第4話〜生まれて初めての読書、そして衝撃〜
半分説明回です。
早寝早起きってのは良いもんだ!
昨日は色んな発見をしたからな。赤ん坊では、動かずとも頭を使えば疲れるのさ。
やっぱり快適な睡眠から目覚めたら適度な運動をするに限るよな。朝日が気持ちいいぜ。
え、赤ん坊でどうやって運動するんだって?
そんなの決まってるじゃないか。
「コロンちゃん、こっちよー!さあおいで!」
「あぅ、あー」
ハイハイだよ。
ハイハイにある程度慣れたら、次は立つ練習をする。
「どうしたの?コロンちゃん?」
服を強く掴む俺に小首を傾げてるエルナ。
俺が見上げた先には、エルナの顔では無く、山である。
何故山に登るのか。登山家は答える。
「そこに山があるからだ。」と。それは俺とて同じだ。素晴らしい形の山があったら登らずにはいられない。
俺は噴火口目指して、ひたすらに足に力を入れる。
決して埋没形ではない。敢えて、それが何かは言わないでおく。
やはり産まれて長く時が経っているわけではない。立てるとは思っていない。だが、立つための練習を今のうちからすれば、普通より早くに立てるようになるだろう。
と、思っていたのだが。スッとな。
「!!??こ、コロンちゃん?足プルプルしてるけど、立っているわ!あなた!コロンちゃんが!!」
「どうした、コロンに何が!!…!?立っている…だ…と!?」
何処かで聞いたような言い方で驚きの言葉を述べるクレイタス。普通は7.8ヶ月かかるのに産まれて3ヶ月で立つなんて普通ではないのだから、驚いて当然である。
ふふん、何を隠そう スキル〈成長加速〉のお陰である。名の通り、成長速度を高める。今の段階では3倍まで成長速度を高めることができる。産まれて1ヶ月の間は1.5倍までだったのだが、スキルを長く使用する事で、スキルのレベルが上がるのである。
ちなみに 特殊スキル〈成長加速〉のSLvは15だ。5の時点で2倍、10で2.5倍、そして今に至る。単純に5の倍数で0.5ずつ上がっている。
まあ、スキルを長く使うと言っても、このスキルは常時発動型なので何かするだけで勝手にLvは上がっていくのだ。なんともありがたいスキルである。
…ん?そんな説明をしているうちに、クレイタスが俺の脇に手を入れてきた。何をする気だ。やめろ、やめ…
「偉いぞコローーーン!!」
ポーイとクレイタスは俺を天井スレスレまで投げ上げる。うぉおおおあああい!赤ん坊に何をするんだ!
「あなた!興奮するのは分かるけど、赤ちゃんになんてことするの?びっくりしてるじゃない!」
「うぁ、すまん…」
確かに興奮していたな…と思い、赤面しつつ、エルナに怒られたことでシュンとなる。なんか俺が産まれてから怒られたばかりいるな、クレイタス。
まあ、そんな俺の成長への賑やかな家族の騒ぎもあったけど、何より立てるようになったし、ハイハイも出来るのだ。これで念願の書庫部屋に行くことができる。
ベビーチェアの中で寝ていると見せかけて、親2人の生活パターンを把握していたので、丁度バレない時間に書庫まで移動し、本を読み漁るのだ。
さて、やってきた。時間にして30分。部屋まで行き、帰る時間を引くと20分。それでも十分だ。なんせ俺には 特殊スキル〈並列思考〉と〈超記憶〉があるのだから。ぱらぱらと捲り目を通すだけで完璧に覚えられる。
原理や詠唱を覚えただけでは魔法は使えないが、使うのは後からでいい。時間はたっぷりある。
正直、それよりもこの世界の知識についての方が重要だ。生きる上で大切なことだからな。
さて、よーいどん!だ!
さぁコロン選手、慣れた様子でベビーチェアを降り、部屋を出ます。音を立てないとはやりますねぇ。
案の定、母と父は気づいておりません。
おっと、前方からアルオが歩いてくる!見つかったら連れ戻されるのは必須。どうにか見つからないで行きたい!ここは息を殺してやり過ごす!
…無事にバレないで過ごせたようです。ここでコロン選手は普通スキル〈隠密〉をゲットしたようですが、本人は気づいていません!
危ない場面はあったものの、無事に書庫まで辿り着けたようですねぇ。やりますねぇ。
背中に寒気を感じたが大丈夫だろう。なんせ俺は無性だからな。流石に先輩も、女の見た目をしている俺には興味を示さないだろう。恐らく…。
さて後20分、何処まで読めるか…。
ススーッと静かに扉を開け、紙とインクの匂いがする部屋へと入る。
…前も見たが、やっぱり凄い数の本だ。この世界では貴重だろうに。見るだけで2千冊はある。
当然だ。この時のコロンはまだ知らないが、母エルナは魔導界でも有名な人物であり、魔導の真髄を探求する研究者である。この世界で販売されている魔導の本は全て、手書きで写本されたものであるが、元を辿ればエルナの研究書に辿り着く物が多い。
この書庫はエルナの研究を纏めた本の倉庫である。2千冊とはエルナが直接手書きした本達であるが、研究レポートを全て本にしたならば、5千は超えるのである。
さて、先ずは一番下の段にある本から読んでいこう。
ふむふむふーむ。ふむふむんふむふむふふむふむ。
え、めくってるだけで、理解してないだろって?
馬鹿おっしゃい。ちゃんと理解し、思考しているわい。
この世界の魔導とは一般的に何を指すか。
魔法を使うための基本となる大気中の元素〜魔力元素〜とは何か。
使える魔法の種類はいくつか。
魔導のことだけでなく、
この世界にいる人族と魔族は何が違うのか。
人族とは何で、魔族とは何か。何故敵対するのか。
勇者とはどんな者を指すか。魔王とは何か。
などなど本当に色んなことが書いてある。覚えた事全てを説明するとなると日が暮れるから端折って、出来るだけ簡潔に説明しよう。
・魔導とは何か。
魔法。詳しく書いてたけどそれは割愛。皆の知ってる魔法で大体は合っているらしい。
・魔力元素とは何か。
酸素みたいな物。ただし、酸素とは違って任意に操る事が出来、具現化することで、魔法の源 魔力分子 になる。それを更に操り、属性を持った魔力分子へと変換し、基礎魔法の土台の出来上がり。
・使える魔法の種類。
魔法には属性があります。
火・水・緑・電気・土・氷・風・光・闇・回復
一般的な属性は、以上の10つであり、この他の属性魔法は確認されていません。
生まれ持った適正属性があり、その適正に特化した魔法が使えるようになる
成長の段階で他の属性魔法を使うと、それも適正属性として体に定着するが、この事は未だあまり知られていない。
そして、先程の属性以外にも魔法はある。精神に影響を及ぼす 精神魔法 や、自分やその他に強化や属性を施す 強化魔法 などが存在している。
・人族と魔族の違い、人族とは、魔族とは。
人族は生まれながらに脆弱であり、生まれたばかりでは魔法を使えない。
魔族は生まれながらに強靭な肉体を持ち、生まれてすぐに魔法を使うことが出来る。
単純に種族の強さで見れば、人族<魔族 である。
しかし、魔族には知恵のない個体が多く存在し、知恵なき魔物は成長速度が遅く、魔法をあまり使わない。が、肉体は強靭なため、人族にとっては十分に脅威である。
一方で知恵のある個体【知性個体】が存在し、知恵なき個体とは違い、魔力やそれを操る力が桁違いに強い。肉体は言わずもがな。
強靭な肉体に加え、強力な魔法を使う【知性個体】は、確認された翌日に国より討伐部隊が送られ、対処される。
・人族と魔族は何故敵対するのか。
遥か昔、人族はその脆弱さ故に、生まれながらに強者である魔族に恐怖し、魔族にないといわれる知性を最大限に有効活用し、恐怖対象である魔族を次々に殺害した。
恐怖され虐げられた魔族は当然反発し、その強靭な肉体と魔力を駆使し、人間に殺意を剥き出しに向かったのである。
今日まで、互いを忌み嫌う性質が我々に引き継がれている。魔物と手を取り合う日は永遠に来ないと予想される。
とな。うん。全然端折れてないね。これでも本10冊分を俺なりの言葉で纏めたんだぜ?
ただの高校生だった俺が…だ。この勤勉さを褒めて欲しいね。
おっと気付いたらもう20分経っちまった。またここから、5分かけて戻りますか!
丁度〈並列思考〉と〈超記憶〉のSLvが10になったところだし。てか、20分で1から10になるって……上がり過ぎじゃないか?
よく見てみれば、〈成長加速〉はスキルにも適応されているみたいだ。道理で成長が速いことだ。
帰る途中に、掴み立ちをして歩く練習をしながら戻った。恐ろしいことに、さっきやっとこさ掴み立ち出来たのに、既に掴み立ちしながら歩けるようになっているのである。
恐るべし、〈成長加速〉。
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その夜、俺は驚愕の事実を知った。
エルナに抱っこされながらウトウトしていると、見知らぬ男が入ってきた。
ダンディーな顔で夜の如き漆黒の中に一房の金色の髪、目元にはシワがなく、キリッと鋭い目付きをしている。頬には若干のほうれい線が見え、少々歳を取っている事が分かる。上品な服装をした色々な年齢層から好かれそうな紳士である。
誰だ、お前。強盗か!?と俺が警戒心を露わにしていると、紳士は上品かつ隙のない動きで、父に深く礼をした。
「旦那様。今宵は冷えます故、コロン様に毛布を購入してきました。」
「おぉ、そういえばフレリックの爺さんが、今日は昨年の冬よりも寒いと言ってたっけな。ありがとな、アルオ」
「いえ。」
…………うぇええぇえぇええええおお!?アルオォォォオ!?
何処がどうなってそうなったんだ!?つか人だぞ!?アルオって狼だよな!?説明してくれるよな、父さん?
と、目を見開きつつ、父に目線で問うと
「あれ、今まで見てなかった?アルオは人狼族なんだよ。犬種柄、夜にしか人にはなれないんだけどな。良い男だろ?俺よりイケメンなんだ、憎たらしい。」
自分よりイケメンであることを説明すると、嫉妬の言葉を投げた。
嫉妬すんなよ、醜いぞおっさん。
「いえ、それは仕方のないことです。」
「そこは気を使って、『旦那様のほうがイケメンですよ』と言えよぅ!」
「事実はしっかりとお伝えしなければなりませぬ。」
「ぬぬぬ、ぬぬぬぬぬぬ」
星が綺麗と言う彼女に対する彼氏の言葉みたいなのを要求する醜い父のツッコミをアルオは柳に風と受け流す。
そんなアルオに言い返せない父は、口喧嘩で負けた子供のように唸っている。子供かよ。
アルオも飼い主である父に似てか、少し勝ったような笑みを浮かべている。
アルオが正しいし、仕方ないね。父さんや、息子に格好いいと思われるのは、当分先になりそうです。頑張りなはれやっ!
一番知りたくて、しかし3ヶ月間忘れていたことに驚き疲れて、エルナの腕の中で気持ちよく目を閉じた。
読んでいただき、ありがとうございます!
この物語は序盤は説明が多いため、少々読むのが疲れるかもしれません。
早く勇者にして、旅の様子を書きたいのですが、
この作品もストーリーがあるので、そうも言ってられませんね。
個人的には、某 国を巡る旅人の小説のような旅を書きたいです。あそこまで表現豊かにする自信は…ないです!




