第7話〜さらなる成長〜
今回も、目標の年齢へのステップです。
「299…300!!ブヘァ!!」
広い庭に一人の汗塗れの男のリズム的な掛け声が響き、キリのいい数字と共にだらしのない叫びが上がる。
あ、ども。コロンです。現在筋トレ中の8歳です。
いやぁ、3年前程に父に心を半分折られましてね?以前よりも厳しい訓練を、それから続けてるんですよ。
スキル〈反射〉を鍛えるために、ボールを壁に当てて、返ってきたら避ける。
スキル〈攻撃予測〉を鍛えるために、ひたすら父に剣を振るってもらう。
スキル〈危険察知〉を鍛えるために、俺が油断している時を見計らって、父に攻撃を仕掛けてもらう。俺特製のハリセンで。
これらを〈成長加速〉を使って、ひたすらにレベリングを行ってました。
お陰で、普通スキル〈反射〉はレベル50まで上がり、特殊スキル〈全反射〉へと進化した。
この能力は正直、滅茶苦茶使える。
何せ、父クレイタスの攻撃をほぼ全て躱せてしまうのだ。
しかし全てではなかった。父も何らかのスキルを持っており、その性能に勝てなかったみたいだ。
そう、シホさんが言っていた。
やはり、名前が同格のスキルであっても、性能に優劣があるみたいだ。
父に触れて鑑定してみたが、隠蔽されているようで読み取れなかった。
ちなみに、無断で鑑定したので怒られた。
何でも、無断で他人を鑑定することは、女のスカートの中を見る事と同じらしい。なるほど、分かりにくい例えだ。
もう一つの普通スキル〈危険察知〉はレベル50で進化し、特殊スキル〈危機予測〉になった。
名前的には同じように見えるが、事態が起こる寸前に"察知"する〈危険察知〉と、事態が起こる前に、そこに向けられた殺気や残留思念を無意識に読み取り、起こる危険を"予測"できる〈危機予測〉では全然違う。
〈危険察知〉では、〈反射〉も併用しないと避けれないハリセンがあったが、〈危機予測〉では、予めバレないように構えることができたので、〈反射〉無しで対応できてしまった。
特殊スキル〈攻撃予測〉はレベルが20まで上がったが、進化はせずに能力の質が上がっていった。
最初は、何となく剣先が向けられている感覚があって避けていたが、レベル20では光の線が見えた。
その線に剣を刺すと、相手の剣を弾くことができる。
しかし、無数の線があると全てを捌ききれないのと、どのタイミングでどこに剣が来るかがイマイチ分かりにくいので、ここは技量を上げるしかないのである。
ちなみに、まだ父親からは一本持たれていないが、1分は父と剣を交えられるようになっていた。約3年前は2秒も持たなかったというのにだ。成長したものである。
魔法の方は概ね順調で、火・水・緑・電気・氷・風に加えて、土魔法がつかえるようになった。
これは剣術の立ち回りを大きく変えてくれるもので、あのクレイタスを一瞬でも翻弄させる事が出来た程である。
ちょこっと練習して、周りの壁の色と全く同じ色を再現できるので、女湯の覗きにも使えちゃうんだぞ☆
まあ忍び込む前に殺されるからやらないんだけどね!
元々使えていた6つの魔法のMLvは、6まで上がった。土魔法は5である。
持てる全ての魔法を使用出来る、無制限模擬戦闘では父から一本も取られた事がない。まあ取ってもいないのだが。まだまだ、父のレベルには届きそうも無かった。
毎回の試合は母の判断で引き分けである。理由は長引くと、家が魔法や剣の傷で大変な事になるかららしい。ので、5分間のみの結界ありの戦闘であった。
父は体質により魔法が使えないので、その点で言えば俺が有利なのだが、腕とセンス、そしてスキルの使いこなしにより、その差は完全に埋められてしまう。
でも、それでも父と張り合えるって、俺も中々強くなってきたって事じゃないか?
そろそろ国の外で魔物と戦ってもいい頃かも知れない。
魔物。それはコロンの前世の知識により、大分弱体化して想像されている。がしかし、慢心をしたとて、父と張り合えるコロンはそこらの魔物では、到底太刀打ち出来ない。
魔物とはこの世界で言う、人ならざる者達である。一口に魔物と言っても、人類の敵対している魔族と魔物はイコールではない。つまり、全ての魔物が敵対しているわけではなく、人類敵対者である魔物の連中を魔族と総称しているだけである。
中には中立の立場である竜族や長耳族と言った魔物もいるのである。
エルフは人の見た目をした者で、知恵があるため、亜人とも呼ばれているが、完全な"人"ではないので、魔物の扱いなのである。
一般的な魔物は知性なき生物であり、そんな魔物と戦うのは、もう少し先の2年後である。
2年後の彼は、父に勝つ事は出来なかった。
潜り抜けた場数が違う。若く、吸収力と再現力、応用力があれど、長年積み重ねた努力には勝てなかった。
しかし、そんな父には余裕が無かった。気を抜いたら一本取られてしまう、と。コロンは父が余裕で自分と剣を向けていると思っているが、実はそんな事は無く、父とは本当にいい勝負なのである。それこそ、経験さえ積めば、一瞬で父を圧倒できてしまうほど。
父クレイタスの実力は、国内では広く知られている。そんなクレイタスと10歳の少年が、対等に戦っているのを見て、疑問を持った。
少年は人間であるのか、と。
殺し合いの、この字も知らないような少年が、40年もの剣術の日々を過ごし、殺し合いを幾多も行なったクレイタスと同格であるなど、人間には到底成し得ない。
それもそのはず。コロンは人ではないのだから。
しかし完全に人の見た目であるコロンを疑っても仕方が無く、またクレイタスの教育能力の高さだろうと割り切ってしまうため、深く考える者は居なかった。
コロンもこの時はまだ、人間だと思っていた。
彼が自らを知る、その時まで。
コロン、8歳で大分強くなりました。
最後には10歳になったのですが。
10歳になったので、ここからが本編みたいなものです。
ここからは、余り年齢は進みません。
それとこの世界の10歳は、現実で言う15.6歳の容姿と大して変わらず、大人扱いとなります。




