3 紅色の過去
「で、どうすんだよ」シェンが億劫そうに言った。
「どうするって、ですぅ、アクロちゃん」
ジャスミンはアクロの方を楽しそうに見ている。
「はぁ、じゃぁ、ジャスミンさんは王宮で近々あるイベントがないか調べて、あれば招待状を奪ってきてください。シェンはボクと一緒に行動するか、ここで待ってる事、ハイドはシェンと同じ。」
「はいですぅ」
ハイドはシニカルに笑いながらベッドに胡坐をかいて座ったまま言った。シェンは不服そうだったが何も言わなかった。
「じゃぁ行って来るですよぉ?アクロちゃん」
「はい、お願いします、8時にまたここに集合で。」
「はいはいですぅ」
ジャスミンは、鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気を、かもし出しながら、後ろ手に片手を振りながら、出て行った。
「さぁてと、ボクはこれから、買い物に行くんだけど、どうする?」
アクロは部屋から出ようとしながらハイドとシェンの方を振り向いた。
「行く!」
シェンは眉根の皺を深くしながら身を乗り出して言った。
「待っとくぜ、かはは」
ハイドは言って、ごろりとベッドに倒れた。
「・・・・・・・・・」
アクロはそのまま部屋を出て行った。シェンが後ろをついていく。
檻の外から見える月は青く燃えているようだった。
暗い、青の闇が空を覆っていく。
フードの隙間から零れる、白い髪と白い肌が闇に映えた。
白い髪からは甘いシャンプーの匂いが漂う。
「あのさ、どうしてお前の髪って白いわけ?生れ付き?つぅか、アルビノ?」
シェンは不思議そうに聞いた。
「・・・生れ付きじゃないよ、元は赤毛だったんだ。」
シェンは燃えるような赤毛を纏ったアクロを想像した。
火の女神のようだった。サラマンダー。
「じゃぁ、どうして?」
シェンは聞いた。白い髪と違い、黒い髪は闇に消えた。
「どうして・・・答えようと思えば答えられるかな・・・それはね、ひどいストレスと憎しみで脱色してしまったんだよ。」
「お前が何かを憎むなんて珍しいな」
「そうかな」
「そううだよ」
「・・・まぁ、ボクにも両親ってもんが居るからね、ちょっとしたいざこざがあったんだよ」
「いざこざねぇ」
「そっ、いざこざ、いざこざ、その憎しみを晴らすために旅をしてるんだけどね」
「憎しみを晴らす?」
「復讐って感じだよ」
「復讐かぁ、でもよ、誰に復讐すんだ?」
「父だよ」
「親父かよ、なんでだよ」
「これ以上は教えられないよ、今日はちょっと喋り過ぎたかな。」
「なんだよそれ・・・何時かは教えろよ?オレ等の存在を許せよ」
「・・・?ボクが君の存在を許してないって言うの?」
「許してねぇだろ、分かり合うことは、許し合う事だ、お前は何も分からせてくれねぇから、オレもお前に分かってもらおうと思えねぇ、てこった」
「意味はよく分らないけど・・・悪かったよ、何時か話すから、今はその時じゃないんだ。」
「おう、何時でもいいぜ、待っててやるよ」
シェンは満面の笑みを、浮かべて言った。
「・・・・・・・・・・・・ありがとう」
アクロは照れくさそうにして、コートのフードを深く被った。
フードの影から見えたアクロの表情は、年相応の照れた笑顔だった。
「・・・へへへ」
シェンは楽しそうに笑う。
「ちょっと、小耳に挟んだんだけど、ここら辺に良いお店あるんだって」
「へぇ、探すか」
「もちろん」
アクロとシェンが並んで歩く。
闇に溶けた黒が、消えることの無い白を包んだ。
へい!まだまだ続くぜww