007 洞窟の中で
魔法の明かりで灯された薄暗い洞窟の中を、三人は歩いていた。
カシスと女が前を歩き、ウラクは浮かび上がる岩肌を眺めながら、後ろの方で歩いている。
「私はリシューマル・カウナよ、リシュって呼んで」
「はい。……ところでリシュさん?何故、洞窟の奥に向かうのですか?」
「……貴方達も村を見たでしょ?」
「はい……酷く荒らされていました」
リシュの顔が急に暗くなる。
「私の村は一週間前に、盗魔団に襲われた。だから私や村の人達は、この洞窟に隠れて生活をしてるの」
盗魔団。
魔法を使う窃盗団、一般的に盗賊と呼ばれる職種。
戦闘敵な一味は、村一つを破壊しつくすとも言われているが、まさにこの村はその餌食となったのだ。
「なぜ貴女一人で見張りを?」
「今この洞窟の中には、私しか攻撃魔法を使える人間がいないんだ。村の男たちは全員やらちゃったから。私がみんなを守らないと」
リシュは強く拳を握る。なんて強い女性なんだ、とウラクは思った。
「焚き火をしていたら、すぐに盗魔団に場所が分かってしまうのでは?」
「この辺りは野獣が多いから火を焚かないと、洞窟の中に入ってくるの。奴らは闇眼が利くから、人間よりたち悪いし」
「そりじゃあ、今まで盗魔団は襲って来ることはなかったのですか?」
「来たよ、何回か。でもさっきみたいに、洞窟の中から魔法を打ち続けていたら諦めて戻っていった。こう見えて私、風の魔法は得意なんだ!貴方達には破られちゃったけどっ」
そう言ってリシュは笑った。村人達を守るために自らを犠牲にしながら。
つられてカシスも微笑む。瞳の奥に強い苦悩を浮かべながら。
その後ろでウラクが体を振るわせた。それは恐怖からか、怒りからか、それとも悲しみからか。
「カシス、リシュ」
洞窟に入ってから初めてウラクが口を開いた。
「その盗魔団の所に行こう」
「そうですね。少しお灸を据えてあげなければならないようです」
二人の言葉にリシュは声を荒げる。
「何を……何を言っているの、貴方達は!相手は盗魔団なのよ!?」
彼女の大きな瞳から、一筋の光が流れた。抑えていたものが溢れ出てきた。
「下手に手を出したら死んでしまうわ!父さんや兄さんだって……私は見てることしかっ……」
リシュの声を体を震わせる。悲しみが怒りが。
「これ以上……これ以上、人が死んでしまうのは……耐えられない……」
強く弱い彼女から溢れ出る小さな悲鳴。
ウラクは唇を強くかんだ。
……知らなかった。この国で悲しみの涙が流れているんなんて。涙は止める、二度と流させない。
ウラクの指が、流れる涙をせき止めた。
リシュが顔をあげる。
ウラクは優しく微笑んだ。
「大丈夫。オレ達に任せとけ」




