始まりは婚約破棄
何故こんなことに…。
頭を抱えたくなるのを我慢しながら、にこやかに訪問者達に対応する。なかにはあからさまに娘を勧めてくる奴…要チェックだな。もいて、気が抜けない。
「…まぁ、うん。できた経緯があれとはいえ、伯爵…なんだよな…」
つい最近まで宮廷子爵嫡子だったのだが、とある事情で伯爵になり、伯爵としては狭い領地ものの、まで辺境に与えられた。まぁ、忠義者として知られる辺境伯家の隣というのが、私の信頼度の低さの現れだろう。まぁ当の辺境伯本人には同情されたが。当然である。わが父は身分こそ違えど、彼と親好があったのだから、父経由で私を知る彼も、私の忠義も。境遇も知っているということだ。
ことの始まりは、婚約破棄騒ぎであった…。
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「フィーネガルド元侯爵令嬢、貴様との婚約は破棄をする」
淡々と、ゴミを見る目で王子がある令嬢に告げる。私の婚約者の腰に手を回しながら。
「何故ですか殿下、それに、元…とは?」
「フィーネガルド家の悪事の数々、知らないとは言わせない。あまつさえ、私のアリアに狼藉を働くばかりか、刺客まで送り込んだ。理由は充分だろう?」
いや、私のって…とは思うが、今は仕事中である。通りすがっただけで催しには参加していないので発言は憚られる。そもそもなんでこんな場面に出くわすのだ…。というか、そんなことになっていたのか…ん?そういえば最近、確かに忙しくはあったが、それにしたっておかしいくらい働かされていたなぁ…俺。全然家や婚約者の事に関われなかった。手紙こそだしていたものの、返事が来た記憶がねぇ…。…考えるのやめとこ、追求するとめんどくさそうだし。たかが一、官僚見習いが関わっていい案件ではないだろうし。
と、考えているとフィーネガルド侯爵令嬢が静かに騎士に連行されていく。王子殿下とアリアは人目も憚らず抱き合って喜んでいるが、ここ法務院と内務院の間にある『夏の庭園』で、それもガーデンパーティ中だ。見ていた貴族達は早速噂に忙しい。…やべぇな、アリアの家が。
「あの令嬢は?」
「確かランセル男爵令嬢…だったか?」
「まぁ、あのランセル男爵家の?」
「あぁ、確か、ザルトジーク子爵嫡子と婚約関係にあったはずだが…」
「ザルトジーク殿も苦労する…いや、この場合は助かったのか?」
「どちらにせよ、苦労は変わらんがな…」
うん、家にも飛び火してる。というか、通りすがりの俺を見て、しまったという顔をするのは止めてくれ。そりゃ二週間程帰れてないから幽霊みたいな顔してるだろうが、別にこの事態に絶望してるとかそんなんじゃない…げんなりはしてるけど。
視線を感じ、振り替えると陛下の近くに控えている父上、財務卿と目が合う。「放っておけ」と目が言っているが、こんなところに突っ込む蛮勇が俺にあると本当に思っているのだろうか?まぁ、野次馬根性で立ち止まったものの、内務院に書類を届ける途中だ、急がねば。
ザルトジーク子爵、財務で辣腕を振るい、嫡子に瑕疵が無ければ代替わりに昇爵が認められるだろうと目されている家だ。周りからのやっかみを防ぐ意味も込めて、領地が災害でひーこら言っている男爵を支援させられたりもしているが、まぁ、あり得ない事ではないし、そもそも嫡子の婚約者の家だからだ。旨みはないが、まぁ、こういうことがあるとそういう損な役回りをやらされる伝統がある。
「…呼び出しに備えますかね…」
庭園での一連の出来事がどうなろうと、関係者として呼び出されるのは確実である。…めんどくせぇ…。




