王子から婚約破棄されたおっさん(ガチ)だけど、絶対に別れない。~女と結婚したいようだが、もう遅い。お前のケツは逃がさない~
「ゲイル・ガッチメン侯爵! お前との婚約を破棄する!」
王城のきらびやかな舞踏会。 ヴァイオリンの優雅な調べを切り裂いて、第一王子シリアスの声が響き渡った。
「俺は、真実の愛を見つけたんだ!」
王子の隣には、可憐な子爵令嬢が震えながら寄り添っている。
対する婚約者――この国の騎士団長にして侯爵 ”ゲイル・ガッチメン”は、グラスに注がれた高級ブランデーを、岩のような指で弄んでいた。
無精髭の生えた顎。
正装に包まれた、はち切れんばかりの大胸筋。
そして、獲物を逃さない爬虫類のような眼光。
どこからどう見ても、四十路を越えた"ガチのおっさん"である。
「……殿下。今、なんと仰いましたかな?」
低く、地を這うようなバリトンボイス。会場の温度が物理的に数度下がった。
王子は膝の震えを必死に抑えながら、言い募る。
「き、聞こえなかったのか! そもそも、先代国王が酔った勢いで『お前のような屈強な男が息子を(物理的に)守れ』と結んだ、男同士のふざけた政略婚約だ! 俺はそんなもの認めない! 俺は可愛い女の子と結婚して、幸せな家庭を築くんだ!」
周囲の貴族たちは息を呑んだ。
確かにこの婚約は、国のパワーバランスと酒の席の悪ノリが奇跡的な配合を起こして生まれた悲劇だ。
誰もが「いつか解消されるだろう」と遠巻きに眺めていた。
――だが。
おっさんは、静かにグラスを床に置いた。
パリン、と高価な結晶が砕ける音が、処刑台の合図のように響く。
「……遅い」
「えっ」
「……もう遅いんだよ、シリアス」
「泣き虫だったお前に剣の手解きをしたのは誰だ?」
一歩。
「 毎晩、添い寝をしてやったのは誰だ?」
「暗殺者に狙われた時に盾になったのは?」
また一歩。
「……なによりも、誰よりお前の近くで成長を見守ってきたのは――」
「――そう、この俺だ」
ゲイル侯爵が一歩踏み出すたびに、床が重低音を立てて鳴る。
王子は令嬢を盾にするように後ずさった。
「あ、あれは護衛としての任務だろう! 金も払ったし、爵位も与えたはずだ!」
「金? 爵位? そんなもんが欲しいなら、とっくに隣国でも乗っ取っている。 そんな小娘と”真実の愛”だと? 笑わせる、……そんなに軽いものじゃない」
「――――本物は」
ゲイル侯爵の手が、いとも容易く令嬢を薙ぎ払うと、逃げ場を失った王子の肩を ガッツリ と掴んだ。
寄せられるおっさんの顔。
ほんのすぐ目と鼻の先には、隠しきれない加齢の香りと、年輪を重ねた中年の肌。
「それに、ずっと傍にいてくれ……そう言ったのはお前だろう、シリアス」
「ぎゃああ! やめろォ!! 俺の黒歴史を掘り返すのは!」
王子が羞恥で顔を染め、叫ぶ。
「黒歴史? お前にとってはそうでも……俺にとっては――」
王子の制止を無視し、ゲイル侯爵はそっと瞼を下ろし、かつての情景を――。
~~回想~~
幼シリアス「おじさんがぼくのこんやくしゃか! ちゃんとまもるんだぞ!」
若ゲイル「年上に対する敬意がなってねえな、まずはマナーってもんを叩き込んでやる」
幼シリアス「うわーん! 顔がこわいよー!」
――最初は、生意気なガキだと気に入らなかった。なぜ俺が子守りのようなことをしなければならないのかと。
若ゲイル「踏み込みが甘い! 剣に振り回されるな!」
幼シリアス「えいっ! やぁ! へへっ、できたー!」
――でも、いつからだ……。
若ゲイル「あん? 怖くて一人で眠れねえだ? ったく、仕方ねえ……」
幼シリアス「えへへ、ありがとう。 げいるにーちゃの手でギュってされると、心がぽかぽかして安心するんだ」
――その小さな手の温もりに。
少年シリアス「ああっ……ゲイルっ……死んじゃだめだっ! もうわがまま言わないっ! おこづかいも全部あげるっ、だから、だから……っ」
若ゲイル「……安心しろ。 死なねぇよ……。 それより、怪我はねぇか……ゴホッ(吐血)」
――自分の命なんかより、ずっと重くなったお前の涙に。
青年シリアス「ゲイル侯爵、これからもずっと傍にいてくれ。 ――僕の剣、そして盾として」
壮年ゲイル「――はっ。 仰せのままに、我が殿下」
――おれはどうしようもなく……惹かれていたんだ。
~~回想おわり~~
ゲイル侯爵は、そっと目を開くと会場すべてに響き渡るよう宣言した。
「俺はお前の為に、十数年の人生を費やした」
「他の女に目を向けず、お前という『最高傑作』を磨き上げることだけに心血を注いできた」
「性別? 年の差? そんなものは関係ない」
「俺こそが、お前の”真実の愛”なんだよ!!」
とんでもない愛の告白に、会場がざわめく。
「衆人環視の場でなにとち狂ったこと言ってんだ、このおっさん」とドン引くもの。
「私たちは何を見せられているんだ」と遠い目をするもの。
「キュ゛ッ……!!」と奇声を発し、倒れる令嬢。
その反応は様々だったが、当の王子は――。
「ひ、ひいいぃっ! だ、誰か! この狂ったおっさ……、侯爵を連れて行け!」
だが、近衛騎士たちは動かない。
彼らもゲイル直々に鍛えられた教え子たちだ。
むしろ「殿下、諦めてください。 我々も勝てないんです」と申し訳なさそうに目で合掌している。
「いいか、シリアス。 お前がどんな女と愛を囁こうが勝手だが、俺との契約書(婚約届)は魔法的に保護された国家機密だ。 破棄するには俺の承諾がいる。 そして俺は、死んでも『いいよ』とは言わない」
ゲイル侯爵は怯える王子の耳元に顔を近づけ、脂ぎった熱い吐息と共に囁いた。
「――おまえのケツは逃がさない」
戦慄する王子に、さらに言葉を続ける。
「もし俺以外の女と結婚してみろ。そんなことになれば、俺は嫉妬に狂いこの国を滅ぼすだろうな。 そうなればおまえも王子でいられない」
「俺はお前がいなければ生きていけない。 そして、お前も俺がいなければ王族でいられない。わかるな? 俺たちは、もはや運命共同体……いや、一身同体なんだよ」
「やめろォ!なんで、言い換えたっ!?」
王子の脳裏に、地獄絵図ーー自分とおっさんが文字通り”ひとつ”になる光景がよぎる。
「ああああ!! おっさんと結婚はいやだああぁぁ!!!」
そのイメージを振り払うようにして、脱兎のごとく逃げ出したが、ゲイル侯爵は悠然と、かつ猛烈なスピードでその背後を追う。
「懐かしい。 よくこうして鬼ごっこしていたものだ。 さぁ、どれだけ成長したか、見せてみろ!(歓喜)」
こうして夜会の扉が蹴破られ、月夜の庭園に王子の悲鳴とおっさんの重厚な足音が、いつまでも、いつまでも響き渡った――。
翌日、王宮からは「王子の急病につき、当面の間ゲイル侯爵の屋敷で”療養”ならびに”再教育”を行う」との布告が出された。
アッー!
王子もなんだかんだ侯爵を憎からず思っておりますので、
今は遅めの反抗期ということで、最終的にはハッピーエンド?でしょう。多分、メイビー。
「おっさんの愛、重すぎィ!」「良かった、婚約破棄された令嬢はいなかったんだね…」「むしろショタ王子に歪まされたおっさんが被害者だろ」と思った方は
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次回、『婚約者おっさん「妊娠した。」王子「(絶句)」』にて、お会いしましょう!(嘘)
※この作品はAIちゃんと共同執筆作品となります。




