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こちら騎士団特命係。  作者: 遼明
第一章 ヴィーナスの涙
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第一話

 その場所は日当たりのいい部屋であった。

 開けられた大きな窓からは心地よい風と光が差し込み、微睡を誘うような居心地がいい。

 そんな部屋の片隅に古びた蓄音機が静かにレコードを回し、曲を奏でていた。


『――エージェントの諸君元気かね?』


 しかし、流れたのは曲だけではなく男の言葉。決して歌詞ではなく、このレコードを聴く人間に語り掛けるように声を出していた。

 そうこのレコードは流れる曲ではなく、男の言葉こそが最も重要な事であった。


『さて今回、君達に調べて欲しい物がある。それは『ヴィーナスの涙』と言われるそうだ。それが一体何なのか? ……我々にはわからなかった。しかし、君達ならできるはずだ。

 ――行く先々では危険が待っている。君達を守るのは君たち自身だ。成功を祈る』


 この男の言葉を最後にレコードの曲が静かに止まる。

 すると、部屋の隅にいた一人の男が蓄音機のレコードを取り外すと、なんとレコードを窓の外に投げ捨てたのだった。

 雲一つない空にレコードが舞う。きれいに弧を描きながら落ちていくと思われた。

 しかし――。


 ――――レコードは自ら爆発し粉々に吹き飛んだのだ。


 空には不自然に黒い雲一つ、でも天気は良かった。



  ◇ □ ◇ □ ◇


 ――光国、首都ラージス。


 この世界、『スタンザス』に置いて知らぬ者はいないだろう。

 建国されて以来。度重なる苦難の歴史、伝説。そして神話が語り継がれる三大国家の一つである。

 そして、三大国家の中では今だ王家が存在し、彼らを象徴とした民主主義の国家であるが、そんな国故か今だ存在する組織がある。


 ――ラージス聖騎士団。神話でも語り継がれる伝説の騎士団が現代でも存在した。


 現代では、騎士団として王家の警備は勿論のこと光国全体の治安維持。つまり警察組織そのものとしての役割も担っていた。他にも軍としての機能も受け継がれているため、非常に厳しい訓練を得て実戦配備もとい、各地方に配属となるのだ。

 そんなラージス聖騎士団に毎年恒例の時期が訪れていた。

 そう新隊員の辞令通達である。


 ――しかし、今年は異例であった。


「ラージス聖騎士団教育課程での成績は最下位、しかも赤点があるな……。君は騎士として決定的な欠点をもってなお、まだ騎士を目指すと言うのか?」

「は、はい! 私は騎士になる為に祖国を出て、この国にやってきました。お願いします! 私を騎士として認めてください!」


 昼下がり、教育課程のために建設された教場で深々とお辞儀をする少女がいた。

 名を『ラーミナ・エクセス』。今回の問題児であった。

 その様子を困ったように頭を抱えるのは、書類を睨む『ジャンヌ・カナス』聖騎士団長であった。


「君の思いは理解できる。私も女で、しかも騎士に憧れ隣国からやって来た身だ。他人事では思えない、しかしだ。君には騎士は向いていない。わたしは君に命を捨てさせたくない」


 ジャンヌは睨んでいた書類をラーミナに渡すと言葉を続けた。


「確かに君は座学では他の隊員に引けを取らない。むしろ優秀と言ってもいい。だが、それだけでは前線では生き抜けない」


 ラーミナは渡された書類を見た。そこには自分のよく知る成績と評価が記載されていた。


 騎士候補 ラーミナ・エクセス

 座学 A

 剣術 E

 体術 D

 魔法 F

 魔力量 F


 評価

 座学については文句のつけようがなく非常に優秀。しかし、一方で剣術と体術に問題あり、魔法については発動せず、大気に魔力が霧散する現象を確認。魔力量については測定できない。

 よって騎士としては適性はないとする。


「これを見て、まだ騎士になりたいかい?」

「わ、私はそれでもっ、騎士になりたいです! やらせてください!!」

「……わかった。できる限り君の意思を尊重しよう。配属先は追って連絡する。それではな」

「はいっ、ありがとうございました」


 教場を後にするジャンヌを見送ったラーミナはもう一度手に持っていた書類に目を通す。

 確かに騎士には向いていない能力である。でも、ここまで来て諦めるわけにはいかなかった。幼い頃に憧れた騎士になれるかもしれないのだ。


「――でも、私は騎士になれるのかな?」


 彼女の呟きは静かに教場を反響した。


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