#3『 街を作る 』
愁はこの世界を作り変える為の拠点を作る事にした。小屋でも良いと思ったが、どうやら小屋の中は力でも作り変える事の出来ない、不可侵領域となっているらしい。
「数百メートル離しておくか」
別に愁は大層な城に住もうとは思っていない。日本の住宅街に並ぶような普通の一軒家で良いのだ。出来れば、最新設備があって欲しいと思っているのだが。
「でも想像でもどうにもできないなーカタログを作るか」
家の一覧が描かれるカタログを創造した。日本の一軒家のモデルを載せたカタログと指定した為、その中から愁の好きな一軒家を選ぶだけだ。
「三階建てぐらいにしたいなあ。あんまり広いと、掃除も大変だけど、客室は万が一の為に用意したい。一応、間取りも踏襲しよう。」
結局、愁が作った家は今まで住んでいた愁の実家と同じ家になってしまった。
「不覚……」
自分のイメージ力をもう少し期待していたが、愁のイメージ力は意外と大した事が無いのであった。
「でも何かあったら作り変えれば良いよね。」
終わった事は終わった事。そう自分の心に言い聞かせた愁は、家の中に入る。愁自身の家をそのまま丸ごと持ち込んだ為、勝手知ったるこの家に新鮮な感じは無かった。
「気楽でいいや。」
ゴロを家の中に招く。ゴロゴロと名前に恥じない鳴き声を披露すると、リビングのカーペットで丸くなった。電気カーペットである為、愁がスイッチを入れると、ゴロは気持ち良さそうに再び鳴いた。
「うん、極楽極楽。家はこんな感じでいいかな。」
愁は家の外に出た。ゴロは出てこない。どうやら電気カーペットがお好みらしい。
次に愁は道路の枠組みを作った。平安京をモデルとして、縦横が揃った街並みにしようと考える。それでも出来るだけ道路と道路の間の敷地は、広めに取っておいた。何があっても良いように、ということだ。
「必要な施設は……病院、お店……役所も必要かな。」
お店については企業として必要施設に含めずとも、愁の力で創造できたが、入院食が必要な病院など、全てが全てを力だけで補えるわけではないと、愁は理解していた。
「一気に創造しよう。」
地鳴りがする。気付いた時には、大型スーパーと総合病院、役所が出来ていた。まだ商品も人員もないが、それはおいおい追加する予定である。
「住宅街は別に作ろう。あと、農場も必要だ。工場もあった方が良いな。」
縦横3キロメートルの街の囲い外の南側に、もう1つ縦横2キロメートルの住宅街を設置した。家はカタログからランダムに、半分は一軒家、半分はマンションやアパートという形にした。その中から高層マンションは省かれていた。
「平地だけっていうのも健康的に良くなさそう。山と海を作ろう。」
海は街の東側、山は西側に作る。この世界の太陽、月の周期は地球から見た時と変わらない。まるで地球に居るようである。
「山の上には電波塔を置いておこう。電線は地下に埋めて、科学の下地は作って。海は大陸棚、海溝、海嶺と地球と一緒にしよう。
地盤をマントルで動かすのは災害の元になり得ないから却下。でも海底火山は生命誕生に繋がるから、マグマを最低限生産し続けるように創造する。」
一応はロボットを作るつもりの愁だが、いずれ何億年も先に、地球と同じように生命が誕生して暮らしていくことを想定していた。それでも街が壊されるのは、全てが無駄になってしまう。愁は、街の破壊が不可能になる魔法のようなものを施した。
「この世界の放射能を出す元素は全て無くす。僕以外の武器の精製は禁止。最低限は作っておくけど、他の人が出来心で何かをするのを防いでおかないと。」
念には念を。愁は終始隙がなかった。どこまでも先の事を想定しているのであった。そんな中、時刻は我関さずと過ぎ去り、太陽は沈んでしまっていた。
「あー19時か。もうそろそろ夕食にしようかな。」
食べやすいものを食べたいと考えた愁は、コンビニで売られているおにぎりを創造した。知っているお店の味。美味しい。
「家に帰ろ。」
歩いて帰るのにも少し家までは遠い。そこで愁は車を創造する。愁は18歳。この時代に運転免許はもはや証明書としての機能しかない。車は自動運転だからだ。ハンドルもメーターも車の鍵穴すら無い。
それに加えて、愁は新しくエンジンの不要化と滑空機能を設けた。動力源は力で自動にした為必要ない。また滑空機能は、地面を整備せずとも、走れるようにする為だ。
コンクリートでの地面の整備は、地球温暖化に繋がる可能性がある。わざわざ地球の過ちをこちらに持ってくる必要は無いと考えたのである。
「あっという間だ。もう家か。」
スピードを気にしなくても良い。それが最も良い点だ。最速で走り続け、ものの1、2分で到着していた。車をガレージに入れ、愁は家に入った。ゴロが出迎えをする。
「ゴロ、ただいま。」
「ニャー」
ここからはいつもと変わらない暮らし。何一つ不自由ない。手を洗い、風呂に入り、ベッドに入る。これでは地球と変わらないのではないかと愁は考えたが、わざわざ特徴を出す必要も無いと考え直した。
そうして、夜は更けていく。




