表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

第11話〜vs悪魔百足 前編〜

少々残酷な描写があります

 

「お前、冒険者になるんじゃなかったっけ?」


「いや、かくかくしかじかあってね」


「何、かくかくうまうまなんて事があったのか!」


「いや、かくかくしかじかなんだけど」


 何だこの会話。

 今クレイタスに勇者になった過程を説明している。

 冒険者になって来ると思っていた息子が勇者になって来るとは、誰も想像しなかったろう。

 昨日の勇者誕生祭でも、驚き半分嬉しさ半分の様子だったし。


「それにしてもコロンが勇者ねぇ。誇らしいんだが、似合わねぇな!」


「やかましいわ」


 俺だって似合うとは思ってないし。


「でも良いのか?勇者には国から直接依頼が来るんだ。旅してる時に依頼が来たらどうすんだ?」


「ああ、それは国王やギルマスから言われた。別に断っても良いってさ。依頼対象が近い場合は行かないと駄目らしいけど」


「そうか。まあ、旅の途中で依頼対象が近いなんてそう無いだろうからな。

 それはそうと、早速依頼来てるぜ?」


「早っ!まだ旅支度は終わってないから良いんだけど……。面倒な依頼じゃなければ良いなあ」


「勇者への依頼なんて面倒事しか無いと思うがな。……ほれ」


 クレイタスから依頼の紙を受け取った。

 綺麗な封筒で保護されていて、勇者以外には開けられ無い特別な魔法がかけられている。


 内容はこういうものだった。



『依頼国 ウルファン王国

 依頼人 国王、ダルバーン公爵


 すまんなコロン。他の勇者が3人とも旅行に行っているのだ。では、依頼を伝える。

 至急ウルファン王国のファリム街へ行って欲しい。そこを纏めているダルバーン公爵に話を聞いてくれ。

 恐らく戦闘になるから、装備を忘れるな。』



 最初の依頼から戦闘かい。まあ、ある程度なら俺でも解決出来るだろう。

 急ぎの用らしいので、母の転移魔法陣でファリム街近くの友人宅へ送ってもらう。


 母の友人ステアは、急に俺が転移して来たことに驚いていたが、簡潔に事を説明するとファリム街への一直線を教えてくれた。今度お礼をしなければ。


 身体強化魔法【豪脚】で高さ20mまで跳躍し、【空歩】で空中を足場にファリム街までをショートカットで進む。


 2分程で着いた。

 そこでは多数の冒険者やウルファン王国の兵士、雇われの傭兵などが城壁の外に整列している。


 一番後ろの豪華な服装のオッさんがダルバーン公爵だろう。

 俺は【空歩】で落下の速度を落としつつ、近くに着地。走って公爵の前へと出る。


「依頼を承りました、勇者のコロン・ウィストンです。

 一体これはどのような騒ぎでしょうか」


「おお!貴殿が第4勇者殿か!ここまで早く来て頂けるとはありがたい!

 実は、今日は年に1度ある魔物の大量発生の日でしてな。例年このファリム街の城壁を目指して大量の魔物が押し寄せて来るのだ。

 前までは冒険者や兵士、傭兵で何とか出来たものの、最近は魔物が強くなっており、勇者殿の力を借りなければ勝てぬ程になってしまった。

 あと1時間程で魔物が押し寄せてくる。どうか力を貸して欲しい」


 成る程。本で読んだな。

 魔物の大量発生期。それは暦上では4が3つ重なった日に起こる正しく死の日。

 通常確認される魔物は王国近くでは50体程だったが、死の日には500体以上が確認される。

 原因は不明であるが、E〜Dランクまでの魔物しか確認されておらず、冒険者や兵士で十分対処可能である、らしい。


 まあE〜Dランクでも500体。これは骨が折れる。


「先程、魔物が強くなって来ていると聞きました。ランクはどれ程までの魔物が出現するのでしょうか?」


「ああ。冒険者が言うにはCランクの〔鬼蜘蛛〕や〔悪魔百足〕なども確認されている。C.C+の冒険者じゃ、ちとキツイ魔物が増えている」


「分かりました。では城壁の外にいる人達に伝えてください。魔物が見え次第、魔術士は魔力が切れるまで魔法を叩き込み、土魔法を使える者は敵の足場を崩すこと。それ以外の人は盾を構え、臨戦態勢でとにかく待ってください、と。

 後は俺が処理させていただきます」


「分かった。直ぐに伝えよう。しかし、魔法の援護があるとはいえ、1人で大丈夫なのか?いくら勇者でも500体は……」


「えぇ、キツいですね。ですが、平野であるならば問題ありません。時間はかかりますけどね」


「頼もしい限りだ。どうか、このファリム街を守ってくれ」


「任せてください」


 さて、話は済んだ。

 しかし500体はダルいな。

 まず、突っ込むのは論外。土魔法で敵の足場が崩れるならば、俺の魔法も魔法を叩き込む。

【空歩】も使いながら敵の首を刎ねればいいだろう。

 決して止まらずに、敵の目にも止まらずに速度重視で行かなければ、足を掴まれて即胃袋行きだ。


 500体か。俺の初陣には持ってこいだ。

 命のリスクは当然あるが、不安などは一切なく、むしろ高揚感で満たされている。

 戦闘狂になった覚えは無いのだが。


 さあ、知恵なき魔物どもよ、せいぜい俺を楽しませてくれ。





 ------------------------





 平野の向こうに魔物の大群が見える。土埃が高く舞い上がっているところを見ると、走っているのがわかる。

 何故走っているのかは分からないが、早く来てくれるに越したことはない。


 大地を蹴る音が聞こえた。

 その瞬間、魔術士の土魔法で大群の足場が崩れる、ある者は泥に足を取られ、ある者は突如出来た凹凸に転ぶ。

 そこに降るのは魔法弾の雨。地面に広がるは大量の魔物の血。

 それでも知恵なき魔物は恐れず、ひたすらに王国目指して走る、走る。



 ----城壁まで1km----



 さて出番だ。

 ようやく大地の震えを感じ、【空歩】で上空100mまで跳躍、【空歩】と【加速】を合わせた、【超速空蹴(ブースト)】で魔物の大群目掛けて突っ込む。


 さっき突っ込むのは論外と言ったな。あれは嘘だ!!

 我慢出来ない。眼の前で首を切り落とさないとダメなのだ。


「【火炎貫破】!!」


 剣に3000度を超える炎を纏い、直線上に放射する。まるで怪物のビームの如く。

 炎の槍は俺の直線上にいる魔物の上半身を焼き尽くしていく。

 その周りにいる魔物に高熱の波が襲い、その身を焼き焦がす。


 今の魔法だけで軽く80体は死んだな。

 まあ良い。まだ300体くらいは残っている。



 ----城壁まで800m----



 魔術士の水魔法が俺の炎に被り、水蒸気が辺りを覆う。

 魔物には【魔力感知】があるので、敵の位置は丸分かりになる。

 人間にとっては不利な状況だ。

 しかし俺にも【魔力感知】がある。

 煙の中で魔物の首を刎ねることなど造作も無い。


 俺を敵と認め、伸ばしてくる手を軽く切り落とし、纏う炎でBBQにしていく。


 さて、熱いのももう飽きた。

 熱いものの次は冷たいものに限る。


「【殺雹吹雪(アイスブリザード)】!!」


 30cm大の雹が高速で吹き荒れる。

 氷点下20度まで下がった大気は魔物の皮膚を凍らせ、ぼろぼろに崩す。

 動けない魔物に雹が突き刺さり、いよいよ絶命する。

 下等魔物では結界を張れずに即死という、恐ろしい技だ。

 その分、使用魔力も多いが、魔力量だけは超越級の母をも超える俺には些細な事だ。


 さてCランクだったか、鬼蜘蛛。

 本通り、赤い8つ眼に10本の足。額に生えた2本の角。

 Cランク程度の魔物から魔法を使い始めるらしいが、一体どの様なものを使うつもりか。


 氷魔法を解き、様子を探っていると、身体から無数の糸を飛ばしてきた。

【糸弾】か。鉄糸というものを生成し、弾丸のように密度を高めたものを高速で発射する技だ。

 魔法ではない、種族スキルによるものだな。


 粘着質ではないので、剣で容易く切れる。

 千切れた鉄糸を鑑定し、記憶しておく。

 もしも鉄糸を応用して罠が作れるならば、性質などを知っておいた方が良いし、種族スキルも理解しておいた方が、蜘蛛族と戦う際に便利だ。


 鑑定は終わったので、【火炎裂破】で周りの魔物ごと燃やしておく。

 ダルバーンは悪魔百足もいると言っていた。

 早く会いたい。悪魔百足の種族スキルは本に載っていなかったのだ。

 待ち遠しい魔物を探す俺を殺さんと群がる、無粋な魔物達を処理しつつ走り回る。


 この時点で魔物の数は、残り100体程になっていた。



 ----城壁まで500m----



 魔物が50体程まで減ってきてしまったというのに、悪魔百足だけが見当たらない。

 Cランクの魔物は他に、〔爪狼〕や〔赤虎〕などを見かけたのだが、どこにもいない。


 今回の大量発生期に偶々居なかっただけか。

 残念だが、今回は残りを始末してさっさと帰ろう。

 そう思い、【火炎裂破】を放とうとした瞬間、紫色の弾が高速で飛んできた。


 着弾した地面は紫色の煙を上げ、溶けている。

 見るからに猛毒だ。

 煙を吸うだけでも死に至りそうなので、直ぐにその場から離れる。


 弾が飛んで来た方を見ると、そこには見るだけで嫌悪感を抱く一体の虫型魔物がいた。

 正しく100本の足を持ち、その身体をくねくねと曲がらせている。触覚は紫色の瘴気を纏い、口から飛び出る牙は猛毒の深い紫で塗れている。


「ようやく来たな……悪魔百足!!俺の知識欲のために、死んでくれ!!」


 高揚感で身を包まれ、直ぐに剣を構える。

 身体を消すと鑑定が出来ないので、氷魔法を剣に纏う。

 百足を殺そうと足に力を入れた瞬間あり得ない事が起きた。


「悪イガ、断ル」


「喋った……だと!?」


 そう、悪魔百足が喋ったのだ。

 本来魔物が喋るなどあり得ない。魔物には、それぞれの種族のみが感知できる周波により、独自の言語で会話をしている。

 そのために、声などという複雑な音を作り出すための器官は無いのだ。

 つまりこいつは……


「察シタカ?ソウダ。我ハ特殊個体(ユニークモンスター)デアル」


 特殊個体。それは、突然に()()し、人間を超える知能を持った魔物である。

 種族本来の力を使いこなし、人々に災厄を齎す魔物である。

 Cランクの魔物の場合、生まれた段階ではBランク程度でしかないが、成長するとA+ランクにまでなる。生まれ時に始末しないと手に負えない、厄介な魔物である。


 まさか噂の特殊個体に出会えるとはな。

 種族スキルもそうだが、百足族の本来の力とはどういうものなのか、今迄に無く気になる。

 どうしても鑑定したい。


「我モ、この力を試しタイ。先ずハ貴様の死をもって、初陣とサセてモらおう」


 この短時間でここまで流暢に喋れるようになるとは。

 そして、ここまで期待させてくれるとは。

 流石、特殊個体だ。

 どうしても鑑定したい!

 だがその前にだ。


「魔術士達!今すぐ攻撃を中止してくれ!特殊個体が発生した!こいつは強い!君達の攻撃を避けながら戦う自身がないんだ!もしも俺が殺られた時のために、魔力を温存しておいてくれ!」


「ゆ、特殊個体……!?そんなの噂でしか聞いた事がないぞ!?」


「お、俺もだ。確かに、今迄の魔物とは比べものにならない力を感じる!勇者の言った通り、魔力を温存しておこう!」


 これで完璧だ。

 俺らを邪魔する奴はいない。


「こちらの事情で少々待たせたな、悪魔百足」


「気にするな。人間、勇者と言われていたな。貴様は中々に強そうだ。歯応えのある敵は嬉しいぞ」


 ふん。強者ぶっているが、俺からしたら強くなるための餌でしかない。

 だが、それなりに強そうだ。知恵のある魔物という事で、礼儀を持って相手してやろう。


「さあ、始めようか。食事時間を!!」


「それはコチラの台詞だ!!」


 互いの【炎弾】と【猛毒弾】の衝突による激しい爆発により、勇者とA+ランクまで成長しきってしまった特殊個体の戦闘開始の合図となった。

読んで頂き、有難うございます!


サブタイトルを〜vs 悪魔百足 前編〜に変更しました。


主人公は割と戦闘狂になってしまいました。

私は戦闘シーンが大好きなので、主人公もそれに合わせた性格になってしまった様ですね!

という事で、この作品は戦闘が多めです。

その分、残酷な表現が多々出るので、苦手な方は前書きをお読み頂けると良いと思います。

残酷な表現がある時はお知らせしますので!


それでは、また次回お会いしましょう!

ばいな〜ら〜(古い)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ