何するか分からないよね
また見てる、あのバカ。
ずっと感じる視線が痛い。
全く何がしたいんだか。
「よう清原」
「よう」
出社してきた同僚と挨拶を交わす。
「採用おめでとう!」
「ありがとう」
褒めてくれた友人に返事を返すと早速騒がしくなり始めた。
「マジで秀才だよな清原って」
「部長かっこいい」
「これであいつモテモテになるんじゃね?」
ったく朝からうるさいな。まあ嫌な感じじゃないけど。
昨日俺のデザインが採用されたからだな、こんなに賑やかなのは。
「清原、大出世するぞ、絶対」
「そうか?」
笑って誤魔化す。
だろうな。こりゃ自分で言っても何だけど一応俺は一目置かれてるからな。
だからってそんなこと言ったら「自慢⁉」ってそうすかんになりそうだからな…。
笑ってごまかすしかない。
「うわー笑顔がカッコイイ♡」
今度は同僚の女子から黄色い声が飛ぶ。
俺の容姿のこと……?なんか照れる。
なんか美化しすぎじゃないかなと思ったこともあるけど褒められてるからいい。
そんな会社のみんなが賑やかでいい雰囲気だな〜。
ガンッ
⁉衝撃が足に来た。
ジンジン足が痛むしなんか重いものが落ちた感じ……。
「山田⁉」
そこには睨んでくる山田がいた。
うわ、こいつか。いつも睨んでくるやつ。
山田がカバンを落としたみたいだ、俺の足に。
っ、ムカつくな。いつも感じ悪いし。
「ごめん」
しおれたように謝ってくる。
わざとだろう。そう怒鳴って殴りたくなったが──。
ここは会社内だ。問題を起こしてはいけない。
ったく、メンドー。ま、我慢しよ。
「別に大丈夫」
笑顔で答えてやる。ても心は笑顔じゃいられないわ。
やつはそそくさと去っていく。
ん?トイレにでも行くのか。俺に嫌がらせするためだけに。
「大丈夫だったの?清原ー!」
「まあな」
「山田お前のこと妬んでるかもしれないぞ。だから……」
「やめろって」
だが同僚は続けた。
「山田の好きな女があいつを振ったらしい。それで女は清原の方が全然いいって言ったらしいな」
マジカ⁉それって嫉妬されるじゃん……。
「あと山田は落ちこぼれで自分と全然違う清原のこと妬んでるっぽいな」
「それっていいんだか悪いんだか……」
「モテる男はツライなー」
同情するような目で見てくる。
モテるのは嬉しいんだけどなー嫉妬って一番厄介だからな……。
平凡がいいんだけどなー。
「ま、気をつけろ」
そして会社が終って帰ることになった。
デザインが採用されたから打ち合わせで遅くなってしまった。
9時か。
俺はスマホで時刻を確かめると駅へ向かう。
莉奈が待ってるかな。いや、遅いって怒られっかも。
俺には彼女がいる。いるのになーなんで山田を振った女は俺の名前出したんだろ。
一応モテるが莉奈がいるからみんな諦めてるのに。その女は莉奈を差し置いてくる気とか?
どんな奴だろう。莉奈がいるのにそういうやつは……って、ヤバ想像が。
気を取り直して駅へ向かう。
この道を行けば駅だ。
「⁉」
ぐいっと手首を掴まれた。
いきなりなことで反応できず俺は力に逆らえず引っ張られ、裏路地まで引っ張られてしまう。
語彙力が散乱してきたな、ってこいつは不審者か⁉
だが力が強すぎて情けなくやつに引っ張られた。
やっと止まり、やつが振り向く。
「このやろう……!」
この声と容姿……暗くてよくわからないが山田か?
一瞬で胸ぐらを掴まれた。
は、舐めんな。俺はお前より弱くない。
いきなりすぎて戸惑っただけだ。今なら負けない!
投げ飛ばす気だろうが、舐めるなっ!
「くっ⁉」
俺の蹴りがやつに命中しうめき声を上げた。
なんだ弱いな。
そのすきをついてやつから離れる。
「このやろう!」
山田は今にでも殴ってきそうです睨みつけてきた。
「なんだよ、このやろうって。嫉妬かよ?」
「俺の恋人を取り上げやがって!」
「は?」
いつお前の恋人を取り上げた。ってか知らねーよお前の恋人なんか。
俺はため息んついた。こいつバカだわ。
何言っても無駄そうだ。
「バカって何すっかわかんねーな」
気づいたら呟いていた。
確か大学の先生がバカに嫌な目にあって愚痴ってたときによく言ってたことだ。
あのときは分からなかったけど今は分かる。
こんなバカって自分が振られたからって人を殴ろうとすんだからな。
あと、バカは死んでも治らない。
それもよく言っていた気がする。
「山田」
「うるせぇっ!お前のせいで!」
もう何を言っても聞いてないな。
山田はなにか取り出した。キラッと光る。
カッターか⁉まさか凶器を……。
「おらぁぁ!」
奇声を上げ走ってくる。
……カッターを持っていても躱すことは楽勝だ。
ただ。
こいつムカつく。
バカで何もやってないくせに俺を殺そうとして。
俺を殺そうとしたんだから殺してもいいよな……?
こいつは凶器を持っているが中身は弱虫だ。
サッと身を躱してこめかみにパンチを入れれば……!
殺そうとしたんなら殺してやる。
俺はカッターの刃が迫ってきたが、サッと躱した。
そしてパンチを……!
「はっ⁉」
こいつを殺していいのか?
いいんだ。正当防衛だ。
だけど警察に捕まるぞ?
捕まってもいい。こういうバカは死んでも治らないし。
だけどいいのか?
俺は捕まってもいい。
いいのか?
俺はな。
だけど……莉奈がいるっ!
既のとこで思いとどまって俺はくるりと背を向けた。
俺は捕まっても別にいい。だけど莉奈は?
あいつは泣いて哀しむ。それだけならいいが、犯罪者の彼女だったとレッテルを貼られてしまうだろう。
下手に殺したり殴って怪我させてはは駄目だ。
なら逃げるしかないよな!
路地を曲がり、どんどん進んでいきやっと駅についた。
はぁーっと息をつく。
危なかった。あいつを悲しませるところだった……。
もう山田には関わらないようにしよう。
ムカつくが関わらないようにしよう。
そう決めると改札を抜けた。
ぼぉーっと清原の逃げたあとを見つめている。
このバカ山田。
そしていいように動かなかったバカ清原。
せっかく二人を喧嘩させたのに……つまんないの。
わざと山田を振って嫉妬させたのにね。
二人とも捕まればよかったのに。
私のシナリオ通りに行かなかったわ……。
近くの建物の窓から人影が離れた。