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第七話:魔王軍(部)

「部活動?」


 宇遊の用件は、部を作らないかという話だった。


「ああ。亮は帰宅部だったろ?俺も勿論帰宅部だけどさ、高校進学の内申点に部活参加が良いって聞いたんだよ。でも、運動部はどっか入っちまうと他がうるせーし、文芸部はなんかこれってのがねぇんだよな」


 そう、宇遊は昔から運動神経抜群なのだ。中学生になって、その才能を更に開花させた。

 どのスポーツをやらせても、三年生の先輩すら負かしてしまう程だった。

 だから、部活の勧誘が一時期凄かったのだ。それで、結果的に宇游はどの部にも入らないという事で、皆渋々諦めたのだ。

 その代わり、時々助っ人で入ったり、練習に付き合ったりする形を取っている。

 俺は宇遊が元から入ろうと思ってなかったのは知ってるけどね。


「内申点ねぇ……宇游ならどこでも行けるんじゃない?」


 こいつはテストの点も良いのだ。去年ではいつもクラス順位でベスト5に入っていたし、学年全体でもベスト10に入っている。

 学業優秀運動神経抜群、見た目イケメンの神が二物も三物も与えたような存在なのだ。

 正直親友じゃなかったら嫉妬で狂ってたかもしれない。


「俺じゃねぇよ、亮のだよ」

「え?俺?」

「ああ。亮、お前去年最後の期末テスト、何位だった?」

「さ、30位くらいだったかな?」

「それクラス順位だよな?」

「……うん」

「俺は亮がサボってるなんて思ってねぇ。必死に勉強してんのも知ってる。夜遅くまで頑張ってるのもな」


 宇遊の言葉に目頭(めがしら)が熱くなる。

 そうなのだ、俺はどれだけ勉強しても、テスト結果に反映されない。

 どこまで頭が悪いのかと自分で自分を貶す事も数えきれないくらいした。


「授業中だってちゃんとノート取ってるし、他の奴みてぇに寝てねぇ。真面目な亮の事は俺が一番知ってる」


 うん、うん……?宇遊、そんなに俺の事見てんの?なんかちょっと身の危険を感じはじめたんだけど、気のせいだよな?


「だからよ、テストの点は諦める」


 いやそこは大事だから諦めないで欲しい。


「つまり、他の事で点数を稼がなきゃならねぇ。その最適なのが、部活動だ!」

「ボランティア部にでも入るのか?」

「あれは同好会だろ。しかも人数2人しか居ねぇ」


 詳しいな。宇遊の事だから、ちゃんと調べたのかもしれないけど。


「そうじゃなくてよ、最初に言った通り部を作るんだよ俺達で」

「部をねぇ……そりゃ、宇游が作れば入りたいって人はたくさん集まりそうだけど、何部にすんの?」

「ばっかお前、部長は亮に決まってんだろ」

「はぁ!?」


 また宇游が阿呆な事を言い出した。

 俺みたいなどこにでもいる陰キャのクラス最底辺の人間が部長とか、頭大丈夫か?いや天才なのは知ってるけど。


「なになに?やっチとうおっチなんか盛り上がってるじゃん?私らも混ぜて欲しいんだケド」


 宇遊と話していたら、村上さんが話しかけてきた。

 その後ろに小鳥遊さんと木之下さんも居る。相変わらず、三人は一緒に居るみたいだ。


「ああ、部を作らないかって話してたんだよ。そういやみっちゃんらも帰宅部じゃなかったっけ?」


 みっちゃん?ああ、村上さんの事か!流石陽キャ、あだ名で呼ぶとか陰キャの俺には不可能な事を簡単にやってのける。

 そこに痺れる憧れ……やめよう、虚しい。


「しし、そうだケド。私は入りたいって思う部活ないからだけど、れいちゃんは違ったよね?」

「ええ。私は親が部活に入る事に反対していて」

「へぇー。桜ちゃんはどうなん?」

「わ、私!?その、私は運動は苦手だし、文芸部もその……皆私に気を使ってくれるんですけど、私何も出来ないので……」


 どうやら、村上さんは自己評価が凄く低いようだ。

 いつも笑顔で、周りの人達をあったかい気持ちにしてくれているのに、意外だった。


「とりあえず、宇遊の案を仮に進めるとしても、部を新規で作るには条件があったような?」


 俺がそう言うと、小鳥遊さんがコホンと咳をしてから説明してくれる。


「ええ、そうね。まず第一に部員が規定の人数以上そろうこと。第二に活動場所が確保できること。第三に顧問を引き受けてもらえる先生が見つかることね」

「流石れいちゃん、詳しいし」


 しししと笑いながら村上さんが褒める。小鳥遊さんが少し顔を赤くしながら、続けた。


「一番の問題は先生だと思うわ。なぜなら、もうすでに今年度の担当は決まっているだろうからね」


 その言葉に、宇遊が自信満々に答える。


「それなら問題ねぇぜ?保健の諸智先生がOKしてくれたからな!」

「え、あの諸智先生が!?」


 三人が驚いている。どうしてだろう?


「諸智先生、兼任は絶対に断ってたのにね。ただでさえ全国に出場してる吹奏楽部の担任なのに」

「うんうん。凄いよ!椰子君、どんな部って説明したの?」


 木之下さんが食い気味に聞いているが、俺も気になる。

 宇遊はコホンともったいぶってから、笑顔で答えた。


「魔王軍!」

「「「ぶふっ!」」」

「宇遊ー!!」


 三人の女の子達は吹き出し、俺は叫んだ。

 何を考えてんだ!

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