百四十七話 白熱! パーティー会議の続き
「いや、ここは『ツインブレードザウルス』でどうだ!? 頼りになるアタッカーになると思うぞ!」
「待てバタロー! 俺は『ナイトメアキング』を強く推すぞホーホゥ!」
「お言葉ですが先輩にズク坊先輩! やはり『フラワーセイント』の方がよろしいのでは!?」
「バカタレすぐポン! あの子はやたら眩しいから! 私のオススメは『マウントスフィンクス』ちゃんだよっ!」
福岡までばるたんの【スキル】を取りに行った翌日。
仕切り直しで始めた『四体目の従魔』についてのパーティー会議は……ご覧の通り白熱していた。
俺も含めて、皆が手に持つポッキーを指し棒みたいにして持論を展開。
すでに三十分近く経とうとしているが、いまだ候補すら絞り込めていない。
「……おめえら少し熱くなりすぎだ。ちょっと飲みものでも入れてクールダウンしろって」
と、ここで。
頭の上のばるたんのお言葉により一旦、休憩に。
お茶やジュース(俺は飲むヨーグルト)を飲み、一息ついてから再び会議を再開――させるとまた同じ展開になりそうなので。
よし、ここはリーダーの俺の出番だな。
「聞いてくれ皆。んじゃこうしよう。とりあえず三体ずつ候補を出してくれ。俺とズク坊とすぐると花蓮、その全十二体の中から選んでいこう」
「ホーホゥ。分かったぞバタロー」
「了解です先輩」
「うむうむ。それでいいでしょうっ!」
というわけで、まずは各自の絞り込みから(今さら)。
ちなみにばるたんは迷宮関係は専門外と、俺の頭の上でじゃ○りこを食べながら観覧希望となっている。
――――――――…………。
そうして十五分後。
どうにも『指名首』は優秀で魅力的な種族が多いからか、また時間をかけて俺達は何とか候補を絞りだした。
全十二体の候補モンスター。
前衛アタッカーというポジション自体は決まっていたので、全て高い攻撃力と防御力(もしくは回避力)を持つモンスターとなっている。
「さて、ここからどうするか……」
「先輩。一気に減らすとまた議論が白熱するので、とりあえず一体ずつ候補から落としていきませんか? ……バリボリィ!」
「ふむ。たしかにそれが一番かもな」
ポテチ五枚を一気食いしたすぐるの提案により、一体ずつの脱落方式に決定。
一位からドベの十二位まで。
出揃った十二体に各自ポイントをつけて、最も獲得ポイントが低い候補を除外する事に。
「えっと、この子にはバタローが二点(十一位)で、ズク坊ちゃんが五点(八位)。すぐポンが十点(三位)で、私は十二点満点(一位)っ!」
普段はズク坊のお絵かき用のホワイトボードに、書記を務める花蓮がキュキュッとペンで書いていく。
……その結果、まず一回目の投票で落ちたのは。
「ホーホゥ!? バカな、俺が選んだ『マーシャルオウル』が真っ先に落ちるとは……!」
「まあウチはミミズクがいるからな。フクロウはいらないって事だろ」
残り十二から十一へ。ズク坊の手持ちが減って二体に。
「くっ!? 次は僕の『ミスリルフィッシャーマン』ですか……!」
「仕方ないって。というかアレ、水系だからすぐると相性悪いだろ」
残り十一から十へ。すぐるの手持ちも減って二体に。
「何とっ!? もう私の『メガジラフ』ちゃんが消えるなんて……!」
「だってコイツ巨大すぎるだろ。つうか花蓮の選んだのって全部デカくないか?」
今度は花蓮の候補がアウト。残りは全部で九体だ。
よしよし、順調順調!
まだ俺だけホワイトボードに候補が三体とも残っているぞ! ――と、そう心の中でガッツポーズをしていたのも束の間。
「――お、おのれ!? 選びに選んだ俺の候補が次々と……!」
ここからまさかの二体連続アウト。
一体何が悪かったのか? センスがアレって問題なのか!?
ついさっきまでの余裕から一転、真っ先に俺が土俵際まで追い込まれてしまう。
……だが、まだまだァ……ッ!
「――すぐるの『ディーゼルデビル』がアウト!」
「――花蓮の『ハングリーサイクロプス』がアウトだぞホーホゥ!」
「――ズク坊ちゃんの『グリムレオ』がご退場っ!」
「――ああッ!? 僕の一押しの『ダーティーオーガ』が! これでついに手持ちが……くッ!」
まず我ら『迷宮サークル』の魔術師、すぐるが推した候補三体が全滅。
そして次に、悲痛な叫びを上げたのは――従魔師の花蓮だ。
「こ、ここまでかっ……! 私の『ベヒモス』、ベヒポンが……」
これで二人が脱落。残すは一体ずつで二人のみ。
「「ッ!」」
俺とズク坊は睨みあう。
普段はばるたんも含めて仲良しの相棒、いや『家族』だとしても……!
リビングを包む一瞬の静寂。すでにいつもの和気あいあいとした空気はない。
「負けられない戦いがここにはある。沈めズク坊ぉおおおおおおお!」
「断るッ! バタローの方こそ倒れろホーホゥーーーーー!」
俺はポッキーを剣の切っ先のようにズク坊に向ける。
かたやソファの上に移動していたズク坊は、威嚇するようにファバサァ! と翼を目一杯に広げた。
――ついに最後の審判が下る。
俺の推すモンスター(推しモン)は……もちろん俺と、花蓮の票が。
ズク坊の推すモンスター(推しモン)は……ズク坊とすぐるの票が入った。
最終決戦の結果は二対二。まったくの互角だ。
となれば、この戦いに終止符を打つ者となるのは――。
「……ばるたんよ。さあ選ぶんだ。そしてズク坊、勝っても負けても恨みっこなしだぞ!」
「もちろんだ! いざ尋常に『ばるたん勝負』(?)だぞホーホゥ!」
果てして勝つのは人間かミミズクか。
その運命を委ねられたザリガニは、俺の頭の上でカチカチ! と鋏を鳴らす。
「ったく、こうなっちまったら仕方ねえ。……なら選ばせてもらうぞ。覚悟して聞けよおめえら!」
瞬間、ばるたんの真っ赤な姿がススーッと消える。
【透明人間】を発動したようで、俺の背中を伝って下りたと思ったら、
大量のお菓子が広がった、テーブルの上を歩く『透明モード』なばるたん。
その中央にドン! と置いてある『モンスター大図鑑』が、まるで怪奇現象かのようにペラペラとページを捲られていく。
「「「「……!」」」」
ゴクリ、と皆の唾を飲み込む音が鳴る。
直後。とあるページが開かれたまま止まり、ばるたんの姿が再び無から現れる。
「俺が選んだのはこっちだ! 『迷宮サークル』の四体目の従魔はコイツにしようじゃねえか!」
叫び、ばるたんはカチカチ! とノーサイドの鋏を鳴らす。
続いてリビングに響き渡ったのは――選ばれた者の勝どきの声。
「ホーホゥ! やったぞ! 記念すべき初『指名首』は、俺の推しモンに決まりだぞホーホゥーーー!」
いろいろと出たモンスターの名前については……生温かい目でお願いします(汗)。