世間体という敵が牙を向くのだ。

スキルがいかに強くとも世間体を敵に回すと厄介だろ?とキュウに今さっき諭された俺は内省する。


 それから2年の月日が経った。

俺は4年生となっていた。この学校は4年制であり、つまり最終学年となった。

あれからという物、相変わらずクラスBで俺は『ヒーラー』を極めた生活をしていた。

俺のキュアハーツのスキルは上達をし、「キュアハーツ」の回復力はレベル5へ。つまりレベルマックスまできていた。

言っていなかったがスキルは上達が可能なのだ。

ここまで来ると上級スキル『ホーリーマインド』のレベル2くらいの回復力にはなる。

……ただそれでもやはり下級スキルのキュアハーツだな。

大した回復量ではない。

 今日は全校集会らしく、アオ学校の中央エリアにある大きなホールに数多の生徒は集まっていた。

「どうせ変な生徒が何かトラブル起こしたんだろ?めんどくせぇ……」

クラスBのリーダー格の奴がそう辟易の気持ちを吐露した。

その後、校長先生がマイクを手に話し始める。

「最近やたらと物騒です。テロ組織のニュースなどがありますし。皆さん本当に気を付けてください」


 それはその台詞のあとだった。

ホールのシャンデリアの光が突如として消えた。

真っ暗闇に包まれる俺含めた生徒達は騒ぎ出す。

「な、なになに!?」

「もしかして何かのサプライズ!?」

そのざわめき声の中、ふと銃声のような音が聞こえた。

不気味な雰囲気の中、悲鳴が大きく響く。

(まさか……テロ!?)

俺は嫌な予感をしてそう察する。

そして、その考察は的中していたようだ。


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