表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/233

五十六話 新たな鎧

100万PV達成しました!

これも読んでくれている皆様のおかげです。

投稿を始めた時は、1万もいけばいいかなと思っていたので、本当に嬉しく励みになります!

6/8 新装備について大幅に修正しました。

「っあー。激しくなってきたな……」


 作戦開始三日目。

 俺達は二層の深くまで進攻して、激しい戦いの中に身を置いていた。


 その証拠が俺の『ミスリル合金の鎧』だ。

 二日目午後の戦いで右腕部分が大きくへこみ、初めて重度の損傷を負ったのだが……、


 奥へ奥へと進むにつれて、三層に近づくにつれて。

 その損傷を負わせた原因、二層最強格のローズタンク(本来は五層モンスター)の割合が増していた。


 結果、ただの『薔薇祭り』。


 幸い『スキル持ち』に当たる事はなかったが、その耐久性と数から白根さんとクッキーも含めた激戦となる。

 そうなれば自然と一対一が多くなり、鎧の方は順調に損傷個所を増やしていく。


 あの五本の蔓を一本に集束させた必殺の槍は、どいつもこいつも個体差なく強烈だった。


 ……まあ、その点については想定済み、すでに手は打ってあるけどな。

 お世話になっている武器・防具屋の店長、佐藤泰山さんに連絡をしていた。


 緊急で『新たな装備』を用意してもらい、さらにギルド関係者も動いてくれるらしく、今日の午後には届く予定になっている。


「だからそれまでの辛抱! ――で、ズク坊。次はどっちだ?」

「二十メートル先の丁字路、その左右どっちにもいるぞ。それぞれ二体づつ、全部薔薇の怪物だホーホゥ!」

「くっ、またかい!」


 俺は『ミルク回復薬』をがぶ飲み、ダメージというより疲労を軽減させる。


 まだ【過剰燃焼(オーバーヒート)】は温存しているものの、『狂牛ラッシュ』で突撃と後退を繰り返しているからキツイのだ。


 とはいえ、別にマイナスな事ばかりでもない。


――『十八牛力』。

 ひたすら薔薇の蕾と花びらを散らせていたら、ここに来て二牛力も上がっていた。


「さァ、また一戦といこうじゃねェか。昼までには最終ポイントまで到達するぞ!」


 白根さんの言葉を受けて、再び気合いのスイッチを入れ直す俺達。

 すでに緑の霧の先にある丁字路からは、不気味に揺らめく蔓がいくつも見えている。


 美味しいホテルの昼食にありつくためにも、あとひと踏ん張り。

 敵の姿を確認した瞬間、電撃と竜巻と爆炎と激震が迷宮内に響く。


 もう何度目かも分からない、派手な開戦の狼煙は上がった。


 ◆


「ふぉ、ふぉおおおお!」


 薔薇狩りを終えた三日目の午後。

 昼食を取ってから戻ったホテルの部屋で披露された『それ』を見て、俺はバ○タン星人みたいな声を上げてしまう。


 まあそれも無理はない、と言わせておくれ。

 なぜなら久々に、俺の少年心をくすぐるものが目の前にあるのだから!


「ほほォ、こっちはこっちでカッコイイじゃねェか」


 興味を持って見に来た白根さんが唸る。

 同じくズク坊、すぐる、クッキーも、ベッドの上に置かれたそれに視線を注いでいた。


 東京の泰山さんから送られてきた、俺の新たな装備――『プラチナ合金アーマー』。


 白根さんのレイピアの素材である『オリハルコン』と比べたら少しだけ落ちるものの、

 特殊加工によって、『ミスリル』以上に硬いさらなる夢の金属『アダマンタイト』を含んだ、プラチナをベースに造られた鎧だ。


 また鎧の表面には、モンスターの特殊な唾液で薄いコーティングもされているらしく……魔法にも強いらしい。


 形状については『ミスリル合金の鎧』と同じく西洋の騎士風。

 露出しているのは目の部分だけで、ガッチリと全身を纏ってくれそうだ。


 光沢ある明るい銀色も同じで、違うとすれば『突起部分』か。

 両肩、両肘、両膝の計六ヶ所に、円錐状の棘みたいなものがついている。


 そして、気になるお値段の方はと言うと――『八千九百万円』。

 かなり高く、『ミスリル合金の鎧』(二百二十万)と比べたら一気にハネ上がったが……命を預けるものだからな。


 それにこれでも泰山さんに色をつけてもらった結果だ。

 貯金もあるんだし、今回の作戦の報酬(五千万)も入ってくるから全く問題ない。


「んじゃ早速、身につけてみますか!」


 おもちゃを与えられた子供のように、俺はテンション高く装備を手に取っていく。


 胸、腰、脚、腕、最後に兜と、全てハメていけば重戦士の完成だ。


「「「「おおおー」」」」


 そんな俺の姿を見て、見物人達からたまらず感嘆の声が上がる。


 ホテルの部屋の一室にて、ちょっとしたお披露目会が行われましたとさ。


 ◆


 ――さて、では気を取り直して。

 装備を一新させた俺は、午後の部も元気に迷宮内を進んでいく。


「『高速猛牛タックル』ゥウウ!」


 遭遇したデュラハンを剣もろとも屠り、『プラチナ合金アーマー』の具合を確かめる。


 ……うん、何の問題もないな。

 足も腕も動きを阻害されないし、返ってくる衝撃に対しても頑強の一言。


 足の裏の部分も十八牛力、推定『十四・四トン』の重さをしっかり支えてくれている。

 さすがはアダマンタイト……含まれる量は少なくても、防具としてとても素晴らしい。


「前のやつより良さげだな。じゃァ、残りも少ねェしノンストップでいくか!」


 白根さんの号令で、『ミミズク&ハリネズミ合同パーティー』は進撃を開始。

 午前中までに切り開いた(もちろん『奇跡☆の狙撃部隊(ミラクルスナイパーズ)』と『血盟の牙』のおかげもある)道を進み――最終ポイントの広場へ。


 もう残り少ない二層、ここが終わればまず第一段は階終了だ。


 最前線チーム(五、六層)と中間チーム(三、四層)も、俺達と同じく仕事を完遂できるらしく、もう三~六層まで上がっても仕事は残っていない。


 その後の事、『岐阜の迷宮』後半となる七層以降は、ギルド総長の判断を待つ事になる。


 最前線に組み込まれるか、中間の方に組み込まれるか。


 とにかく最後方チームはこれで『解体』なので、白根さんとクッキーとは最後かもしれないから頑張らねば!


 そんな感じで気合い十分、空回りする事もなくモンスターを撃破していく。

 装備を新調させる原因となった、ローズタンクのあの必殺の一撃もギャィイン! と弾き、傷一つ受けずに『狂牛ラッシュ』で萎ませる。


 その進撃の途中、久々に青く輝く光の六面体、【スキルボックス】が出現するも、

 俺も含めて全員の枠が埋まっているので、泣く泣く断念するハメになった。


【白銀のオーラ】。

 全身に白銀色のオーラを纏うという、せっかくカッコイイ【スキルボックス】が出て女子にモテそ……いや何でもない。


 とにかく、あと少しなんだから引きずらずにいこう。

 白根さんの「おォ、こりゃ『アイツ』と同系統の【スキル】じゃねェか」という発言は気になったが、薔薇が咲いていたので思考を戻す。


 ……と、ここで。

 後方で索敵に大忙しだったズク坊が――勝利を確信したような声で叫ぶ。


「確認できる敵はあとわずか! 皆の者いくぞホーホゥ!」

次回は閑話となります。

すでに書いてあるので明日投稿の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ