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だから私は別れを告げた

作者: n
掲載日:2023/04/05


私はマリーティアと言います。伯爵令嬢です。16歳です。学園に通っております。

私はとんでもない現場を目撃しました。

同い年の婚約者の浮気かもしれないという現場を目撃しました。

どこぞの令嬢かと顔を確認した所リリー・ノースランド男爵令嬢じゃありませんか。

彼女確か色んな男性と噂になってましたが…、私の婚約者まで彼女と仲良くなるとは。

何か手を握ってますよね、恋人繋ぎ。

しかも距離が近い、あんなにピッタリと。


私の婚約者であるダルタニア・ヴェルガン公爵子息様は貴族の中でも国の最古の貴族で歴史も古く名家中の名家であり王族からの信頼も厚く一番の臣下として覚えもめでたい。


そんなヴェルガン家となぜ伯爵家のショボい貴族が婚約できたのか、それはヴェルガン家主催のお茶会での事でした。

ダルタニア様は当時(8歳頃)体も華奢で小さく、女の子のように可愛かった。

けど性格的には最悪だった。

「おい、お前」

「はい?」 

「そこの落ちたハンカチを拾え」

「は?」

「頭だけではなく耳も悪いのだな、早く拾え」

当時の私は、頭に血が上りやすく我慢が苦手だった。

お茶会でも気をつけろと言われていたのに私はとんでもない態度を取った。

「うるせぇよ。知るか、お前が拾えよ」

「は?」

私の言葉に今度はダルタニア様が固まる。

「だから、お前こそ頭悪いんじゃないの?自分で拾えってんだよ、何でも誰でも言う事聞くと思うなよ」

と悪態をついてダルタニア様に暴言を吐いて私は去ったのです、そうです、黒歴史です。

私は何を粋がっていたのか、最悪な態度に最悪な態度でお返しをしてその後お父様とお母様に叱られ怒られ自宅謹慎をくらいました。

その直後、何故か婚約の申込みがあり今に至るのです。


ダルタニア様はとっても見目が麗しいので、昔から私のような並の令嬢がなぜ婚約できたのかと妬み嫉み僻みで何度もいじめられました。

ダルタニア様も当てつけなのか、他の令嬢に言い寄られている姿やちょっかいをかけてる姿をよく見かけました。

その度にダルタニア様は

「何だ?何か言いたいことでもあるのか?」

「いえ…」

「そうか…」

と、小馬鹿にした態度で自分の行動を棚に上げて私を責めるような目で見てくる。

「お前は俺に対して何も言わないのか?」

「…ございません」

だって、一言でも言ってしまえば爆発するだろう。

黒歴史再びだ、だから我慢してる。


それに、ダルタニア様は私をそこまで好きじゃないだろうなと思う。

プレゼントも物は送られてくるけど、手紙なんか添えられた事もないし、誕生日に私がプレゼントを送ったら

「実にお前らしい贈り物だ、実に色気のない」

「…申し訳ありません」

とどんなプレゼントをあげても何か言われてしまう。


家に招かれた時は、必ず庭でしか会わない。

屋敷の中には入れてもらえた事もないし、入ろうとしたら

「勝手にウロウロするとは、マナーのレッスンがまだ未熟なようだな」

と頑なに入れないのだ。だから私も諦めて庭で過ごす。

他の人は入れるのに、何故か私だけ駄目なのだ。


考えてみると、私けっこう嫌われてるよなぁ。

婚約者らしい事なんか何もしてないし、むしろ他の女性とイチャイチャしてる事が多いかも。

まぁそうだよなぁ。私は見た目は並のどこにでもいる令嬢なのだ。

対してノースランド男爵令嬢は本当に可愛らしい。

ピンクや可愛いものがよく似合う人だ。

ダルタニア様と美男美女でお似合いだ。


ふと、二人は仲良さげにダルタニア様がノースランド男爵令嬢の肩を抱いてどこかへ歩き始めた。


「やっぱり、婚約破棄したほうがいいよね…」

私はダルタニア様に直接話をしようと决めた、これだけ関係も良くないのに婚約者で居続けるのはお互いに苦しいだけじゃないかとも思ったからだ。


私はダルタニア様に手紙を出し、後日ダルタニア様の家の庭で話をする事にした。

正式な婚約破棄のため両親も同行する事となった。


私の両親もこれまでのダルタニア様の態度を知っているようでいくら爵位が上でも、婚約者がいるのにあちこちの女性と噂になるようなら公爵家との婚約は無かったことにしようと言ってくれていた。お父様、お母様ありがとう。私を大事にしてくれてありがとう。


そうして私と私の両親、ダルタニア様とその両親とで美しいヴェルガン公爵家の薔薇の咲き誇るお庭で、婚約の破棄を申し出たのです。

お互いの父親同士で穏便にすませようと、何やら大人な会話をしている。

お母様達は仲が良いらしいので婚約破棄しても買い物とかお茶会もしようね的なことを話している。

問題のダルタニア様は私を睨みつけている。

何だこの状況は、早く終われと私は思っていた。


「お前はそれでよいのか?」

ダルタニア様が消え入りそうな声で私に話しかけた。

すると、周囲の大人のお喋りはピタリと止まり私に注目が集まる、え?やめてやめて、そんな怖い顔で皆見ないでよ。

「良いも何も、私ではダルタニア様の婚約者は務まらないと思います。現に婚約者らしいこともしてませんし。他のご令嬢でしたら貴方をお幸せにできるのではないですか?私には…できないことです」

私はダルタニア様をまっすぐ見つめた、きっとこれでこの方と話すのも最後かもしれない。

だから確りと話をしなきゃな…。

「私は、婚約を破棄したいと思っております」 

ダルタニア様は目を見開き、勢いよく席を立った。

椅子がその勢いでガタン!と倒れた。

「…ダルタニア?」

ダルタニア様のお母様が心配そうに見ている。

すると、ダルタニア様はぷるぷると震えながらダーン!とテーブルを叩いた。

茶器はひっくり返り、テーブルは大惨事だ。

見かねてダルタニア様のお父様が止めようと、

「ダルタニア!」

と声を一瞬荒げると、それに被せるようにダルタニア様の怒号が鳴り響いた。

「婚約破棄したくない!!!!」

シーンと静まり返る…。え?何と仰ったの?

「何でそんな酷いこと言うんだ!!マリーティアはっ、俺がっ、嫌い…なの?」

怒ったり、泣きそうになったり…情緒が不安定すぎませんか?ダルタニア様。

「嫌いとも、何とも…」

「何とも思ってないの?」

「正直に申しますと、最初は身に余る事に困惑もしましたが婚約者として支えていく覚悟を決めていた事もあります。けれど、他の女性と仲良くされている様子を見ると…流石に結婚前からこうされるのは…悲しく思いました。私が至らない事が原因かも知れないですが、ダルタニア様をお支えする事は…できないと思いました」

私の言葉にみるみる真っ青になって呼吸もおかしくなっていくダルタニア様、大丈夫かな。

「違うんだ、マリーティアっ…っはぁ、はぁっ、違うんだっ!ゴホッ、はぁっ…ひゅーッ、ひゅーッ、」

ついに、ダルタニア様は過呼吸を起こして部屋で寝かされることになった。

今は医者に診てもらっている。


「また、ダルタニアが落ち着いてから後日に改めて話でもしましょう。この度はうちの愚息が失礼をしました」

「いや、今日で何となく彼の本心が分かったので…彼の体調が整えば連絡をください」

とお父様同士で話をしていた。お母様同士はというと

「ごめんなさいね、うちの息子が本当に大馬鹿で、あんなに取り乱すなら最初から優しくしてたらいいのに何を考えているか…嫌な思いさせてごめんね、マリーティアちゃんも」

「いえ、お大事にとお伝え下さい」

とダルタニア様のお母様にペコリと頭を下げた。

「マリーティアもこの通り鈍い子だから、ダルタニア様も可哀想よねぇ…、また改めて話し合いをしましょうね」

と、私のお母様が言うと二人のお母様は残念なものを見る目で私を見ていた。

私、何か悪いことしただろうか…。お父様同士も

「まぁ、ダルタニアのアプローチが歪みすぎてるからねぇ…本当に私の父にそっくりで困ります」

とダルタニア様のお父様が言うと、お父様は

「先代の公爵様ですか、お元気ですか?」

「えぇ、元気ですとも。領地でそれは仲睦まじく余生を過ごしてますよ」

「先代の公爵の溺愛ぶりは有名ですからね」

これらの会話を聞いて私は思った。

もしかして…ダルタニア様、私の事好きなのか?

でも、勘違いなら恥ずかしい、それに情緒不安定過ぎて怖かったなぁ、ダルタニア様。

感情爆発して過呼吸になるダルタニア様を支えてく未来を想像してみたけど…うん、無いわ。

私には荷が重すぎる、とにかく次の話し合いで決着をつけなければ。


それからというもの、ダルタニア様の様子がおかしいです。学園でもやたらと話しかけてくるようになりました。

「マリーティア、昼食を共にしよう」

「あの、私達婚約破棄の話し合いの途中ですから…今更このような事は…」

「まだ破棄してない」

と凄く圧をかけてきます、周囲が私達の仲が良くなっていると勘違いしているようで、ヒソヒソと何やら噂されています。

ただでさえ女子生徒には嫌われてるのに…登校拒否したい。引きこもりたい。なのにダルタニア様はお構いなしに私と関わってくる。


「マリーティア、放課後は時間があるか?お前の好きなカフェのケーキでもどうだ?」

「何で私がそこを好きなの知ってるのですか?あの、前にも言いましたが婚約破棄…」

「行くぞマリーティア」

と放課後に連れ回されたり…


「マリーティア、買い物に行こう。君に似合うものを俺が見繕いたい」

「いえ、十分ですから…」

「お針子の腕が良いと評判の店があるんだ、ウエディング用もあるから見に行こう」

「あの、婚約破棄…」

「色んなデザインがあって迷うだろうからな、今のうちから色々見ていた方がいいだろう」

「ですから、婚約は…」

「行くぞ、マリーティア」


と、一方通行な会話を繰り出してくるダルタニア様に私はされるがままだ。

私達のその様子を見ていた、これまでダルタニア様と仲良くしていたご令嬢たちからの嫌がらせも日々ヒートアップしている。


婚約破棄の日取りが決まらない中、ノースランド男爵令嬢から呼び出しを受けた。

「マリーティア様っ、お願いします!ダルタニア様を解放してあげて下さいませ」

と目をウルウルさせている。一応婚約破棄を申し出てるから別に引き止めてるわけではないんですが…。

「私とダルタニア様は実は愛し合っております」

「あら、そうなんですか?」

「えぇ、ですからダルタニア様を諦めてください。ダルタニア様は私を愛してるのです」

もし、本当ならダルタニア様に確認して婚約破棄をさっさと進めたいところだ。

以前仲睦まじい様子を見ていた事もあるし、全く愛が無いとは言えないだろう。むしろお互いに好きな可能性は高いかも。

「分かりました、ダルタニア様に確認に行きましょう。一緒に来てくださりません?」

「え?」

「ですから、ダルタニア様に確認して事実なら婚約破棄致します。貴女がいないと話が進まないでしょう?ほら、ダルタニア様の所に行きますよ」

私は「え?ウソ、ちょっとっ!」とノースランド男爵令嬢が何か言っていたがスルーしていた。

いい加減私もストレスが溜まっていたのだと思う。

日々のダルタニア様からの誘い、進まない婚約破棄、ご令嬢からの嫌がらせ…、いい加減にケリをつけたい。


私は失礼を承知しながら、ダルタニア様を訪ねた。

彼は生徒会の仕事があると言っていたので、生徒会専用の執務室にいるだろう。

私はドンドンドン!とドアを叩いた、荒々しくてすいません…、感情を抑えなければ。黒歴史が再び起きてしまう。耐えるのだ私よ。

「何だ、騒々しい…マリーティア?どうしたのだ?俺に会いに来たのか?」

「ええ、そうです。ダルタニア様にお会いしたくて」

「そっ、そうか。何だ?何でも言ってみろ」

「大事なお話があるのです」

彼は私の後ろのノースランド男爵令嬢が目に入らないのか、私に嬉しそうに話しかけてくる。

「もう少し待ってくれるか?急いで仕事を片付けるから、マリーティアから来てくれるとは…」

と本当にノースランド男爵令嬢を無視している。

あれ?ダルタニア様はそうやっていそいそと仕事に励み始め、私とノースランド令嬢はポカーンとしていた。チラリと彼女の顔を見ると、ワナワナと怒りに満ちた顔をしている、そうだよね仲良かったのに無視されたら嫌だよね…。

私はノースランド男爵令嬢に話しかける事ができず、二人黙って近くの教室でダルタニア様が仕事を終わらせるのを待っていた。


ダルタニア様は仕事が一段落したらしく、私の所に息を切らせながら嬉しそうに走ってきた。

「マリーティア!話とは?」

「えっと…(ちょっと可哀想かも)こちらのノースランド男爵令嬢をご存知ですよね」

と、私はノースランド男爵令嬢を認識するよう促した。

「誰だ?」

「「はぁっ?!」」

ヤバイ、ダルタニア様のせいで反応が被った。

「あんまりですわ!ダルタニア様っ!」

とノースランド男爵令嬢が怒り出した、そりゃそうだよね。あんなに仲良くしていたのに。

「すまない、マリーティアにヤキモチを焼いて欲しくてちょっかい出した令嬢の一人かな?俺の浅はかな行動のせいで誤解させてすまない」

「「はぁっ?!」」

と、また反応が被る。

「俺はマリーティアを愛している、あまりにも愛していて…抑えられない程なんだ」

と、私の手を取り見つめてくる。これって何の時間ですか?

「そんな、私は貴方を愛してます、あんなに可愛らしいと仰ったのに…」

「すまない、覚えていない…茂みから悲しそうに見ていたマリーティアの可愛らしい顔しか覚えていない」

瞬間に私はダルタニア様って元々ヤバい性格してたよなと思い出した。

ノースランド男爵令嬢は

「マリーティア様はこうなると分かっていたからお呼びしたのね!あんまりですわ!」

「違います!だって愛し合ってると断言していたから…」

「酷いですわ!」

と話も聞かずにノースランド男爵令嬢は走り去ってしまった。誰も私の話を聞かないのね。

「すまないマリーティア、他の令嬢にも勘違いするなと誤解を解いていて大丈夫だと思ったのだが」 

もしかしてイジメが酷くなったのダルタニア様のせいなのでは?

もう嫌だ、こんな自己中の情緒不安定な男となんか添い遂げられない。

「あの、ダルタニア様…」

「なんだ?」

「私にヤキモチを焼かせたくて他の令嬢にちょっかいを出されていたのですよね?」

「…あぁ。最低なことをした」

「私、そのような方とは添い遂げられません。改めて両家での婚約破棄をして頂きたい…」

と最後まで言い終わらぬうちに、ダルタニア様は恐ろしい眼差しで私を射抜いた。

「なんだと…?」

「ですから、婚約破棄をっ!」

「ぜっっったいに認めない!」

ダルタニア様は私を壁に追い詰めダンッ!と両手で私の両側を塞ぎ退路を無くした。

「マリーティア、何か勘違いをしてるのか?俺が愛してるのはお前なんだ、お前だけなんだ」

ど美しい顔で見下された。その顔は悲しみに満ちていて縋るように私を見ている。

「違います、勘違いはしていません。私は…私にヤキモチを焼かせたくて他の方を傷つけるその行為が嫌なのです!ですから、私はそのようなお考えをされるダルタニア様を受け入れられません!」

と言い切った、ダルタニア様は下唇を噛み締めて血が滲んでとうとうポタリと、それが私の顎にかかる。

「嫌だっ…マリーティア…そんな事言わないでくれ」

ダルタニア様は私の顎にかかった血を拭いながら

「俺はお前にだけ心が動かされるんだ、あの時俺に暴言を吐いたとき…何故か堪らなく心臓が痛くなったんだ。他の女とは違うマリーティアの冷たい目に、荒々しい言葉に何故か俺の心は全て奪われたんだ」

「は?」

「お前だけだ、俺にあんな風な態度を取った者は」

ダルタニア様は拭った血を私の唇にまるで口紅のように塗り始めた。目が逝っている。

恍惚とした表情で何か思い馳せている。

「マリーティア、俺の唯一の人。もう誰も側には寄らせないから許してくれ…」

唇を重ねようとするダルタニア様に私は我に返った。

ヤバいこのままだとヤバい。

「だから…っ!てめぇの考えだけで突っ走ってるんじゃねーよ!」

と、私はダルタニア様を思い切り押しのけて再び黒歴史を繰り広げてしまった。

もう頭がパンクしそうだ。

「私の気持ちを考えろよ!お前のせいで私は虐められてるんだよ!お前の行動が原因でっ!なのに愛してるだの言われて納得するか!馬鹿かお前はっ!」

ダルタニア様は私をポカンと見つめている、それに余計に腹が立つ。

「だいたい他の女の子の気持ち考えろよ!思わせぶりな態度取ってりゃ傷つくだろうが!てめぇだけ傷ついてますみたいな顔しやがって、何なんだよ!思考が意味不明なんだよ!」

私はもうどうなってもいいと開き直った気分だ。

「だから!絶対にてめぇとは結婚しない!そのネジ曲がった考えを改めろ!私に近づくなっ!」

と、酸欠になりそうになりながら今までの鬱憤を爆発させた。あぁ…やってしまった。

冷静になり後悔するが、もう後戻りはできない。

ダルタニア様はクツクツと何がおかしいのか笑っている。

「マリーティア…大好きだよ。やっぱり君がいい」

「?」

「これ、何かわかる?」

ダルタニア様はカフスを指差す。

「音を録音する魔法道具なんだ、交渉の場でよく使われるんだけど」

「ま、まさ…か…」

「マリーティアの可愛い囀りが録音されてるね」

「っ…!」

「これが世に出ればどうなるかなぁ?」

卑怯だ、卑怯すぎる!

「どうあっても君を手放さない。諦めてくれる?」

ニッコリと美しい顔で笑うダルタニア様、終った。

私の人生…。


それから婚約破棄の話は無くなり、卒業と同時に結婚する運びとなった。

両親やダルタニア様の両親は、ダルタニア様がようやく素直になり落ち着いたと喜んでいた。

「うちの愚息をよろしく頼む」

「良かったわ、マリーティアちゃんがお嫁に来てくれるから、一時はどうなるかと思ったわ」

とダルタニア様の両親から言われた。


ダルタニア様はあの日以来終始ご機嫌で私に嬉しそうに引っ付いてくる。

「マリーティア、今日は家に招待してもいいかな?」

「ええ、構いませんが」

「夫婦になるのだから最後の秘密を君に教えたくてね」

まだ何かあるのかと、怖怖しながらダルタニア様の屋敷に向う。私は初めて庭ではなく、屋敷の中に入ることを許された。


フロアを通り、二階のダルタニア様の部屋に案内された。ダルタニア様は

「…誤解しないでほしいんだが、君が好きでどうしようもない事をわかって欲しい」

そう言ってドアを開け放った。そこに飛び込んできたのは私だ。

私の姿絵が所狭しとダルタニア様の部屋の壁に飾られていた。色んな年齢の私がいる。

「…国一番の絵師に描かせたんだ」

「はぁ…」

そこじゃないと思いながら私は呆れてしまった、こんな物に金をかけるなんて。

「君に見られたら怖がらせると思って言えなかったんだ」

怖いっちゃ怖いよ。確かに。

「結婚したら模様替えは君に任せるよ、けどこの絵は捨てないでほしいんだ」

ダルタニア様が可愛らしい顔で見つめてくる、でかい図体で可愛いとかズルい。

「本当に私が好きなんですね」

呆れるほど、こんなに私に執着するなんてダルタニア様ぐらいだろう。

「結婚したら、この絵の数々は一枚だけ残して後は倉庫に入れましょうね」

ダルタニア様は私の言葉が意外だったのか、目を大きく見開いている。

私はダルタニア様を見つめて

「結婚したら姿絵なんか必要ないでしょう?」

と笑いかけてみた。ダルタニア様は心底嬉しそうに頬を上気させて私を抱きしめた。

「君がいればそれでいい」

「口が悪くても?」

「それも可愛い」

「もう他の人にちょっかい出さない?」

「もちろんだ」

「なら…仕方ないですね」

ダルタニア様はますます私を抱きしめる力を強めて

「今までごめん…ありがとう。愛してる」

と耳元で囁いた。

本当に面倒臭い人に私は捕まったなと思ったが、いくら逃げようとも逃れられないだろうなと思った。


時間は流れ、卒業式の翌日直ぐに結婚式が執り行われた。お陰で準備が大変だった。

「マリーティア、なんて綺麗なんだ」

とダルタニア様がキラキラの笑顔で私をエスコートする。

「ダルタニア様も素敵ですよ」

私の言葉に真っ赤になる、乙女かよ。ダルタニア様は

赤い顔のまま

「止めてくれ、嬉しすぎて式の間持たなくなる」

と心臓を抑えていた。慣れてくると可愛いなと思ってしまうダルタニア様の仕草。

「さぁ、行きましょうか」

私はダルタニア様の手を引いて、控室から式場へ向かう。


何度も別れを告げてみたけど、彼ほど私を愛してくれる人はいないだろう。

その事に気づいた今は私も同じくらい彼を愛したいと思えるようになった。


晴れ渡る青空の下、白い雲と遠くで鳥が鳴いている。


ダルタニア様は日の下でとても輝いていた。

「マリーティア」

「なんですか?」

「幸せ過ぎて怖い…」

「ふふ、大丈夫ですよ」

私はダルタニア様を抱きしめて

「怖くなったらこうして側にいますから」

ダルタニア様は私を抱きしめ返し、そっと口づけた。

「気が早いですね、式はこれからなのに」

「もう待てない、早く終わらせて早く帰ろう」

とダルタニア様は私をそそくさとエスコートして式場へと向かう。


あぁ、本当に今日は何て空が綺麗なんだろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 恋人繋ぎまでしてる相手認識してないとか一夜を共にしても同じこと言いそう。地位があって思慮が足りない人はまたやりそうだけど絆されたなら自業自得。
[一言] だが、出来なかった。が、タイトルのあとに続くやつですね、これ。ハッピーエンドの筈なのに、もやもやが残る‥‥なんという後味の悪さ!(笑)
[一言] 最後の「お空キレイ」に笑った。 諦めとか達観とか悟りとか。 そんな感じ なんだかんだで幸せそう。
感想一覧
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