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閑話三 もう一つの戦場?

短めです。

そういえば出してなかったなと思って書いてみました。

「――『狂牛ラッシュ』ううう!」


 俺の切り札の技名が元気よく響く。

 直後、『そこそこの衝撃』が『俺の体に』発生し、俺は『空気を読んで』後ろに勢いよく倒れ込む。


「ぬおおぅ!? やられたぁあああ……!」


 ここはモンスターが我が物顔で跋扈する迷宮内――ではもちろんない。


 探索が休みとなる土曜日の、ほどよい陽の光が心地いい午前中。

 俺はズク坊とすぐると共に、花蓮の家に遊びに来ていた。


「やった、ついにバタローを倒したぞ! ――んじゃもう一戦だ!」

「ずるいよ兄ちゃん! 今度は僕がバタローを倒す番だよう!」

「待って! 僕だってバタローを倒せるんだからねっ!」


 リビングのど真ん中にて、俺を倒した(?)小6の長男に、小3と小1の二男と三男が異議を唱える。


 そのわずか二秒後。

 ならば全員でかかればいいじゃん! と結論を出したのか、

 それぞれ素手、チャンバラ刀、ピコピコハンマーと、戦闘態勢になって俺の懐に飛び込んできた。


「おのれッ! 一対三とは卑怯な……ぐわぁああ!」


 我ながらナイスな芝居だと思いつつ、一斉攻撃に膝をつく。


 俺は兄弟がいなくて一人っ子だからな。

 元気ハツラツな男児の相手をするのは……モンスターとはまた違って大変だぞ。


 ……ちなみに、もう一人。

 すぐるの方は真っ先にこの三兄弟に倒されている。


 どうやら俺がボスで、すぐるが雑魚モンスター扱いらしい。

 ぽかぽかバシバシと腹への集中攻撃を受けて、一ラウンド(三分)も持たずにKO負け。


 しかも倒された直後、『ぽっちゃりゴブリン』とかいう悲しい称号を与えられる始末だ。


 そんなすぐるは今、一人ソファに座ってコーラを飲みながら小休憩しております。


 一方、リビングの端っこの方では――……。


「どうズク坊ちゃん。痒いところはない?」

「ホーホゥ。ちょっと耳の裏が痒いな」

「ここらへん?」

「ホーホゥ。そこそこ、そこだホーホゥ~」


 ズク坊は中二の二女の相手をしている。


 ……いや、正確に言うと可愛がられているか。

 ブラッシングされながらお菓子も食べるという、ちょっとしたお坊っちゃまみたいになっていた。


「にしても皆、似てるよなあ。見事な童顔家系だぞ」


 長女の花蓮を含めた、三男二女の兄弟姉妹。

 二十一の花蓮は相変わらずの中三女子(黒髪・そばかす・童顔)な見た目だし、中二以下の四人も年相応には見えない。


 ただ、中身の方はそうでもなかった。

 もしかしたら花蓮みたいなド天然かと思いきや、子供っぽさはあっても至って普通の感じだ。


 それでも頭の良さは某有名私立大にいた花蓮と似ているらしく、

 二女から三男まで、全員が学年で一、二を争う秀才くんだった。


 ついさっき、中二の二女が解いている数学の問題を見てみたが……まるでチンプンカンプンですよ。


「なあバタロー! そろそろ本物の【モーモーパワー】を見せてくれよー」

「バカタレ長男。んな事したら家の床が抜けるだろが!」

「ええーいいじゃん。ここは三階だから一階まで床をブチ抜いちゃえ!」

「二男もバカタレ! 何ちゅう激ヤバ発言をしてるんだよ。マンション全体にクソ迷惑がかかるだろがい!」

「むむぅ、んじゃアレは? 『ブルルゥウウ』っていうやつ!」

「『闘牛の威嚇』もダメだって、三男よ。そもそも迷宮の外で【スキル】を使うのは立派な犯罪だっつの!」


 ヒーローものに夢中な年頃の男衆に、俺は大人としてしっかりと注意した。


 今回で花蓮の家(よくある団地)にお邪魔したのは三回目なのだが、毎回毎回、同じ事を頼まれている。

 それでも一度として見せないのは、下手に探索者に憧れられても困るから、という思いもあるからだ。


 だから、たとえ三方向から引っ張られたりカンチョウされようとも……決して披露する気はありません!


「おーい皆、お昼ができたよー。お姉ちゃん特製、『ローストビーフ丼』だよっ!」


 と、しばらく不平不満を述べる男兄弟にもみくちゃにされていたら。

 キッチンにいた花蓮が、両手にお盆という出前スタイルでリビングへと戻ってきた。


 弟や妹達からは「昨日の残りじゃん!」との大合唱が起きるも――見た目と匂いは美味そうだな。

 いつも俺が作ってもらうとしたら料理上手なすぐるだったが、花蓮は花蓮で結構、料理はできるようだ。


「「「「いただきます!」」」」


 という事で、激しい遊びを切り上げての昼食タイム。

 ちょうどいい空腹具合だった胃袋に、ちょっと贅沢なローストビーフを米と一緒にかっこんでいく。


 そうして食べ終わり、食後のミルクティーを飲みつつ腹を休めていたら。


 男衆を代表して、すでにチャンバラ刀の二刀流になっていた長男が、俺とすぐるをビシッ! と指差して叫ぶ。


「モーモー重戦士に炎の魔術師め! 食べ終わったんなら――今度は三対二のチーム戦だッ!」

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