トイレで好きな女の子が作った弁当の蓋を開けて思案する僕
「おはよう」
朝、教室に友達に挨拶しながら美少女の椎名さんが入って来た。
『あぁー可愛いなぁー』
「心美おはよう」
椎名さんと同じクラスカースト上位の女生徒が返事を返す。
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花って言葉がある。
確かにその通りなんだけど、僕は荒野に咲く1輪の薔薇の花と思ってる。
その意味はまぁ察してくれ』
「心美、あの女の事、信に問いただしたの?」
「昨日の帰りに問いただそうとしたんだけど、明日の弁当宜しくって言って駆けてちゃったんだ」
「えーなにそれ?」
信とはクラスカースト上位にいる男で椎名さんの恋人って言われてる、凄ーく羨まし奴。
『椎名さんの弁当だと? 羨ましい』
椎名さんと同じクラスカースト上位の女の1人が教室に駆け込んで来た。
「心美! 大変だよ、信の奴が女子校のあの女と腕を組んで、学校とは反対側の車両に乗ってったよ」
「え? 信やっぱり浮気してたんだ」
『浮気だとー? 椎名さんという美少女を振って何処のブスと一緒になる気なんだ?』
「クソー、人に弁当を頼んでおいてデートかよ。
弁当がもったい無いじゃないか」
『椎名さんの弁当かぁー良いなぁー』
椎名さんはカバンから弁当を取り出し教室の中を見渡してから、僕に近寄って来て声を掛けてくる。
「オイ、アンマン、此れやるよ。
いらなかったら弁当箱ごと捨てろ」
『僕の名前は安万満、アンマンマンじゃ無い、でも、小学生の時から誰も安万満って呼ばず、皆んなアンマンとかアンマンマンって呼ぶんだよ』
って、「良いんですか?」『ウワーァ! 椎名さんの弁当を食べられるなんて、僕は幸せ者だなぁー』
僕はカバンから休み時間に飲もうと思って購入していたお茶のペットボトルを取り出し、椎名さんのお弁当を持ってトイレに駆ける。
「チョットチョット、心美、良いの? アンタ、彼奴何時もニタニタと心美の事を見てて気持ち悪いって言ってたじゃない」
「そうだよ、ホラ見てみな、ニタニタ顔で弁当を抱えて教室飛び出して行くよ」
「だから渡したのよ」
「「え?」」
教室から飛び出る僕の耳に、椎名さんと他2人が何か話しているのが聞こえたけど無視してトイレに走った。
トイレに走る途中、担任に声を掛けられる。
「オイ! アンマン、直ぐ授業が始まるぞ」
お弁当とペットボトルを制服の中に隠し返事を返す。
「チョット腹が痛いんでトイレに行って来ます」
トイレの個室で便座に腰掛け弁当の蓋を開けて、僕は「ウッ」と声を出し椎名さんの弁当を見つめる。
だって……だって、弁当のゴハンの上に海苔で「ドクイリ、シネ」の文字があったから。
椎名さんは前に「嘘つきは嫌いだ!」って言ってたから、本当に毒入りのお弁当だと思うんだ。
でも、でも、此のお弁当を捨てたらもう二度と椎名さんのお弁当を食べる機会なんて無い。
だから僕は唸りながら暫し思案する。
そして僕は椎名さんの弁当を食べた。
当然だけど、弁当の容器も蓋もピカピカになるくらい舌で舐めたよ。
綺麗に舐めたお弁当箱は宝物として持ち帰り、綺麗にラッピングして自室に飾ってある。
ただ付け加えると、毒は入っていなかったんだけど代わりに強力な下剤が入ってたらしく、僕はその日トイレから出ることはなかった。