とある青年の挑戦
あれから長い長い時が過ぎた。
人間はまたヒトに戻った。
小さな邑で細々と暮らしていたのだ。
文明の終焉以来、ドラゴンは領地を増やした。
世界の大半が”禁域”になったとも言える。
ドラゴンがヒトをあえて襲うことはなかったが、少しばかりの変化があった。
ドラゴンの中でも比較的小さな、他の鳥獣に近しい体躯の種族が生まれていたのだ。
これは幸運なのか、不運なのか。
ヒトはこの小さなドラゴンに挑もうと考える。
過去のドラゴンの侵攻は神話や伝説でしかない。
未知への恐怖を掻き消したのは知性による好奇心なのか、
微かに残る野生による闘争心なのか。
小さなドラゴンはヒトの狩猟対象となる。
ヒトが小さなドラゴンを狩り始めて数十年が経った頃、
ある部族の青年が小さなドラゴンに挑もうとしていた。
青年は部族の中でも一際小さく、弱々しい身体をしていた。
見たままに力はなく、武器の扱いにも長けていない。
あらゆることで他より劣っているのだろう。
だが、彼の瞳には誰よりも強い意志が宿っていた。
青年は部族から認めてもらいたい一心で、
単身で小さなドラゴンと対峙した。
彼がのちに人類史上、最古のドラゴン使いとなる者であった。