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彼女は今日一日家にいるつもりらしかった。

「ねえ、私たちの世界はあした終わるのよ。もしあなたがここを抜け出せばね」

そして、こんな言葉を一日中ぼくにきかせるつもりらしかった。もちろんぼくは彼女の思いどおりに動くつもりはない。

あずさとは会う時間も場所も決めていなかったが、外にでなければなにも始まらない。ぼくがそうして脱出の計略をなっている間、彼女は、(おそらく)ベッドの上のぼくの胸板に頭を乗せ、服の上から腕を撫でていた。視界を奪われたぼくにはそれが、得体の知れない蛇のようなものがからだを這いまわっているように感じられて、いつ絞め殺されるのか、これがぼくの運命なのか、と、不安と戦わねばならなかった。

ぼくはこのベッドらしきものから抜け出そうとしているわけだが、問題は手錠だ、どう外せば良いのだ、と思っていると、彼女が言った。

「もしお風呂に入りたいとかがあれば、手錠は外すし、目隠しもとってあげるわ」

ぼくはもちろん、この申し出に飛びついた。そして、解放された瞬間に彼女を殴りつけて、堂々とこの空間に別れを告げるのだ。

そうしてぼくの身につけられていた拘束具が取り払われ、目隠しをはずされた瞬間、ぼくは拳を振り上げたのだが、どうしても彼女を殴ることはできそうもなかった。

彼女は、あずさだったのだ。というより、別人というにはあまりに似すぎていた。困惑するぼくに彼女は告げた。

「私はあしたのあずさよ。つまり未来から来たというわけ。といっても、昨日から接触ははかっていたわ。スーツ姿で気づかれないようにしてね。

突然だけど、あした世界は終わるの。隕石が降ってきてね。そして、私はそれを今日の私に告げて、今日の私はあしたあなたと会うつもりだった。けれど、あした、私はあなたとは会えない。もし会えば隕石が偶然地球をそれる確率がまったくゼロになってしまうから。これは、そうなのよ。

それを今日の私に伝え忘れたのね。だから神様にたのんで過去にいかせてもらった。

それで、あなたを、本当はわたしに近づけないだけでよかったんだけど、監禁した」

ぼくの頭の中では、あずさが時間のかかれた矢印の上をちょこちょことせわしなく飛び回っていた。

なんだかよくわからないが世界は終わるらしい。

「なぜぼくを監禁したんだ?」

「それは……。今日の私があしたあなたといるのは隕石回避の可能性がなくなるからだめだけど、あしたの私があしたあなたとすごすのは問題ないからよ。もし隕石がそれたら私はつじつまを合わせるためにきえなければならないけどね」

どうやら、ぼくの昨日の妄想は実現したらしい。

ぼくは彼女のいうことはよくわからなかったが、真剣な様子をうけて、この家に留まらざるをえなかった。さあ、あした、世界は終末を避けられるのかな。

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