こっちの世界
激戦地の中、少女は立っていた。
ブロンドの髪は、月明かりとともに揺れる。華奢で幼さを残す顔立ちとは裏腹に、黒光りしたガーターベルトが脚を這う、可愛らしくも勇ましい戦衣装まとっていた。
少女の手には大鎌が握られている。
身長に対して長すぎる刀身には鎖がついており、少女が動くたびにしゃらりと音を立てた。
そして、少女は勢いよく飛びあがる。
「出ました、小悪魔サイダーです」
「総員、退避!」
退避しろと言われてもなお立ち向かった黒髪の少女は、腰に隠していた拳銃を二丁取り出し、小悪魔サイダーに向けて発砲した。
「やめないか!」
「しかし、総統、私はこの世界のために戦います!そうでなくては…!」
黒髪の少女を追った男は、彼女がすべてをしゃべり終える前に首の後ろを叩き気絶させた。
幸い、小悪魔サイダーには気づかれる前だった。
この国では、二つの派閥に分断されている。
一つは黒髪の少女側の国政軍。もう一つは金髪少女側の国防軍。
黒髪少女の国政軍は、いわゆる国軍というやつで、元々の勢力は微々たるものだったが、現政権樹立時に反乱を鎮圧したことで急速に勢威を増している。
一方の金髪少女の国防軍は、国防を主として来たが、反乱軍として台頭を続けてきた。
以前、国政軍が一部国防軍を鎮圧したことを契機として、新たに開発された少女兵器型軍人、小悪魔サイダーが起用されるようになり、状況は悪化したのだった。
***
夜が明け、激戦が収まった時、黒髪の少女は病室で目を覚ました。
同じ部屋で休んでいたおさげの少女は、彼女の身を案じ、言った。
「無理しないで、お姉ちゃん」
目を覚ました黒髪の少女を見て、おさげの少女は思わず涙した。
「ごめん、ごめんね、大丈夫だから」
おさげの少女の背をさすりながら謝っていると、ノックが。
どうぞ、と言うと、総統が部屋に入り、言った。
「ハナ、召集だ」
「え?」
「AI召集だ」
黒髪の少女の顔は見る見るうちに青ざめていき、叫んだ。
上を向き、他の部屋を突き抜けるような甲高い声で、彼女は延々と叫んだ。
普段、台本は書くのですが、小説はあんまり書かないので、どんなこと書こうかなあとふわふわ書いています!
楽しんでいただけると嬉しいです!