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僕というヘタレ

人間って不平等だ。容姿が整っていて異性にチヤホヤされる奴もいれは、一生自分の容姿に不満を持って生きる人間もいる。明快な頭脳を持って生まれてくる人間もいれば、自分の名前でさえ書いても書いても覚えられない人もいる。大企業の御曹司として大事に育てられる人もいるし、育児放棄や貧困などで親から捨てられる人間もいる。




_______僕はどうなんだろう。


スポーツ、成績も人並み、加えて中肉中背の"平均少年"という宿命を背負って生まれてきた僕、小池陽樹こいけはるき。きっと世界の基準で見ればそうと恵まれているはずだ。かといって何でも平均というのもつまらない。欲張りかもしれないが、人間、欲には忠実だ。

しかしある日、僕は運命的な出会いを果たす。世界的大ヒットを誇る冒険系オンラインゲーム『ヴァル・クロニクル』通称ヴァルクロだ。

ヴァルクロはなんの取り柄もなかった僕をクラスでナンバー1の座に置かせてくれたのだ。根拠もないが確信できた。 これは運命的な出会いだと。



しかし…





「嘘だ!そんなことあり得ない!」


こんな大声を出したのはいつぶりだろう。人生の約14年間を大人しい奴として送ってきた僕にいきなり声を張るという事は難しかったようで、少々声が裏返ってしまった。


「それができるんだよぉ。勝負あったな小池」


勝ち誇ったような笑みを浮かべて笑みを僕を見下ろしているのはクラスメイトの田原たわらだ。

どこその製薬会社の重役の息子らしい。


田原の言葉に、どんな卑怯な出を使ったんだ!_________と叫びそうになったが、周囲のクラスメイト達の「朝からうるさい迷惑な……」と言いたげな視線に気づき、そう言えばここは朝の教室だという事を思い出す。


「ヴァルクロを三ヶ月をもやってる僕が半分も進めてないんだ。たったニ週間前から始めた田原が全クリできる訳がない。どんな方法を使ったの」


意識して声のトーンを下げたつもりだが、声を出し慣れていない声帯には少々難易度が高い。数人に睨まれた。


「楽しんでプレイしてたら終わったんだよ、強いて言うならちょぉっと裏ワザ使ったくらい」


裏ワザ?ああ、課金と攻略本の事か。そんな事して何が面白いんだ、というのが僕の意見だ。

ちなみに僕は攻略本も持っていないし、課金も絶対にしないと決めている。

突破口が分かってしまったヴァルクロをプレイするなんて、正解を全て知っている間違い探しをするのとまるで一緒だ。

それに、遊びに金を注ぎ込んでいるなんて知れたら母に何されるかだいだいの想像はつく。僕はリスクは避ける派の人間だ。


「旅立ちの村からやり直しだぁ、あーつまんねぇ」


田原がいかにも悔しそうに机を叩くが、演技力はまるで素人だ。

つまんないならログアウトすれば、という憎まれ口は内心で呟く。ここでガキ大将たる田原に立ち向かっていけるほどの勇気を僕は持ち合わせていない。



「……いつかお前にヴァルクロで勝ってやるよ…」


その言葉が自分の口から出た事に気付いたのは田原が鬼の形相でこちらを睨んでいたからだ。

どうやら僕の声量調節機能が狂ったらしい。全く、何て使えない声帯だ。おかげで僕の額は冷や汗たらたらだな訳で。


「お前ごときにオレ様が負けるなんてあり得ねぇ」


「そ、そ、そんな事やってみないと分からないじゃないか!?」


疑問形になったのは言い切れる自信が無いからだ。しかし、ここまできたらもう意地である。


たかがゲームで、何て思う人もいるかもしれないが、生粋の平均体質である僕にとって、ヴァルクロは初めて他人に差を付けられた誇りなのだ。簡単に引くわけにはいかない。


「そこまで言うなら受けて立とうじゃないか!!!!」

「お、おうともよ!!」







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