2 調査団員の憂鬱
国家公認の慈善団体『夢幻』
その本部に一番近い東京支部
『渋谷調査支部』にて
7/15 20:45
金属製の廊下を靴で歩くと、音が響き渡る。
正直に言って、五月蠅いのでカーペットでも敷いてやりたい。
でも今はそんな事より憂鬱なことがある。
それは凶悪怪異2級に指定される「越」に登録されている、怪異の調査に向かわなければいけないからだ。
その怪異の名は「青黒」
目撃者の証言によれば白い髪で真っ黒の服を着た少女やタコの足が襲ってきた、とか信憑性にイマイチ欠ける情報しかない。
しかも会った奴は大体死んでる。
それ故に対処のしようがないやばい怪異なのだ。
「おい!葉山!ぼさっとしてるな!」
うん。こっちのほうが憂鬱だわ。
会わないと思って来たのに、会ってしまった。
一番めんどくせぇ奴だわ。
このいきなり私に罵声を浴びせてきたのは羽崎海螺である。
ちなみに元部長とその部下の関係である。
「はぁ……。なんですか?羽崎さん」
「なんですか?じゃない!お前また来たのか!?ここは凶悪怪異青黒の対策本部でもある!お前は関わるなどあれほど!」
「あー。はいはい、そうですねー」
ね?ふつーにめんどくさい。
「言っときますけど私は調査員です。戦闘員よりも先に怪異に会い強さを測るのが仕事です。それにどの怪異かは関係ないと思うのですが?それに私は私の意思でこれを選んでます。邪魔しないで下さい。」
…。言い過ぎたかな?
まっ!いっっつも思ってることだし問題ないでしょ!
「…だが葉y…」
「それでは行ってきますね!」
羽崎さんの言葉を途中で遮って気合を入れ直す。
多分私死ぬからね。
ここで止められたら踏ん張りつかない。
それが嫌なやつならなおさらってわけでもないけど。
さぁ。行こうか、私の憂鬱。
私の死に場所へ。




