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第四話 騒動の後

「早急にその忌まわしいアンの呪いの人形の残骸を捨てて来い! それと、気を失っておられる異世界人を運べ」


「ハッ」


 騎士達は起き上がり壊れた鬼の土の人形の撤去と琴音を寝室へと運ぶ作業に取り掛かった。

 団長は指示を出した後、ビクトリアスの元へ向かった。


「申し訳ありません。 陛下 異世界人の方々。 我ら騎士団が腑抜けなばかりにこの様なことになってしまったことお詫び申し上げます」


 と、ベイトは深々と頭を下げた。


「ベイト。 これはそなたの失態…いや、騎士団の失態でもないわ。 あなたが頭を下げる必要はないわ。 これは、研究員の失態 研究員は王宮より追放しなさい ランズリー」


「よろしいのですか?」


「元々、研究員の考え方には反対だったからいいのよ」


「承知いたしました」


 ランズリーはその手にもっていた記録帳にこれらのことをすべて書き込んだ。


「それで、旅の事なのだけど…、子供達 少し混乱があるだろうからよく話し合うといいわ。 そうそう 琴音さんは王宮の方で看病するから安心して」


「はい ありがとうございます」


「旅に出る出ないに関わらず また王宮にいらっしゃい 今回はこの様なことになってしまったけれど、話すことがまだまだたくさんあるからね」


「はい。 分かりました」


 この一件で死者は出なかったが怪我人は重軽傷合わせて十三人にのぼった。 酷い事件のように思われるが、鬼が関わった事件で死者が出なかっただけましだ。

 子供達はビクトリアスの言うとおり、今回は城を後にしようと、王室を出て騎士セリスと…。


「異世界人の方々! お待ちを!」


「ランズリー様!?」


「女王様が王宮内を見て回ってはどうかと」


「いいんですか?」


「はい」


『やったー』


「その際はセリス、同行しなさい」


「ハッ」


 ということでしばらく子ども達は王宮内を見て回る…というよりこの広すぎる王宮を探検することにした。

 食堂や大広間など、また一番すごかったのは王宮最上階の展望橋テンボウキョウだ。 展望橋は、まず、城の説明からすると城には七つの塔のような建物があり、そのなかのもっとも高い塔二つをつなぐ橋のこと。

 そこからの眺めは最高だ。


「そして、ここが展望橋です。 異世界人の方々」


 そうして、展望橋への扉を開けると城が白いのもありものすごい明るい光が射し込んできて一瞬クラッとしたけれど、だんだん目が慣れてきてよく見えるようになってくると、そこには想像にもしなかった光景が広がっていた。


「わー、すごい景色!」


「うわ、たっっけぇなぁ」


「すごい 街全体が見えるんだ!」


「これが、我らの王国アイルです!」


・・・


「今日はありがとうございました。 セリスさん」


「いえ、礼ならば女王様に。 お気をつけてお帰りください異世界人の子ども達」


 セリスに手を振って別れると子ども達はゆっくりと門へ歩き出した。 あたりはもうすっかり日が落ち始めていた。

 城壁の門まで戻るとそこにはアルスが立っていた。


「アルスさーん!」


「おぉ 子供達。 大丈夫だったか? 城で騒ぎがあったらしいけど」


「らしい?」


「あぁ、こっちには王宮の情報はあんまり回ってこないから王宮でのことはあまり知らないんだ。 許可がでてる奴しか入れないし」


「あ、そうなんですか?」


「おう。 で、なにがあったんだ?」


「鬼が突然、襲いかかってきたんです」


「鬼? 研究者が地下室に保管していた?」


「よく、分からないけれど」


「そうか、てか…」


「おーい!」


「あ、ドラだ」


 町の方からドラが手を振って僕らを呼びかけている。 もちろん、クルモも一緒だ。

 ただ、違うのは…


「あれ、ドラとクルモその格好は?」


 違うのはその姿だ。 随分と重装備で、クルモは弓と矢筒をドラは剣を身につけてまるでこれから戦いにでもいくつもりのような姿格好をしている。


「あ、この鎧のことか。 えーと、女王様から女神リーフ様の事は女王様から聞いたか?」


「女神様のことは聞いたよ」


「だったら、女神様のところへは当然、行くだろ? そんで、お供させてもらおうと思ってよ。 こう見えて俺たち王宮の騎士だったんだぜ」


「本当なの?!」


「おう! だけど、お前たちのその様子を見るなり会話を聞くなり、そっちは当然用意できてないようだな。 鬼が暴走したんだって?」


「うん」


「そいえば、ひとり女の子が足りない気がするんだが…?」


「気絶しちゃって、今 王宮で看病してもらってるよ」


「…、まぁ、詳しい話や今後のことはまた明日考えると言うことで、そういうことならどうせ、女王様にまた城へ来いっていわれてるだろ?」


「うん」


「じゃ、なおとこと、明日話そう。 今は帰って飯だ」


「いや、今日も帰れないね」


「え?」


 そう兵士のアルスが言った途端、国中に大きな鐘の音が響き渡った。


「しまった…、また、門が」


「残念だったなドラ、クルモ。 また、カルバの宿行き決定だな」


「く、くそぉ」


「えっ、どういうこと?」


「あぁ、知らないのか。 えっと、この国は多くの区画に分かれているんだ。 君たちがいるこの区画は第二壁ダイニヘキの二区。 ちなみに、王宮は第一壁の一区だよ。 まず、今いる第二壁の説明からするね。 第二壁には二区から五区まである。 第三壁が六区から十三区まで、第四壁が十四区から二十九区まであって、第五壁が三十区から五十五区ある。 とまぁ、合計で区は五十五区あって、第六壁はあってないようなものだ。 六壁はほとんど崩されてね、ただ、七十五区と七十六区は俺たち兵士がなんとか住むことができるまでにはした。 あそこはまだ壁があるから、それももう三年前の話なのに未だに完全復旧できない状況だよ。 二ヶ月前の鬼火町の一件はもう復旧が終わってるっていうのに…。 まぁ、この区画は王宮を中心にして放射状かつ円形に取り囲むように並んでいる。 こんな国の形は滅多にみない。 ここまでいいかな?」


「うん、でも、区画はどういう順番で並んでいるの?」


「あ、えっと、王宮を中心に第二壁は四方位、第三壁は八方位、第四壁は十六方位、第五壁は二十四方位ですべて右回りで並んでいるよ」


「へぇ~」


「そしてだ、この区画は安全の為、すべて壁で区切られていて区画間は門を通らなければ移動ができない。 しかも、赤の七番になると、門が閉まるんだ。 つまり、赤の七番を過ぎると、区画間の移動はできないってこと」


「へぇ~、そんな決まりがあるんだ~。 っていうか、赤の七番っていうのは?」


「あぁ、そっか、世界が違ければ色番シキバン(この世界における時間のこと)も違うのか。 一日を二十四等分するんだ、そしたらその前半を青、後半を赤」


「あ、時間のことか」


「というかドラ、そういうことは先に教えてやれよな」


「まぁまぁまぁいーじゃねぇかよ。 そーいうわけで、じゃな!」


「おぉ、またな子ども達」


 手を振りかえした子ども達とドラ、クルモは、そうしてその場を後にした。


「ねぇ、ドラ。 どこへ行くの?」


「んん? 九区に帰ると言いたいとこだけどアルスの言ったとおり区画間の移動ができないから、カルバっていう婆さんがやってる宿屋に向かうよ。 ってか、着いたけどな」


 見たこともない文字で看板が書かれているけれどなんとなく飲み屋を思わせる店構えだ。

 そんな店にドラ、クルモは躊躇無く入っていってしまった。

 僕らも仕方なくその店へと足を踏み入れた。


「いらっしゃい」


「おう カル婆、また来たぜ」


「なんだい、また色番過ぎたのかい。 ちゃんと色番計シキバンケイ見なさいよ。 まったく」


 そう、話しかけてくるのはこの店の店主、カルバという婆さんだ。


「ねぇ、クルモ」


「ん? どうした、麻倉」


「ここって、本当に宿屋なの?」


「そうさ。 一階は酒場なんだけど、二階は宿屋になってるんだ」


「そうなの。 いや、怖そうな猫が来てるから…ね?」


「あぁ、まぁね、この酒場に来てる連中はみんな見た目はちょっと怖いけどいい猫たちだよ。 みんな元は兵士や傭兵だかなぁ、見た目が怖いのは仕方ないんだ」


「そうだったんだ」


「ほぉら! 扉の前で立ち止まってないで早くそこどきな! 他の客に迷惑だよ」


 一行はカルバのいるカウンターに向かった。


「二階なら開いてるよ勝手に…、あら、かわいい子ども達だね。 どうしたんだい?」


「ほら、最近 王国にやってきた」


「異世界人かい?! まぁ、よくきたわねぇ。 いらっしゃい。 私はカルバっていうわ。 呼び方は好き好きだけど、カルバおばさんで構わないわ」


「はい カルバおばさん」


「そうそう。 今日はもう七番だから、二階の部屋でゆっくり休んでいってね」


「あ、ありがとうございます」


「いいのよ。 あ、でも、空き部屋は部屋は一つだから男の子はいいにしても、そこの女の子は、そうねぇ。 私の部屋でいいかしら?」


「あ、はい。 ありがとうございます」


 と、いうとことで今日はこのカルバの宿屋に泊まることになった。

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