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花園で笑う  作者: 宮澤花
第3部 対決
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9 懺悔 ~千草 


 百花園までは電車で二時間近くかかる。

 その遅さに歯噛みしながら、私は考えている。


 撫子にメールで連絡を取った。

 向こうは私から情報を取りたくてうずうずしているが、緊急事態だと説いて聞かせて必要なことだけを聞きだした。


 薫の事件を受けて百花祭の二日目は中止になった。学校は事件が解決するまで休校。

 自宅待機し、必要ならいつでも警察の呼び出しに応じることを条件に、希望者は一時帰宅が認められている。桜花寮も既に三分の一くらいの生徒が帰宅してしまったらしい。

 学校内では忍が犯人だとか、私たち姉妹が共謀してやったのだとか、そんな噂も流れているらしいが。


『やり方が千草さんらしくありませんものねえ。千草さんなら妖精なんてかわいい名前は使わないで、ずばり<援助交際の館>とかにしますでしょう。だから私、千草さんを信じていてよ』

 と、撫子からとても素晴らしい信頼の言葉をいただいた。

 笑ってしまう。今はこんな言葉でさえ、涙が出るほど嬉しい。


 鼻をすすって次のメールを打つ。

『薫のことだけど。殺される前に、誰かと歩いていたところを見られていると思うんだけど』

 そう言葉をつづる。

 コロサレル。その文字列がたまらなく胸を切り裂く。

『その相手は仮装をした女性で、大きな被り物と体を覆う衣装を着けていた。そうじゃない?』


 さほど待たずに返事が来た。内容は以下の通り。

『すごい、大当たり。薫さんは魔女の仮装をした女の子と歩いていたそうよ。つばの大きな帽子をかぶって、黒ビニールの大きなマントを羽織って。金色の長い髪が出ていたって話だけど、きっとウイッグね。どうして分かったの? 実はやっぱり千草さんがやったの?』

 一瞬で前言を翻すところがあまりにも撫子で、また笑ってしまった。


 魔女か。なるほどね。

 全てはそうやって、落ち着くべきところに落ち着いていく。

 別に種明かしをするまでのことでもない。こんなことは、分かってしまえば当然推測できることだ。


 もう一度スマホを手に取ってメールを打つ。

『そうね。ある意味、私が殺した』

 送信して、その後は電源を切った。


 こんなものを送りつけたら撫子は、本当に私がやったと思いかねないけれど。

 私も懺悔をせずにはいられない。救いには届かないと分かっていても、自分の罪を誰かに言わずにはいられない。

 

 私の罪はあまりに深く重いから。

 せめて自分自身で決着をつけないことには、呼吸をすることさえ辛くなる。

 

 だから百花園に行かなくては。

 私たちの花園に咲いた毒花を、私はひとりで摘みに行く。



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