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愁兄は、モデルのバイト以外にもレストランのボーイもしてたりで、朝と夜しか顔を合わせられない。叔父さんも中々に忙しい。ドラマの刑事みたいではないが、色々とあるみたいだ。
でも、広海が一緒に行動してくれるから、愁兄のいない時間の寂しさを埋めてくれる。
「広海、ごめんね。いつも付き合わせて」
学校の教材やら色々と用意する物があったりする。
「用意しないといけないのは一緒なんだし、一人より友紀と一緒で俺は楽しいよ。周は、バイトばっかだしつまんねぇし」
「だよね、あの二人バイトばっかし、僕たちが淋しいと思ってるのわかってないんだから」
僕が拗ねていると
「なぁ~、友紀はさ、愁兄のことを好きだよな」
僕がびっくりして目を丸くしてると
「そのなに驚くことか?バレバレじゃん」
「嘘~」
どうしようとおろおろしてる僕を見て大笑いしてる。
「なんで隠すんだ、好きだって言えばいいじゃん」
「駄目だよ、愁兄は僕の事弟みたいに思っているだけだもん。そんな事言ったら一緒にいられない」
こんな僕が家族として愛してもらえるだけでも、奇跡のようなことなのに。僕は母親からも愛されないゴミの様に捨てられたのだから。広海は知らないから、僕が必要とされない、生きようが死のうが母には興味の無いものだったということを。
「友紀、そんな暗い顔をするな。俺は、お前が側にいてくれて、嬉しいと思ってるんだからな」
「ありがとう広海」
少し照れた顔で笑う広海を、可愛いと思う。
入学式、初めての場所、初めての人たち、考えただけで怖い。何故こんな身がすくむのだろう。
「友紀、用意はできたか?」
部屋に呼びに来てくれた愁兄にしがみつくと、そっと抱き返してくれる。暖かい腕の中、恐怖が薄れてくる。
「友紀、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。もう平気」
ドアチャイムが鳴った。
「周達がきたよ、行こう」
リビングに降りて行くと、広海君の後ろから抱きしめてる周兄がいて、固まってしまった。
「周、朝から何やってんだ?」
「何って広海がネクタイ結べないって言うから、よし、これでいい」
なんだ、びっくりした、周兄が広海の首にキスしてる様に見えてしまった。
「紛らわしい事するな、朝から盛ってるのかと思ったんだがな」
「な、な、何、言ってんですか、そんな事するわけないでしょ」
「おぉいいね、してもいいならするけど」
余裕の兄二人の会話に真っ赤に狼狽える僕達お子様二人。
バカバカしい朝の会話に笑い出していた。まだ少し、緊張していたけど楽になった気がする。
「さぁ行くぞ」
僕と広海を挟んで並んで歩く。
周兄は広海の寝癖を直しながら
「高校と中学、同じ敷地内だが結構離れてるから会いに行くの大変だよな」
「会いに来なくていいよ、友紀がいるんだし」
「なんだよ、俺に会いたくないのか?」
「そんな事言ってないだろう、周も忙しいだろうなと思ったからさ」
もごもごと語尾が小さい声になる広海の肩を抱く周兄に、広海が恥ずかしいと逃げる。いつもの仲の良い喧嘩が始まる。
「友紀、昼は一緒に学食にするか?かなり混むだろうが、どうする?何か買って外で食べるか?」
「僕はどっちでもいいよ」
「じゃ、売店でパンでも買うかな。教室まで迎えに行くから、広海と待っていて」
「うん、わかった」
「おまえらいい加減にしろ!」
愁兄はまだ戯れあってる二人に一括してため息をこぼす。
高校の門が先に見えて来て、二人はまたなと手を上げ行ってしまった。
愁兄がいなくなった途端、緊張してくる。
「友紀、俺が小学校で虐めたから今でも初めての場所や学校が怖いか?」
広海が情けない表情なのが可笑しくて
「そんな事ないよ。緊張してるだけだよ」
安心したのか広海にも笑顔が戻った。
僕は大丈夫、一人じゃない。
僕の世界が少し広がるんだ。勇気を出さなきゃ、自分の手で新たな扉を開けるんだ。
広海と同じクラスではなかったが、同じ並びの教室だから、いつでも会えるよと、微笑んでくれるから俯かないようにしようと頑張れる。
入学式を初めて経験する僕、周りは退屈そうにしているが、僕は何もかも新鮮に感じた。
式も終わり教室へと移動になる。広海が僕を見つけ隣に並ぶ。
「式って小学も中学もかわらねぇな、退屈で寝そうだった」
「僕はワクワクしちゃった。初めてだから」
「そうか、友紀は途中からだから初めてか~、目がキラキラして綺麗だ」
「馬鹿、変な事言わないでよ、恥ずかしい」
広海こそカッコいい、いつの間にか背も高くなり、がっしりと男らしい体格だし、顔もキリッと意思の強そうな男前。きっとモテるだろうなと羨ましくなる。
其々の教室に入り、空いてる席に座るように指示が黒板に書かれていた。
一番後ろの窓際、僕には特等席のように思えた。
窓からぼんやり外を眺めていたら
「お前、なんて名前なんだ?」
そんな声が耳に入ってきたが、自分に話しかけてくるなんてあり得ないと思っている僕は、外を眺めていた。
おい!と肩を掴まれ、僕はビックリして小さな悲鳴をあげてしまった。
「ごめん、ビックリさせるつもりじゃなかったんだ、聞こえてないのかと思ったから」
僕が恐る恐る見上げると強面の背の高い男の人が立って見下ろしていた。
「ぼ、ぼ、僕に何か用?」
隣の席に腰掛けた彼は
「俺、さくら、お前は?」
何を聞かれたのか頭が回らず、固まったまま見つめてしまっていた。
「お前の名前?聞こえているよな?」
慌てて首を縦に振り
「御坂…」
と呟いた。
彼はよろしくと言い笑った。強面だった表情が人懐こい顔に変わった。
担任からの色々と説明があり、昼休みになった。
ぼんやりと広海たちが来るのを待っていると、隣の席からサクラが親しげに
「お昼はどうするんだ?」
「僕は友達と約束してるけど」
「そっか、学食ってどんなか知ってるか?」
「兄さんが凄く混むって言ってたよ。行くの?」
「どうするかな?御坂は弁当でも持ってきたのか?」
「ううん、兄さんが購買で買ってきてくれるの」
ぎこちなく話をしてると
「友紀、周はまだ?」
広海が僕を見つけ側にきて、話をしていた彼を威嚇する。
「友紀、誰こいつ?」
「広海、そんな風に言うのはよくないよ」
広海を宥めようとするが、サクラも面白くなさそうに広海を見る。
睨み合いのようになり、
「お願いだから、二人とも怖い」
僕の震える声に広海が反応し、
「ごめん、友紀」
情けない声で謝り僕の髪を撫でる。
その様子にサクラが不思議そうに
「お前ら恋人同士?」
「はぁ?違うけど、なんか文句があるのか?」
「ないよ。俺、九鬼咲良。お前は?」
急に自己紹介をした彼に肩透かしをくらった感が拭えず、不貞腐れたように
「坂下広海」
二人をヒヤヒヤしながら見ていたけど、サクラの言葉に
「エッ、サクラって下の名前なの?」
この強面でサクラは……とポカンとしてしまった。
「よく言われる。今はこんなだが、小さい頃は愛くるしい可愛さだったんだよ。名前にピッタリのな」
ウインク付きでニヤリと笑ったから、僕も広海も声に出して笑ってしまった。
「お前、面白い。サクラってどんな字で書くんだ?まさか木のサクラじゃないよな」
「それは勘弁だよ。咲くに良いって書く。坂下はヒロミで御坂はユキ、三人とも女名だな」
ホントだねって笑い、広海と咲良がよろしくと握手をしたりしてる。
「なんか楽しそうだな。広海、待たせた」
兄二人が迎えに来た。愁兄は、なんだか機嫌が悪い、怖い顔をしている。周兄がそんな愁の様子にため息を零し、
「昼に行こうぜ、友紀、愁の事は気にするな。ただのヤキモチだから」
愁兄が僕の肩を抱き寄せ
「サンドイッチがあったから買ってるからな、中庭に行こう」
「うん、たくさん買った?」
「そんなに食べるのか?お腹空いたか?」
「ううん、彼、咲良君も一緒に駄目かな?」
愁が、ジロリと睨む。
「俺?俺は別で、なんか適当に食べるし」
顔の前で両手を振り後ずさる。
「俺はOKだぜ。愁もいいだろ?早く行こうぜ、食べる時間が無くなる」
周が広海の腕を取り出口に向かった。愁も仕方ないと
僕達も後を追った。
肩を抱かれた僕の横、咲良が
「いいのか?俺も一緒でも。俺、何も食べる物買ってないよ」
小さな声で僕に話すが、僕より先に愁兄が
「余分にあるから気にするな」
前を見たままだけど、いつもの優しい声に僕も咲良に良かったねと囁いた。
中庭の木陰に座り込み、買ってきたパンを並べる。
「焼きそばパン、俺ゲット」
広海がいち早く手を伸ばした。
「やっぱり、広海は焼きそばパンなんだな」
感心するように愁兄が呟くと
「えっなんで?」
「周が広海が大好きな焼きそばパンと歌いながら走っていったからな」
広海は赤くなった顔で周を睨む。
「恥ずかしい事、するな」
周はごめんごめんと広海の頭を撫ぜご機嫌取りをしている。
「友紀、厚焼き卵のサンドイッチあったぞ。好きだろ」
「うん、好き。愁兄ありがとう」
愁兄は、俺たちの様子にびっくりしている咲良に
「お前も好きなの取れよ。広海に全部食べられるぞ。それより、俺は、友紀の兄の葛城愁。お前は名前なんて言うんだ。さっき友紀が言ってたけど、聞いてなかった、すまん」
最初の怖い印象とは違い、優しく聞かれ、また謝られ慌てた咲良は
「九鬼咲良です。福岡から来ました。
坂下を一目見て友達になりたいと思って、よろしくお願いします」
また、愁兄の視線が少し険しくなり
「何故、友紀なんだ?」
愁兄は、野菜のたっぷり入ったサンドイッチを咲良に渡しながら聞く。
ありがとうございますと受け取り
「実家に残して来た弟に似ていて、俺とは腹違いなんで、凄く可愛いんです」
咲良が、弟を思い出し話す表情は甘々の兄の顔だった。
「友紀は俺の弟だからな、過剰なスキンシップは禁止」
わかったなと念を押し、サンドイッチを食べてた僕の頬についたソースを舐め取った。
真っ赤になった僕と目が合った咲良も真っ赤になっていた。
「咲良君、俺は、真瀬周。広海は俺の恋人だから友達でお願いしますね」
何を思ったのか周が咲良ににっこりと怖い笑顔で釘を刺している。
「周、いい加減にしろよ。咲良がびっくりするだろう」
周と話してる広海は、可愛く見えた。
「大丈夫ですよ、俺は弟一筋ですから。自分の事より好きなので。だからって友紀をそんな目で見てないですよ。友紀は友紀だし、俺の弟じゃないですから」
安心してくださいと、目尻を下げ笑う。
二人の兄は、了解と手を挙げやっと優しい笑顔に戻ってくれた。
昼休みが終わり、和やかに過ごした時間は短く感じる。
教室まで送って行くと言った俺たちを大丈夫と三人肩を並べて帰って行く。
「なぁ~、あいつ、咲良の事どう思う?」
「友紀に友達が出来るのは嬉しいが、複雑な気分だな」
「愁は友紀に好きだと言ったのか?」
「何度も言ってるが、家族としての好きだと思ってるみたいだな」
寂しく苦笑いする愁は、弟としての好きの振り幅は遠の昔に振り切ってしまっている。
「友紀は鈍感なのか?今日もあれだけの事されて、そんな風に思えるのは、天然記念物ものだな」
「仕方ないさ、愛される事に慣れてないからな。友紀は俺の事、兄としか思ってないのかな?」
寂しそうに笑う親友が、言い寄ってくる女達に全く興味を向けないのは、良しとしてもこんな自信のない表情をするのは堪らない気持ちになる。だからと言って横から茶々を入れて拗れたら、きっと愁は立ち直れないほど傷つくだろう。
広海は、何か聞いてないかなと帰ったら探りを入れてみるかと、手のかかる二人にため息を零す。
兄二人と別れた三人は、友紀を挟み並んで歩いていた。
「友紀、愁さんと苗字違うけど、俺と同じ?」
突然、咲良の言葉に動揺する。兄弟だと言っていても、血の繋がりのない他人。切ろうと思えば直ぐに切れてしまう細い糸、そんな危うい繋がり、咲良に何て言えば良いのか言葉が見つからない。
「咲良、その話は後な。時間がないから急ぐぞ」
広海が、僕の緊張を感じ取り話を終わらせる。
「わかった、すまない」
咲良は広海の鋭さを増した視線に触れてはいけない物に触れたのだと悟った。
会話のないまま教室につき、別れ際広海が咲良の腕を掴み、何かを囁いていたが、僕は咲良に何て言えば良いのか、ホントの事を言って軽蔑される、ゴミのように捨てられ、生きている事さえ罪悪なのだと、母の蔑む顔が咲良と重なり、その恐怖に視界に薄いカーテンをひくように遮断してしまっていて気付かずにいた。
ガタガタと椅子の動く音にいつの間にか授業が終わっているのに気づいた。何の授業をしていたかも覚えていない。
隣の席に恐々目をやるとそこには咲良の姿はなくほっとしたが、どこに行ったんだろうと気になり、教室を見渡したがいない。
キョロキョロとしている僕に
「友紀、教室移動だよ、行こう」
後ろの出口から咲良に呼ばれる。
咲良の何も変わらない様子にぼんやり見つめてしまっていた。
「友紀、急げ。ほら教科書、ノートは?」
僕はごめんを繰り返し咲良に追い立てられ教室を飛び出した。
最初の授業はどの科目も先生の自己紹介やら雑談で終わったらしい、僕はよく覚えていない、始終ぼんやりしていたみたい。
やっと授業が終わり、教室に残り部活の話しに花を咲かせる者や、寄り道の相談やら、賑やかになっていた。
「友紀、帰るぞ。兄貴二人は生徒会だと、帰りにどこか寄ろうか?」
広海がいつの間にか僕の隣に立っていた。
「あれ、広海いつ来たの?」
大きなため息を零す広海だが、いつもの事だと諦め文句も言わない。
「友紀は相変わらずぼんやりさんだな。咲良、お前は用事あるのか?」
隣で帰る支度をしていた咲良、
「今日はバイト無いし、暇」
「咲良、バイトしてるのか?学校の許可は?」
「俺の家、酒屋だから。簡単にOKさ」
「いいな、俺も雇え」
「雇えって上から目線だな」
二人はケラケラ笑い、
「友紀、支度出来たか?」
「ん、何の?」
「帰らないのか友紀は?」
「あっそうか、帰る支度だね」
バタバタと片付けてる僕の横で
「広海は大変だな、友紀はずっとこんな感じなのか?」
ため息混じりに
「ぼんやりなのは変わらないな。やり始めると早いんだが。俺なんかより集中力抜群だからな」
「俺も集中力あるって言われるが、好きな事にだけ発揮するな」
「嫌いな事には全くか、俺もだ」
勉強には、全くのほうだなと似た者同士だと長年の親友みたいになってる。
「お待たせ、帰ろう」
「おう、どうする?外で食べるか?」
歩きながら咲良が、美味しい店なら俺が何件か知ってると。
学校の外、通りに出た所で
「咲良、美味しい弁当か惣菜でも買って、俺の家来ないか?」
「いいのか?」
「周も帰ってくるし、ちょうどいいさ。友紀もいいか?」
「僕はいいよ。広海の本少し借りていい?」
好きなの選べばいいよと、広海が家の方向に歩き出すと
「こっちだったら、手作り弁当の店があるから、そこにするか?弁当だけじゃなく、お好み焼きもあるよ。そこでいいか?」
「マジか、お好み焼き食べてみたかったんだ。こっちのはフワフワなんだろ?」
広海がワクワクしながら聞く。
「広海はこっちじゃないのか?」
「俺も友紀も四国だから、ぺったんこのお好み焼きだったよ」
なぁ~って僕に話を振ってくるから、
「でも、美味しかったよ。フワフワのお好み焼きってどんなんだろうね」
三人で食べ物の話しで盛り上がり、また、店の中でもワイワイと騒ぎながら買い物を楽しんだ。
マンションを見上げる咲良が
「凄いマンションに住んでんだな」
自分ち店舗と住居が一緒の一軒家だからマンション住んだ事ないんだよと、周りを興味深々って感じだ。
鍵で自動ドアを開けエレベーターに乗り込むと
「俺、これ苦手なんだわ、胃がせりあがるようだろ」
咲良が、顔を顰めているのが、可笑しくて広海がクスクスと笑ってる。
「笑うなよ、酔いそうだ」
「もしかして、咲良ってジェットコースターも駄目なんじゃ」
「あれは、人間の乗るもんじゃない」
掛け合い漫才のような二人の話に僕も笑顔で眺めてる。
「どうぞ、入って」
中に入った咲良は
「何でこんなに広いとこに一人で住んでんだ?贅沢だろ」
「一人じゃないし、周と住んでる。ここ、周の部屋なの。俺は居候なわけ」
周さんが言ってたのってマジだったのか?付き合ってるって。
引くかと思ったのに、咲良はいいなぁと羨ましそうにしている。
夕飯には早いから、どうするって事で、僕は広海の部屋で本を物色すると言うと、二人はゲームと、用意を始めた。
広海の部屋には、たくさんの色んなジャンルの本がある。かなりの読書家の広海が選ぶ本はどれも僕の興味をそそる。
最近は、写真集とかもよく見るようになった。建築のジャンルにあった建物の写真集も心惹かれた。
広海が呼びに来るまで、本の世界にどっぷりとはまっていた。
僕が本に夢中の間、リビングでゲームをしているはずの二人は、何故かカウンターに並んで座り、難しい顔で話をしている。
「友紀は、当分出てこないから、少し言っておきたい」
広海に、教室に入る前に今日、時間があるか聞かれ、話をしたいと言われていた。友紀には内緒のようなので、話を合わせ今ここにいる。
「友紀には内緒で友紀の話をして平気か?」
「外にベラベラ喋ると言うなら、話は無しだ」
「俺の中に納めろと言うことだな、わかった」
「咲良は、ホントに友紀の親友になるつもりがあるか?俺は、一生、離れても周と一緒に友紀を見守り、助けていくつもりだ」
「ずっとか、凄いな、俺はまだわからないな。俺の一番は弟だから、それでも、友紀とは長い付き合いをしたいとは思っている」
わかった、と広海は話し出す。
「友紀と愁兄が苗字が違うと聞いてきただろ、二人は血の繋がりはない。友紀を愁兄の父親が引き取ったんだ」
「引き取ったって、友紀の親は?」
「友紀は親に見捨てられ、死にかけてるところを愁兄に助けられた。小学生の間は孤児院にいたけど、中学生になる機会に一緒に住む事になったんだ。」
「見捨てられたって置き去りって事か?」
「愁兄の親父が母親見つけて会ったけど、母親はまだ生きてるのか、あんたなんかいらないと言ったそうだ」
ふざけるなと咲良は悔しそうに唇をかんでる。
「それに、母親にも、母親が連れこむ男から日常的に虐待されていたんじゃないかと言っていた。だからなのかもしれないが、暴力的な事に異常な怯えを見せるし、親に愛された事がないのを自分が不必要だったからと思っているみたいだな」
「友紀が悪いわけじゃないだろう」
「咲良、声がでかい。ちょっと声を抑えろ」
ごめんと俯いた咲良は泣いていた。
「そして、友紀は愁兄を特別に思っているってことだ。でも、それを愁兄に知られると嫌われると思い込んでる。愁兄は明らかに友紀を特別に思っているのにな」
「友紀の事が気になったのが、わかった気がする。俺の弟も虐待されていたんだ。同じ空気を纏っているのかもな」
そうか、弟の事を守ってやれよなと広海は咲良なら友紀を悲しませないだろうと思った。
「話は終わりだ、友紀だけじゃなく、俺ともよろしくな。さて、飯にでもするかな。友紀を呼んでくるよ」
広海の後ろ姿を目で追いかけながら、咲良は友紀を守る仲間になる許可を貰えたんだとホッとし、緊張していた体の力を抜いた。




