島津忠恒と亀寿の関係について―諸悪の根源は義久パパでは?
最初にお断りをしておきます。
夫婦仲、夫婦の関係というのは、それこそその夫婦にしか分からないとよく言われますし、更に夫側と妻側で言い分が食い違い、一方は仲の良い夫婦と考えていても、もう一方は仲の悪い夫婦と考えていること等は現実世界でもよくあることです。
だから、外部の人間、更に後世の人間が、歴史上の人物の夫婦の関係を憶測するのはおこがましいにも程がある気さえしますが、そうは言っても、どうにも気になる夫婦関係というのはあるもので、島津忠恒と正妻の亀寿の関係について、私なりに考えてみます。
さて、島津忠恒と正妻の亀寿ですが、一般的に険悪な夫婦関係だったとされており、忠恒は亀寿の墓さえもまともに作らず、忠恒と亀寿の間の養子として、忠恒の後に島津家の家督を継いだ光久が亀寿の墓を建立したという逸話までも伝わっています。
他にも二人が険悪な夫婦関係だったことをうかがわせる逸話が複数、今に伝わっています。
その一方で、亀寿が死んだことを聞いた際に忠恒が亀寿を哀悼するために作ったとされる和歌が今に伝わってもおり、単純に二人が険悪な夫婦関係だったと言い切ることに躊躇いを私は覚えます。
それで、私なりに亀寿と忠恒の関係について、ネット情報のみになりますが、調べてみました。
すると何となくですが、現実でもよくあることですが、義理の親子関係が不仲になり、それが波及した結果、この二人の夫婦関係が悪くなってしまったのでは、という想いがしてならなくなりました。
まず、その背景となる島津家の家督相続事情から述べると、島津義久には息子が結果的には産まれず、娘が3人産まれました。
そして、豊臣家の介入もあって、三女の亀寿の婿に、義久の甥、義弘の息子になる久保を迎えて、最初は島津家の家督を相続させることにし、更に久保が早世したことから、久保の弟の忠恒を亀寿と結婚させて島津家の家督を相続させることにしました。
ですが、島津義久にしてみれば、所詮は忠恒は中継ぎの存在で、忠恒と亀寿の間に産まれる息子こそが島津家の真の家督相続人と考えていた節が見られます。
(現在の歴史学では否定的な見解が多いようですが、武田信玄の真の後継者は孫の信勝で、武田勝頼は陣代だったようなものです)
実際、関ヶ原の戦い以降、義久は一時は自分の外孫になる島津久信を忠恒の代わりにして、島津家の家督を相続させようと画策したようで、義弘、忠恒父子と険悪な仲になっています。
又、忠恒が側室を迎えることを許さず、島津家の家督相続人の指名権を亀寿に託すようなことまで、義久はしているのです。
忠恒が大人しい性格だったら、伯父の義久がいうことに黙って従ったでしょうが、後世に伝わる様々な逸話からして、忠恒は大人しいには全く程遠い性格です。
それなのにこのような仕打ちをされては、忠恒が義久に不満を持ち、更にその不満が亀寿にまで向くのは当然ではないでしょうか。
更に亀寿に追い討ちを掛けることになりますが、亀寿は子どもを産みませんでした。
これが例えば、徳川秀忠の妻のお江のように、複数の男児を含む子どもを亀寿が産んでいれば、義久が忠恒に側室を迎えるな、といっても、それなりに説得力があるでしょうが、亀寿が子どもを産まず、忠恒が側室を迎えないでは、島津家の家督相続が大問題になってしまいます。
実際、義久が生きている頃に、子どもが当時いなかった忠恒は、徳川秀忠の次男の忠長を養子に迎えようと画策する事態までが起きています。
更に亀寿自身も大人しい性格だったとは、どうにも私には考えられません。
自身が亡くなる際に、島津家の家督相続人の証たる重物を直に光久に渡すように家臣に言い、更に次男の光久が島津家の家督を相続できたのは、光久の母が亀寿の姉の孫だったことから亀寿が夫を無視して、光久を島津家の家督相続人として指名したからという事情があったからだ、という情報を見ては、幾ら不仲の夫婦だったとはいえ、そこまで亀寿はしたのか、と私は心底驚くことになりました。
もし、亀寿が大人しい性格で、又、亀寿が中々子どもを産まない以上、この時代の恒例として、忠恒が側室を迎えることを義久が早くから是認していたら、忠恒と亀寿がここまで不仲にならなかったのでは、と私はどうにも考えてしまいます。
実際、義久自身にも側室がいたらしい状況証拠があります。
それなのに娘婿で子どものいない忠恒に、お前は側室を一切持つな、と義久が言っては、忠恒が怒って当然ではないでしょうか。
更に義久没後、忠恒は亀寿を国分城へ追いやり、生涯で9人の側室を抱えて子作りに励んだところ、32人もの子宝に恵まれた現実があっては、こんなことなら、若い頃から側室を迎えていれば、という想いを忠恒がして当然の気さえ、私はしてしまいます。
勿論、忠恒と亀寿の真の夫婦仲がどうだったのか、真実は分かりません。
でも、私はそんな考えがしてなりませんでした。
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