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断章 記憶 -3-
ヒトリジャナイヨ。
あなたは言った。
ヒトリジャナイヨ。
笑って言った。
その唇が赤いので。
私は怖くなりました。
からっぽの国のからっぽのお姫さま。
あなたの言葉は優しくて。
あなたの声は甘いのに。
私は冷たいその手を取って、
いっしょにくるくる踊れません。
あなたはだあれ。
信じていいの?
逃げ出した私の背中を、
どこまでも追ってくる黒い影。
あれと私は近いので、
もしつかまってしまったら、
歯を立てばりばり食べられて、
骨も残さず消えるでしょう。
だから助けて。
誰か助けて。
手に取れる温かさがあることを、
弱い私に教えて下さい。
お願い。
お願い。
お願い。
お願い。
私を。
助けて。




