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スクライディ  作者: 柊里
4/11

金と黒

「何か御用でございましょうか? 監視者(ウォッチャー)サマ?」

「相変わらずよのぅ、雄。気配を読むことには、長けておる」

かたや、嘘臭い笑み+あからさまな敬語の青年。

かたや、直毛黒髪+着物の時代錯誤な少女。

地上ならばなんとも不思議な取り合わせ、といった所か。

しかしここスクライディでは日常的な、むしろ普通過ぎる位の2人組。

人間で無いモノが集まるこの場所には、実に多種多様の外見を持つモノが存在する。

大昔の種族も、人間も、未来の生命体も、全部僕が集めた。

神の名の下、起こるべき未来のために。

とはいえ今はこれからの2人の会話だね。

なかなか面白いみたいだ。

それはつまり、盗み聞きをする価値がある、ということ。

……久々にワクワクしてきた。


 あるはずも無い雲を探すかのように、雄は上を見上げる。

 それを見つめる監視者は、意味も無くふっと息を漏らす。

 そして、何気ない口調で会話を続ける。


「雄。お主、此処をどう思う?」

まったく、こんなことを言うから、後々あんな目に遭うんですよ。

無論、それだから面白いんだけどね。

「どう思う……? なんだ、それ」

「ここに居るモノ達をどう思うか、と聞いた方が良かったかの?」


 雄は、監視者の言葉を受けて動きを止める。

 そして上を向いていた顔をゆっくりと下ろし、監視者を見つめる。

 面倒臭そうな表情から一転、真剣な眼差しへ。

 その視線を受け止めた監視者が、口を開く。


「なんじゃ、その顔は。予想もしていなかった事を聞かれたわけでもあるまい。軽く答えればよいじゃろう?『皆後ろ向きな連中ばかりでつまんねぇよ』とな」

「全員が後ろ向きな訳じゃないし、後ろ向きであることを非難するつもりは無い」

「そうじゃろうな。少なくとも、お主は違う。非難しないと言うのも、昔を思い出すからか?」

雄は監視者を見て、そして軽く目を細めた。

……シナリオ通り。

今は、監視者が優勢か。


 雄は、一言一言区切るようにして監視者に尋ねる。

 ‘なんで、お前が、俺の過去を、知っている?’

 監視者が愉快そうに聞き返す。

 ‘不思議がることではあるまい。私が誰だか忘れたのか?’

 雄は顔をしかめ、嫌そうに口を開く。

 ‘監視者サマです’

 その答えを聞き、監視者は満足そうに笑う。


「そうじゃぞ、雄。役職では創造主よりも上であることを忘れるでない」

雄は舌打ちをして、監視者を睨みつける。

心中は穏やかじゃないだろうに、その複雑な感情は微塵も出さず、不愉快だという顔だけを作っている。

「あっそ。じゃあ創造主に聞いたんだ? そりゃいいや」

口の端を上げて、生前を思い出させる表情を作り、投げやりに言った。

「また俺らをからかうネタができたってことだ。楽しいだろうね」


 監視者は、更に追打ちをかけようと、話し出す。

 ‘悲しい過去を持っていると聞いたがの。そうじゃな、例えば……’

 その言葉を遮るように、雄が口を開く。

 ‘友達だと思っていた奴に裏切られたり、親には権力を保持するための餌にされたり、挙句の果てに妖怪と仲良くなり災いの根源とみなされ殺された、とか?’


人間というのは、本当に変な生き物だ。

弱々しい生き物かと思ったら、すぐに立ち直ってみせる。

そして想像もつかないことを言ってのける。

雄も今は人間ではないけれど、まあ根本は変わらないだろう。

でも、そろそろ飽きてきたな……。

シナリオの改良も上手くいっているみたいだし、見ておく必要もないか。

今回はまだ、さほど重要なターニングポイントを作ったわけではないし。

さてと、監視者がここに来るまで待つとしよう。



 雄との会話を終えた監視者は、創造主が待つ部屋へと入る。

 そしてやる気の失せたような表情で大きなため息をつき、不貞腐れて椅子に座る。


「創造主……。お主、分かっておったのだろう?」

「さぁ、どうだろうね。」

人間が‘天使の微笑み’と称す純粋無垢を装った笑顔を見せると、黒髪の上司は納得いかないという顔をした。

「いつから、ここまで知れるようになったのだ? いつから我々を欺いておった?」

まったく、そんなに怒らなくてもいいのに。

「さぁ?……いつからだと思う?」

‘監視者は怒りをあらわにする’ね。

確かに、堪忍袋の緒が切れるという感じだね。

「上司命令じゃ! 言え!! 言わぬのなら、上に報告するぞ!」

成る程。

これが切れる、か。 

面白いな、監視者は人間的で。

そんなことだから雄に遊ばれるんだろうけど。

とりあえず言いたいことは言わせておこうか。

「創造主。……自分の立場を、解っておるのか?」

「ええ、もちろんですよ」

もちろん理解していますよ。

僕はあなたの部下であることも。


ただ、それだけではないんだよ。

あなたは僕にとって、唯一の特別な存在です。

きっと、あなたが覚えてなんていない、あの出来事以来。

僕が未熟だった頃、あなたが人間だった頃の、ね。


……今はとりあえず、また後でということにしておこうか。

僕がすべきなのは、この上司の機嫌を直すことなんだから。

監視者をウォッチャーと呼ばせるのに、何故創造主はクリエーターと呼ばせないのか。私も不思議です(笑)

だんだんとゴチャゴチャしそうな展開ですが…どうぞ気長にお付き合いくださいませ。

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