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六十八話 装備一新

装備パワーアップ回です。

「ずっと放置だったからな。ここらで一気に買い替えますか!」


 広島から帰ってきた翌日。

 俺達『ミミズクの探索者』パーティーは、いつもお世話になっている武器・防具屋の前に来ていた。


「岐阜でもそうでしたが……もうコレでは頼りない感じがありますしね」

「私なんかセットのやつだからなぁ。ちょっと無頓着すぎたかも」


 今回の俺の提案について、すぐると花蓮の二人は二つ返事で了承していた。


 まあ、そりゃそうだよな。

 潜る階層が深くなれば、必然的に相対するモンスターは強くなる。


 となれば、すぐるの『レッドアラクネの糸ローブ』はもう防具としてはイマイチだ。

 いくら後衛と言っても、とっくに買い替えの時期に来ていた。


 一方の花蓮に至っては……いまだに『一般探索者セット』。


 二ヶ月の鍛練期間で『新人セット』から買い替えてはいたものの、特に危険らしい危険もなかったがために、なぜかずっとコレで押し通していた。


「(やったぞ! 久しぶりのワンダーランドだホーホゥ!)」


 と、右肩のズク坊が小声ながらもテンション高く言う。


 興奮気味に、柔らかくも力強い翼でファバサァと俺の頬を撫でてきた。


 ……ズク坊は結構、この武器・防具屋が好きだからな。

『追い風のスカーフ』を装備して以来、野々介さんの居酒屋と並んでお気に入りの場所らしい。


「はいはい。今から入るから大人しくしなさいな」


 急かすズク坊を微笑ましく思いながら、俺達はいざ店の中へ。


 すると、すぐに悪○商会みたいな――強面の店長がやってくる。


「おう、太郎達か。頼まれていたやつはきっちり用意してあるぞ」

「あ、泰山さん。『プラチナ合金アーマー』の時といい……無理言ってすいません」

「何、構わないって事よ。お得意様の要望に答えるのが商売人ってもんだ」


 店長で飲み仲間でもある佐藤泰山さんに連れられて、俺達は防具コーナーへと入っていく。


 今のやりとりを聞いての通り、実は昨日の内にちょっと頼んでいた事があった。

 すぐるのやつのみ一部『オーダーメイド』で……泰山さんも職人さんも仕事が早いな。


「――ほれ。これが頼まれていたやつだ」


 そうして見せてもらったのが、一目で高級そうだと分かるワインレッド色のローブ。

 店の電灯の光をこれでもかと反射するほど艶やかで、肌触りも良さそうな鱗で出来たローブだ。


 現在の『レッドアラクネの糸ローブ』と比べたらぶ厚い感じがあるも……まあ、『三千七百万円』という値段から見てもまず軽いだろうな。


「『ボルケーノシャークの鱗ローブ』。んで注文通りに『オイルフロッグ』の油でコーティングの加工をしてあるぞ」

「ありがとうございます。では早速、試着してみますね」


 泰山さんの説明を受けながら、すぐるがワクワク笑顔で試着を始める。


 その間に……俺からもちょっとだけ説明を。


 このオイルフロッグの油(『底なし油』と言うらしい)でのコーティングこそ、本来はないオーダーメイドの部分。

 この加工を行う事により、【魔術武装】において『纏う炎の勢いが増す』のだ。


 つまり、すぐるの防御面の強化が目的である。

『火ダルマ』なすぐる専用の、炎上注意な危険なローブというわけだな。


「うん、しっくりきてますね。ここで使うわけにはいきませんが……もう火力がアップした気分です」


 すぐるは言うと、ローブを脱いで丁寧に畳んでからカゴの中へ。


『三千七百万円』という大金に全く反応しないところを見るに……ふむふむ。

 俺も含めて、すぐるも命を預ける装備に関しては金銭感覚が大胆になってきたな。


 とまあ、そんなこんなで魔術師の装備が決まったので。

 お次は花蓮、いまだに『一般探索者セット』な従魔師の番だ。


「ようし、私は何にしようかなー?」


 花蓮はルンルン気分で防具コーナーを進み、ローブがあるエリアから鎧が置いてあるエリアに。


 ……防具と言っても着るものだからな。

 だから俺は、女子特有の長い買い物に付き合う気で待とうとした――のだが。


 思った以上に男っぽい性格なのか、ビシィッ! と。

 花蓮は一つの鎧を指差して、大して悩まずに即行で決めてしまう。


「ほう、『鉄の葉(アイアンリーフ)の軽鎧』か。花蓮の嬢ちゃんは見る目があるな」

「ふっふっふ、でしょうオジキ! 軽さ、丈夫さ、動きやすさ……どこから見てもお値打ちものだね!」


 なぜかしてやった顔で胸を張る花蓮。


 他にも良さげな防具はあるのに、鉄色の葉っぱが重なって造られた、一風変わった(芸術的とも言う?)軽鎧を選んだのだった。


 鉄の硬さに葉っぱ並の軽さが特徴で、値段の方は『七百二十万円』。

 後衛で従魔師という点を考えれば、装備としては十分と言えるだろう。


――あ、ちなみに強面な泰山さんを『オジキ』と呼ぶのは……まあ花蓮だからOKという事で。


 そうして、花蓮もパパッと試着を済ませたところで。

 いざ二人揃ってお会計――ではなくて、『もう一つ』あるものを買う事に。


「これだこれ。前に見た時に覚えてたからな」

「ホーホゥ。これならフェリポンにも装備できそうだな」


 俺とズク坊はうなずき合い、防具コーナーのすぐお隣。

 店内でもっともキラキラしているアクセサリコーナーから、それを手に取って二人のもとに戻る。


『擬態の指輪』。

 店には従魔用の装備などもあるので、銀色に輝くアクセサリ系の一つを持ってきた。


 値段は『八十五万円』で、肝心の効果は迷宮のモンスターからの敵意の減少。

 従魔になると、人間と同じくモンスターに積極的に狙われるようになるが、『同じ迷宮内のモンスター』だと誤認させるものだ。


 絶対ではないものの効果はあるため、安全面で装備しておいて損はない。


 まして戦闘力が低いうえに回復役だからな。

【気配遮断】を持つズク坊に次いで狙われない立ち位置ってのはかなり助かる。


 あとフェリポンは体長十五センチ程度なので、指輪を腕輪のようにハメる事になるが……そこら辺は問題なし。


 もう一体のスラポンに関しては……まあ、その巨体と形状で合うアクセサリがないので……残念。


『キュルルルゥ♪』

「おおっ、フェリポンも喜んでるよバタロー!」


 小さな従魔なので、『従魔召喚』で外に出した花蓮が早速、試着させてみたところ。

 右腕につけられたフェリポンは嬉しそうに飛び回り、それにつられてなぜかズク坊まで店内を飛び回る。


 ……よし、嫌がってないなら大丈夫そうだな。

 スコットフェアリーの美しい銀髪と指輪の銀色も合っているし、見た目的にも大変よろしい。


 このアクセサリに関してはリーダーである俺の奢り。

 これからフェリポンに頼るケースは多いだろうし、気前良く払ってパーティーの安定をさらに高めよう。


 というわけで、これにてお買い物は終了。

 現在の俺達『ミミズクの探索者』パーティーの、最新の装備一覧はこんな感じだ。


 俺――『プラチナ合金アーマー』(八千九百万円)。

 ズク坊――『追い風のスカーフ』(五十四万円)。

 すぐる――『ボルケーノシャークの鱗ローブ』(三千七百万円・特別加工あり)。

 花蓮――『鉄の葉(アイアンリーフ)の軽鎧』(七百二十万円)。

 フェリポン――『擬態の指輪』(八十五万円)。

 スラポン――なし。


 もちろん、今回も泰山さんに値段を勉強してもらった。

 

 そうして装備を整えたら、あとはやる事は一つ!


「じゃあこのまま直行で――久々のホームに潜りますか!」

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