第3話〜街巡りと強襲〜
何故アルオが喋っているのか。考えても分からないので、さて置いておくことにした。
自宅から馬車で5分程。街へは意外と近いみたいだ。
道中では俺の家と同じような見た目の家がいくつか並んでいた。
この地方では、木組み建築が主流なのだろう。街についてからも、そんな家がいくつかあった。
ウルファン王国と呼ばれる我が国のメインストリート レイナントストリート の様子は賑やかで、いかにも異世界のような、RPGゲームでよく見るような店が並んでいる。
街には高い噴水があり、落ちる水滴が太陽の光を反射して下の池に吸い込まれている。
その噴水は、王城、ミルゴン街、研究施設や魔導学校、王国の大門 ラヴァル門 へと続く4つの大道の中心にある。
ミルゴン街とは、武器防具の鍛治や修繕、販売を主とした街である。焼いた鉄をハンマーで打ち鍛える音が心地良く感じるほど、厚く高く鳴り響いている。
何故こんなところは赤ん坊たる自分を連れてくるのだろう。ゲームの中でしか見たことのない鍛治に見惚れているから良いものの、普通の赤ん坊だったらうるさくて泣くと思う。
魔導学校とは、その名の通りこの世界における戦闘の基本、魔法を教える学校である。
何も戦闘だけのために魔法を習うわけではないが、結局、己や人を守るためには魔法を使わなければならない時もある。得意不得意はあれども、身を守る術は魔物がいるこの世界では、できるだけ全て学ばなければならないのだ。
知ったような口をきいてはいるが、勿論全て勝手な思い込みである。異世界だし、そんな感じだろ!そんな適当な感じだが、大体は合っているのだ。
4つの大道の脇に店がズラーっと並んでいる。割と何でもあるので、物にはあまり困ることはなさそうだ。
今日見て回った所は、あくまでもメインストリートであり、他にもいくつか街があるので、外を自由に出歩けるようになったら行ってみよう。
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まあ街の大きさから察していたが、それなりにウルファン王国は大国の様である。少し見て歩いただけで、夕方になってしまった。
帰りの馬車の中から覗ける空はオレンジ色で、少し肌寒くなっている。
実際に歩いたわけじゃないけど、結構疲れたな。赤ん坊にしては頭を使いすぎた気がする。……んー?
道の脇にある木陰から6人の小汚い男達が出てきて、馬車を囲むように立った。
一人が馬車のカーテンを開け
「降りろ」
と、威圧するようにいった。
言われるがまま降りるが、一体なんだろうか。見た目盗賊みたいだな(笑)
先程の男が俺達の前に立ち、再度威圧するように言い放った。
「金目の物を置いてけ。大人しく渡せば、殺しはしない。」
マジもんの盗賊だったようだ。笑ってサーセン。
住宅街なのにそんな事して良いのだろうか。確かに主婦達は買い物で街に行き、人は少ないが、いない訳ではない。
通報されたら即御用なのに、何故住宅街を選んだのだろうか。馬鹿なの?死ぬの?
そんなことを考えてはいるが、状況的にはマズい。暴行されないとは限らない。俺は防御力0なんだ。捕まったらどうしようもない。
父さんは見た目弱そうだし、母親と馬使いは論外。
アルオには傷を負ってほしくない。
どうせ街を見て回るだけで、金はあまり持ってないんだ。あるだけ渡して許してもらおう。そうしよう。
「旦那様、自分が行きます。」
「いやいいよ。コロンに強い父さんを見せる良いチャンスだよ!」
「そうですか。コロン様に見せるならば、転ばぬよう注意してください。」
「そんなドジしないって。」
「うふふ。あなた、ちゃんと手加減して差し上げるのよ?」
「もちろんさ!コロン、強い父さんをちゃんと見て置くんだぞ?憧れて良いんだからな?」
なんかちょっとウザいな。うちの父さんはウザキャラの様です。というか強いのか?そうは感じないが。二人を見るに大丈夫そうではある。
ウザいけど、見といてやろう。
「?なんだ、ヒョロイの。女と子供に良い姿を見せたいってか?やめとけよ。本当に殺しちまうぜ?」
と威圧しながら、腰に差していた剣を抜く。その構えにはは隙が無く、間合いに入ったら直ぐに首を落とされそうである。
こいつ、最初に出会う盗賊にしては強いな。
もうちょっと親切設計にしてくれても良かったんじゃないだろうか。
「盗賊にしては君、少し強いね。所詮少しだけど。君程なら盗賊以外に稼げる職業は沢山あったと思うけど?」
「おしゃべりをする気はない。最後に聞く。大人しく金目の物を置いていく気はないか?」
「ないね。」
キィィィィ―――――――――――ン
父が即答した瞬間、辺りに甲高い金属音が響く。
盗賊の男が一瞬で父の懐へ踏み込み喉に向かって剣を振るった。が、しかしそれは、目に見えぬ程の速度で抜刀された剣に阻まれた。
「むん!」
男は力を込め、父の剣を弾くとバックステップをした。
しかし父は、先に回避した筈の男に容易く追いつき、やはり目に捉えられぬ速度で剣を振るった。
「ぐっ!!」
男から血飛沫が上がる。剣を構えて防御した筈が、それをバターの様にスッと断たれ、腕を大きく腕を斬られる。斬られた腕は、血飛沫とともに宙を舞い、重力に従って地面に落ちる。
「さて、腕を一本斬ったところで、君に質問だ。今直ぐ仲間を連れて引き上げるか、全員俺に殺されるか。どっちかを選んでくれ。」
優しく弱そうな顔からは想像できない、殺気を込めたとても低く冷たい声に男だけでなく、盗賊全員が冷や汗を流す。リーダー格の男は慣れているかの様に、ささっと応急の止血を行い、血を余分に垂らさぬよう天に向かって腕を上げると
「俺の負けだ。引き上げる。」
そう言って、仲間に支えられながら逃げていった。
見えなくなるまでそれを見送った父は、見てたかっ?というように振り返り、満面の笑顔を見せる。笑うとイケメンだな。
しかし顔の頬には、斬った男の血が付いており、若干怖い。
「あなた、コロンちゃんが怯えるわ。その血を拭いてください。はい。」
「おぉ、そうだね。ごめんねコロン。強い父さんを見せたいばかりに、嫌な光景を見させてしまったね。」
別に気にしちゃいない。ばっちり強い父さんを見せてもらった。正直予想の斜め上を行きすぎた。2回の斬撃共に、目に捉えられないとは。
あの盗賊の男も中々強く見えたのだが、父さんが強過ぎたみたいだ。仲間も男の強さを知っていたらしく、男が父さんに手も足も出ない状況を見て、何が何だか分からないというような顔をしていた。
決めた。大きくなったら父さんに剣を教えてもらおう。俺がキラキラした目で見ると、ふふん!とその胸を反らした。
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盗賊に襲われたなんて物騒な事もあったが、父さんが強いという事を知ったりと、濃ゆい一日だった。
当分は家から出なさそうなので、ハイハイと歩く練習をしよう。
この家を周っている時にちらっと見えた書斎にある、大量の魔導書を早く読みたいのだ。
早いとこ魔法を使いたい。なんせ前世から憧れていたんだもの。
魔法を使っている自分を想像しながら、まだ夕方であるのに、猛烈な眠気に意識を手放してしまった。
ー夜になると知ることができのに。一番気になっていたあの事を知るまでは、約3ヶ月程かかったのである。
お読み頂きありがとうございます!
書いていて、自分の語彙力と表現力のなさに呆れていました。
現国は得意だったんですがね。
盗賊を強くしたのには理由があります。お父さんの強さを見せつけるためだけではないのです。