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だ~れだ?

作者: 千代路 宮

その日俺達はただ楽しみたいだけだった。

深く考えもせずに、ただ「ノリが大事だろ!?」と言う軽い気持ちだった。

それは、いつもクラスの中でつるんで連中との、いつもの風景。いつもの日常。

何も不思議じゃない。

何もおかしくない。

何も違和感など無かった。


「なぁ!なぁ!明日の週末によ、いつものメンバーで肝試しに行こうぜ?」


突然その提案が上がった。

季節は9月。

もう夏休みも終わり二学期も始まっていると言うのに。

季節外れの肝試し大会の提案をする赤城大吾あかぎだいご


「え~…やだよぉ~、そんなの怖いよぉ…」

「ふん、付き合いきれんな…」

「小学生のキャンプの催し物かよ!?」


口々に様々な反応を示す級友達。

うっ!?と言う顔でたじろぐ赤城は、尚も諦めず説得する。


「なぁ、行こうぜ~。俺ら最後の夏休みも受験勉強とかで、みんなで何も思い出

作ってねぇだろ?何か思い出に残る事をしよ~ぜ?」


思い出作り。

それが肝試しと言うのも変な話だ。

だがその変な話だが、みんな「思い出作り」と言う言葉が響いたらしく

若者特有の好奇心、怖いもの見たさで、積極的にでは無いにしろ赤城の提案は

採用された。


「とっておきのスポットがある!!」


集合する日時と時間、そしてその言葉を残して赤城は帰路についた。



週末の夜、私達は二つ離れた町の、山の麓に来ていた。

自転車で約60分もかかる結構な運動だった。

まだ残暑厳しい毎日、夜になっても蒸し暑く、Tシャツに纏わりついた汗が不快だ。

同様に今日集まった5人も途中でコンビニで購入したジュースやお茶を飲んで

喉を潤し、涼をとっている。


「はぁ~…疲れた!この近くなの?流石にこれ以上は疲れるし嫌だよ!」

「そう言うなって!ここからすぐの場所に朽ちかけの洋館があるんだぜ!」


井内麻美いうちあさみちゃんの愚痴に、赤城君がそう話ながら

「こっちこっち!」と歩き出した。

やれやれ…と肩を竦めながらも、今日の肝試しに付き合ってくれる面倒見の良い

宇梶一樹うかじいつき君。

基本、能天気な榎谷慎一えのやしんいち君は…。うん、今日もあまり

深く考えてなさそうだ。


「お~い!オガっち!早く付いて来ないとあの2人見失うぜ?」

「あ、ごめん!すぐ行くから!」


全く。赤城の奴も突然とんでもない事を言う。

あいつの提案は、いつも思いつき過ぎるんだ。

この受験シーズンの大事な時期に肝試しなど、子供の真似事だろうに…。

じゃあ何故俺がここにいて、こいつらに付き合っているかと言われれば

口には出さないが、彼らは大事な友人なのだ。

俺の性格上素直に物事に取り組めない、斜に構えた対応をとってしまう。

我ながら難儀だ。

でも正直、何事もなく過ぎていった夏休みに物足りなさを感じていたのも事実だ。

馬鹿馬鹿しさを装いながらも、きっちりと参加した。


「おい、カジ?どうしたんよ?また難しい事でも考えてんの?」

「ふん。そうじゃない。肝試しに参加している自分が意外だと思ってただけだ」

「またまた~。カジはなんだかんだ言いながらも、毎回俺達と付き合ってくれんじゃん」

「…たまたまだ」

「本当かよぉ?」

「…しつこいぞ、エノ…」


なんだかんだと言いながらも、いつも俺達に付き合ってくれるカジは実は寂しがり屋だ。

普段はクール系を装っているけど、高校も3年一緒になってるとみんなにバレバレなんだよ。

気づいていないと思っているのは本人だけだろうしな。

気弱なオガっち事小上真奈美おがみまなみも普段は気弱な雰囲気だが、肝試しに

参加してくれる辺りは、それこそ気『胆』が据わっているのかも知れない。


「イウチー、アカギ~やっと追いついたわ。お前ら先に進み過ぎ」

「わりぃわりぃ。ちょっと先に下見もしたかったからよ」

「ついつい一緒に来ちゃったけど、また汗ばんでしまったわ」


そう言って胸にピタリと張り付いたTシャツをひとつまみし、パタパタと空気を胸元に

送り込むイウチー。その仕草にアカギと俺の視線は胸元に寄せられ


「ちょっと…?どこみてんのさ二人共!?」


後から追いついたカジはやれやれといつもの様に肩を竦めていた。



そして俺達は今日、この不思議な朽ちかけの洋館で肝試しを行ったんだ。

雰囲気はもうバッチリで、実はこの洋館は親戚の叔父さんが不動産の仕事をしていて

お盆の時に、ここの話を聞いて是非肝試しに使いたい!とお願いしたら、怪我を

しないように、物を壊さない様にするなら良いと承諾してくれ鍵を貸してくれた。

そして今日の為に予め、玄関の扉を鍵で開けておいたからすんなりと洋館に入れた

んだけどな。

みんなの「え?なんで扉が開いてるんだ?」って最初の驚きの顔は、俺にすれば

『してやったり』だ。


交代で2人ペアになって散策。勿論男女な。何が悲しくて男同士なのか。

最後に全員で一周して終了した。

終わってみれば結構良い感じで涼もとれたようだし、最後の夏の良い思い出が出来たかな?

洋館の扉を閉め、みんなには気づかれない様に鍵を閉める。


「んじゃ!これにて高校最後の夏の思い出作りは終了って事で!えっちらおっちらと

また来た道を帰ろうかね」


こうして俺達四人・・・の夏の思い出作りは終了した。

またいつかこのメンバーで何か楽しい事がしたいな。
















……

………

…………

……………

…タノシカッタネ…

バイバイ…ミンナ……


ワタシハサイショカライナカッタ。

ワタシハサイショカラココニイタ。



ワタシハ…だぁ~れぇだ?

3.4年前に携帯小説サイトに投稿した1000文字縛りで作った話を

なろう版に加筆し、改めた物です。

「おもんね、つまらん」そう思われる方の方が多いかもしれません。

でも少しでも背筋や首筋が冷っとされた方の涼となれば本望です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの後の方ですか!!…えっ?この幽霊は憑いてくる幽霊ですか?憑いてこない幽霊ですか? [一言] おおっ!!恐い!……あっ初めまして海の永帝と申します! 「同じく!中岡心じゃ!千代路 …
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