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第三話 再びの鬼

ー王城内部へと続く扉前ー

 アルスが大扉の横にある小さな扉をノックすると中から女の兵士が出てきた。


「何のようだ。 って、アルスじゃないかどうしたんだ?」


「異世界人を連れてきたぜ。 女王陛下とのご面会だ。 連れて行ってやってくれ」


「ようやく この王国にも異世界人がやってきたんだな。 分かった。 連れて行こう」


「じゃ、後 頼んだぜ」


 と、アルスは手を振って元の持ち場に戻っていった。

 女の兵士は扉を閉めると子供達を先導した。


「さ、私に付いて来てください。 異世界人達」


「あの、あなたの名前は?」


「あ、申し遅れました。 私、騎士団のセリスと申します。 以後お見知り置きを 異世界人達よ」


 と、セリスは一礼した。

 そのあと、みんな自己紹介を済ませた後 再び歩き出した。


ー王城内ー

 子供達は国王の間を目指して王城内を歩いていた。


「そういえば、この世界に来てまだ たったの1日、それに俺達の姿や他の人の…猫人の姿。 完全に猫だぜ? ドラやクルモの言葉に流されるままにそのときも今も納得させられたけど。 よく考えれば俺達もっと動揺してても可笑しくないのに、案外俺達って受け入っぷりがエグいよな」


「それな、剛の思ってること確かに俺も思った。 そうやって流されるままに王に会えって言うんだもんな そうして、ここまであっという間に来ちゃったし」


「そう考えると私達って結構スゴくない? 今頃 ドラとクルモがそのこと話してたりして」


ーそのころ、鬼火町通りー

 ドラとクルモが大通りを歩いていた。


「なぁ、あの子供達 すごいと思わないか?」


「なんで?」


「だってよ あの受け入れよう凄すぎないか? この世界のことも姿のことも」


「あー、確かにな。 でも、受け入れてない子もいたと思うけどな」


「そうか?」


「あぁ、あの琴音という女の子、目覚めたときだいぶ怖がってたし この世界のことを受け入れても元の世界で起きたことは受け入れていないと思うぜ。 それに、この世界にだって…」


ー王城内ー


「あははは 日向の言うとおりかも」


 4人はクスクスと笑った。


「私は受け入れられないわ。 こんなの」


「琴音ちゃん…?」


 みんなが琴音の方に向いた。


「だって… みんな一度死んだのよ? それだけじゃない。 この世界に生き返ったときだって何でそんな簡単に受け入れられるの? 全然理解できない。 私 怖いよ…鬼も死んだことも生き返ったことも猫人も全部…」


「さぁさぁ、いつまでも話しておらずに。 ここから先は異世界人様のみでお進みください。 この扉の向こうは国王の間です。 呉々も先程のような私語は慎みください」


 金や何やらの装飾がされた大扉の前に来た。

 セリスの言うようにこの扉の向こうは国王の間。

 ビクトリアス女王陛下がいる部屋だ。

 セリスがゆっくりと大扉を開けた。


「ビクトリアス女王陛下! 異世界人達がご面会に参られました!」


 赤い絨毯が玉座まで一直線に伸びていてその両サイドには大窓があって、数人の兵士…いや、騎士が並んでいた。

 玉座にはもちろん、ビクトリアス女王陛下が座っていた。

 子供達はゆっくりとビクトリアスのいる方へ歩き出した。

 ビクトリアス女王陛下は何というかその、一言でまとめると その姿と雰囲気は“少しポッチャリな優しいマダム”と言った感じである。


「あなた達が先日やってきた異世界人なの?」


「は、はい! ビクトリアス女王陛下!」


 英治が緊張でガクガクに震えながらビクトリアスのといかけに応えた。


「ふふふ そんなにカシコまらなくともいいのよ」


 英治は少し緊張がほぐれた。


「ようやく、私達の王国にも異世界人がやってきたのね。 とても喜ばしいことだわ。 ねぇ、ランズリー」


 すると、玉座の横に立っていた書記係ランズリーが応えた。


「えぇ、そうですとも 女王陛下」


「あ、そえいえば、まだ名前を聞いていなかったわね。 名前は何というの?」


 子供達はそれぞれ自己紹介をした。


「ところで、あなた達も女神のもとへ向かうのかしら?」


「女神…?」


「なに? あなた達知らないの?」


「はい…」


「あらそう、じゃあ教えてあげるわ。 女神様はね よその世界から来た人々…つまり異世界人の願いを一つだけ叶えてくれるという伝説の女神様なの」


「願いを一つだけ…」


「えぇ、そうよ。 なんでも叶えてくれるわ。 大概の異世界人はこんな願いを抱いて女神様のもとへ向かうわ」


「それは、いったいなんですか?」


「それはね。 元の世界へ帰ることよ」


「元の世界へ…帰れるんですか!?」


「えぇそう、女神様の元へたどり着ければね。 女神への道はとても危険よ 女神の元へ向かうの?」


 もとの世界に帰れる 英治はみんなの方に振り向いた。

 どうやら、全員意見は一致しているようだった。


「城壁の外には鬼の傀儡がいるのよ? それでも向かうというの?」


「お…鬼?」


 琴音は頭の中が真っ白になり、あの時の、あの夜の出来事が頭の中で再生された。

 そのとき、王城最下層の牢獄で捕らわれた鬼の目が突然開いた。


「鬼が……いる…の?」


 地下。

 鬼は手足にくくりつけられた鎖を断ち切った。

 琴音は足の力が抜け座り込んでしまった。

 突然座り込んでしまった琴音に他の子供達が駆け寄った。


「おい琴音! どうしたんだ?! しっかりしろ!」


 鬼が牢獄の扉を蹴破り走り出した。 騎士も物もすべてなぎ倒し押し進んだ。


「どうされたの?!」


「僕達、元の世界で鬼に殺されたんです! 多分、そのことを思い出したんだと…」


「っ…! ランズリー 早く琴音さんを医務室へ!」


「承知いたしました。 おい騎士達よ 聞いたであろう。 早く運ぶのだ!」


 騎士達は琴音を担架に乗せた。

 一人の騎士が玉座の後ろの方から現れビクトリアスのもとに駆け寄った。


「ビクトリアス女王陛下」


「どうしたの」


「地下牢獄の傀儡が脱走しました」


「っ! それで、今その傀儡は?」


「凄まじい速さで此方に向かっているとのことです」


「なんですって?!」


 その時、大扉が吹き飛びあたりにとてつもない破壊音を響かせた。

 騎士達は大扉前で剣を鞘から引き抜き構えた。 琴音を乗せた担架を担いだ騎士達も安全なところへ運ぶとすぐに配置についた。

 子供達もビクトリアスもその場にいた猫人達は大扉の方をじっと見ていた。

 ゆっくりと此方に向かって歩いてるようだが土埃が立っていてよく見えなかった。

 だが、その影の形から察するに…いや、土埃は収まりその姿が完全に把握できた。

 元の世界で子供達を殺した 鬼そのものだった。


「異世界人様方! 早くビクトリアス女王様のもとへ!!」


「はっ、はい!」


 鬼が大きく口を開け奇声をあげた。


「ガァァアアアアアア!!!」


「怯むな!! 戦え!!」


 騎士達は鬼との戦闘を開始した。 だが、戦力差は一目瞭然、圧倒的に鬼の方が強かった。

 鬼は騎士を軽々と持ち上げ四方八方へ放り投げた。

 そして、子供達の方へ再び走り出した。

 が、鬼の左足が突然 砕け散ってその後 蹴りを喰らわされた鬼は勢いよく吹っ飛んだ。


「全く 騎士団ともあろうものが情けない」


 鬼を斬ったときに折れたのだろうか、折れたロングソードを投げ捨てた。


「だ、団長!」


 鬼に投げ飛ばされた騎士が剣を支えに起き上がりそう言った。

 騎士団長ベイトの武器はロングソードだ。 常に腰に二本、背中に一本の計三本を常備している。 それと、銃一丁も忘れてはいけない。

 砕け散った左足の欠片が鬼のもとへ集まってゆき、左足は再生した。


「研究員の馬鹿共め なにが「傀儡は絶対に此処から脱走できません」だ。 現に脱走してるじゃないか。 全く 騎士団の情けなさといい 研究員共の馬鹿さ加減といい どいつもこいつも腑抜けばかりだ」


 鬼は立ち上がり懲りずに再び走り出した。

 銃声が鳴り響き途端に鬼が倒れた。


「討伐完了」


 ベイトはそっと銃を収めた。

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