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七十話 パーティー名

「そろそろ本当にちゃんと決めないとな」


 探索が休みとなる土曜日、俺の家のリビングにて。

 パーティーメンバー三名+一匹と勢揃いした俺達は、真剣な顔つきでテーブルを囲んでいた。


 テーブル上には、いつものようにお菓子やジュース類が置いてあるが……、

 まだお昼前でもあるし、別に飲み会を開くというわけではない。


 何を隠そう、ずっと『放置したまま』だった事について決めるため、久しぶりにパーティー会議を開いたのだ。


「ホーホゥ。パーティー名か。そういや忘れちゃってたな」

「『ミミズクの探索者』パーティー。これは正確に言うと先輩の事ですしね」

「だからちゃんとしたパーティー名を決めよう――って事だね!」


 ――そう、今日の議題はパーティー名についてだ。


 すぐるの言った通り、『ミミズクの探索者』というのは俺の異名だしな。

 うちには魔術師と従魔師もいるのだから、いつまでもこの呼び名ではちょっと違うだろう。


 実はギルド総長の柳さんや受付嬢の日菜子さん、武器・防具屋店長の泰山さんなど、俺達と関係のある人達から、


『いい加減に正式なパーティー名を決めれば?』的な事を言われていたのだ。


「というわけで今日決めるか。んじゃ花蓮、書記を頼む」

「ほいほい任せてー」


 パーティー名を決める会議は、リーダーの俺が進行役で、字が上手い花蓮が書記係を務める。


 俺達にとってはお馴染みの、ズク坊のお絵かき用に買ったホワイトボードに、どんどん候補を書き出していく感じだ。


「それではズク坊にすぐる。何か良い案はあるか?」


 まずズク坊とすぐるに聞いてみると、やはり先陣を切ってズク坊が手(翼)を勢いよく上げる。


「『モーモー倶楽部』ってのが良いと思うぞホーホゥ!」

「いやズク坊、それだとまた俺だけにスポットが当たってるぞ」

「あ、たしかに。ホーホゥ。じゃあ『サンシャイン探索者』はどうだ?」

「それもうパーティー名の感じがなさすぎだろ。他の人達にウケ狙いだと思われちゃうぞ」


 自信満々に意見を出すズク坊に、俺は考えるまでもなく却下の判断を下す。


 ……つうかズク坊よ。それ絶対、どっちも最近お気に入りの芸人から取っているだろ。


 ダ○ョウ倶楽部とサンシャイン○崎。

 さすがはバラエティ好きだけあって(俺の影響だけど)、ベテランから若手までよく知っているな。


「では僕からも……。『闇を切り裂く三銃士』、なんてのはどうでしょう!」


 次にすぐるが、鼻息荒く案を出してきた。


「ほう、その心は?」

「迷宮という暗くて危険な地下世界をものともせずに進む三人――。僕自身、『火ダルマ』で闇を照らし切り裂いているので――ピッタリかと!」

「バカタレすぐる! 三銃士それだと俺がカウントされてないぞホーホゥ!」

「あっ、すいませんズク坊先輩! ええとじゃあ……『天割り大地揺るがす人獣軍』はどうでしょう!?」


 ズク坊にファバサァ! と頬を叩かれながら、すぐるが続けて候補を出す。


 ……ううむ、すぐるよ。何だかお前のパーティー名、変に説明的というか何というか……ナルシストっぽく感じるのは気のせいか?


 あとちょっと堅苦しい感じもあるな。

 すぐるは真面目だからきちんと考えてくれたとは思うが……ここまではナシか。


「フッフッフ。じゃあ次は私の番だね!」


 一応、ズク坊とすぐるの案をホワイトボードに書き終わった花蓮が。

 不敵な笑みを浮かべると、キュキュキュッ! とホワイトボードに自分の案を書いていく。


究極王国アルティメットキングダム』。

夢幻守護兵(ドリームガーディアン)』。

超爆発攻撃団(ビッグバンアタッカー)』。


 ……うん。花蓮よ。もういいって。

 全部横文字だしやたらめったら強そうだし……とりあえず却下です。


 案外、ド天然からの神センス! を見せるかもと密かに期待したのだが……。


 中三女子な見た目以下の、まるで小学生! 偏差値『67』の頭の良さはどこへやら!?

 天然がそのままズレた方向にいってやがりますよ(泣)。


「ええいお前らっ! 揃いも揃って全然ピンとこないっての!」


 まさかここまで酷いとは……。

 俺は思わずリーダーとして注意して、他のパーティーがどんな名前なのか、ネットを見せながら会議を進める。


 ……が、しかし――。


「『アニマル決死隊』だホーホゥ!」

「『狂い咲き乱れる月花団』はどうですか先輩!」

「『黄金流星ゴールデンシューティングスター』っ!」


 もうわざとやっているのか? と思うくらいに、揃いも揃ってガンコなまでの塩センス。


 その後も、絶対にしたくないパーティー名のオンパレードで、結局、ほとんど俺が主導で決める事に。


「俺達には似合わないからカッコつける必要はなし。命懸けだけど和気あいあいとしてるから、探索者というより『学生の集まり』って感じだし……」


 乱れ飛ぶ仲間の意見をスル―しつつ、一人思考の海に入っていく俺。


 ――そうして、ホワイトボードの両面が真っ黒に埋め尽くされようとした頃――。


「んじゃ、これに決定しようと思う」


 言って、俺はホワイトボードをコン、と叩く。

 それを見て、散々意見を出していたズク坊、すぐる、花蓮はと言うと……、


「むむ、異議なしだホーホゥ!」

「僕も右に同じです!」

「うん。オッケー!」


 理由も説明したところ、全員が俺の案に賛成してくれた。


 ……ふう、一時はどうなるかと思ったが無事に決まってくれたか。


 さて、んじゃ決まったのならもう一仕事。

 正式に登録するために、探索者ギルドに行くとしますか!


 ◆


「え? 本当にこれでいいの……?」


 俺が提出したパーティー名が書かれた用紙を見て、受付嬢の日菜子さんが聞き返してくる。


 ここは『上野の迷宮』担当の探索者ギルドではなく、横浜の方の探索者ギルドだ。

 せっかく決まったのだからと、緑子さんを通じて仲良くなった日菜子さんに直接、提出しようと思ってこっちに来ていた。


 だから別に、命名記念に皆で中華街に行こうというのは……あくまでついでだぞ?


「はい。色々とヤバイ案があった中でこれに決めました!」

「そうだったのね。……まあでも、太郎君達のパーティーの雰囲気を見たら合っているかもね」

「ありがとうございます。俺も雰囲気的にこれがベストかなー、と」


 俺は後ろのイスに座って待つすぐると花蓮、そして右肩のズク坊を見る。


 最初こそ驚いていたものの、日菜子さんも納得顔だ。

 他にも候補(全部俺のやつ……)はいくつかあったが、これが一番背伸びしている感じがないからな。


「分かったわ。それではこの――『迷宮サークル』で登録しておくわね」


 美しき笑顔で言って、素材を換金する時と同じように、日菜子さんは受付の奥に入っていく。


 ――そう、『迷宮サークル』。

 これが激論の末に決まった、俺達の正式なパーティー名だ。


 俺は大学時代、サークルには一度も入ってはいなかった。

 でも、もし入っていたらこんな感じかな? と思うような印象を、パーティーでの探索で感じていたのだ。


 だからサークル。

 ○○団とか○○隊、チーム○○というのが比較的多い中、俺は何の躊躇いもなく選択した。


 もちろん、全然強そうじゃない(むしろナメられそうな?)名前なのは承知の上だが……。


 命懸けでも毎回楽しく探索を!

 そんな目標があるパーティーには、この緩い感じはピッタリな名前だと思う。


 とにもかくにも、これで今日から俺達は『迷宮サークル』だ。


 そのリーダーとして、改めて気が引き締まる思いの俺は――静かに決意を口にする。


「目指せ充実の探索者ライフ。今まで以上に楽しくたくさん稼いでみせるさ」

やっと正式なパーティー名決定です。

作者のネーミングセンスについては……温かい目で見ていただけるとありがたいです(汗)。

次は筆休め的な閑話で、すでに書いてあるので明日投稿する予定です。


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