入学式②
「申し訳ないが、貴方達には死んでいただきます。」
そう言って老人は膨大な魔力をその身から溢れさせ、術式を展開した。
黒い魔術が分厚い弾幕となって会場に降り注ぐ。
「まずい!!」
自身に向かってきた攻撃を必死を避ける。
が、それで終わりではない。まだまだ魔術の弾丸は降り注ぎ続けているのだ。
「!!」
確定した死が体の横を通り抜ける。瓦礫の破片が己の肉を穿ち、抉り、削り取る。
それでも構ってられない。死ぬわけにはいかない。
死の感覚が精神を研ぎ澄ませ世界の輪郭を歪めた。
極端に引き伸ばされた世界の時間の中で思うように動けない中、無理な動きを体に強制して必死に攻撃を避け続けた。
数時間にも思える極限の数秒の後に
一瞬にしてホールは崩れ瓦礫の海と化していた。
相手がこちらの状況を探り、こちらが次の攻撃を恐れた一瞬の静寂。その瞬間、
「い゙っ!」
と誰かが声を出した。己の傷を思い出したのだ。
それによって自分の傷も自覚してしまった。全身から血が流れ、肉は抉られ、骨も軋んでいる。
全身を痛みが駆け抜ける。体の至る所にナイフが刺さっているような感覚に、視界は赤く染まり明滅してしまっている。
もはや戦意も喪失し、こんなにあっさり死ぬのかと命を諦めたその瞬間。いくつかの影が老人へと伸びた。
「まさか、立ち向かって・・・?」
「いったい誰が・・・」
7人だった。
かの名家だと誰もが気づいた。 汐那もその場にいる。
無傷で立ち向かう彼らの姿に、俺は憧憬と尊敬と妬みと苦しみを覚えた。
なにもできずに、なんの力も持たずに祖母を殺されたあの時の俺とは違い、彼らは力を持って敵の前に立っている。
その悔しさが俺に生きる意志を植え付け、このまま死ぬことを、彼らの戦いを見逃すことを許さなかった。
その戦いが始まろうとしたその瞬間
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「降参いたします。」
老人は突然そう言った。わけが分からなかった。誰もがぽかんとしている。
「今年の子たちは優秀ですね。例年だと出てくるまでにもう少しかかるのですが。」
優しそうな笑顔で老人はそういった。そして続けて、
「それでは、これを持ちまして神聖魔術学院、入学式とさせていただきます。転移魔法にて治療室にお送りいたしますので、治癒師の治療を受けた後に各々の教室にて待機していてください。」
そう言って俺達は治療室に送られたのだった。




