ヒカリ
雲一つ無いよく晴れた日。
久々にオレ達2班は全員揃って休暇がとれた。
こんなのはどれ位振りだっけ。
つっても、オレに日にち数えるって習慣は無いから分かんないけどさ。
とりあえずそんな訳で、三人でまったりしてた。
まぁ実際、慧はまったりっつーよりも、何考えてんだか分かんないし、霞だって今は放心状態。
で、オレは1人寂しく次の仕事のシナリオを読んでたんだ。
そんな暗い雰囲気の部屋に、11班の真麻、No.2、夢が来た。
…つーか、ドア蹴飛ばして(真麻)飛び込んで(夢)ドア立てた(No.2)ってとこだな。
「ねーねー、雄~!暇してるでしょー?お話しよー♪」
常時ハイテンション女、夢が部屋に入ってくるなり、ハートマークをぶっ放して言った。……もとい叫んでオレに飛び付いてきた。さて、今日は何秒持つか?
「それでねー、夢達、三人に聞きたいことあんの~!聞いていい??」
バカ丸出しでマシンガンのように言葉を吐き出す夢。
「実はね~一日の時間の中でどれが一番好きかってゆうことでねー」
聞いていい??とか言ったくせに、そのまま一人で喋りたおす。
「ちょっと、雄!!聞いてんの!?」
「聞いてるよ。ってか、んな馬鹿げた事聞くためにここまで来たのか?」
「うん♪答え……」
お、来たなフリーズ。
今日はいつもより早めか。仕事してきた後なんだろうな。
「雄、そろそろだと思うよ」
フリーズした夢を、無関係を装って(意味ねぇし)見ていた真麻が、焦った素振りも見せず微笑んで現状を述べる。
「いや、もう手遅れだよ」
No.2が呟いた途端に、部屋の空気が一変した。
どんな風にかってのはそちらの想像にお任せするよ。
ヒントだけ言っとくと、夢は二重人格者だ。
そして裏の夢…ユーカと言うらしいが、その子は……無言で部屋を荒しまくる。
どしゃ
どすベキッ
ドン がらっしゃー
がごつっ!!!
…………しばしの沈黙、そして
「あっれぇ? ちょっと眠ってる間に、部屋がボロボロ!! まったくぅ~」
「はいはい、お前の部屋じゃないからいーだろ」
まぁ、こうやってオレ達の部屋はボロボロになっていく訳だ。
真麻とN0.2は腹黒いから、自分たちの部屋じゃ絶対裏を出させない。
というか、裏が出てきそうだと思ったら必ずここにくるんだ。
でも、いい加減止めさせねぇと……部屋崩れるし。
え? じゃあ、ここでも裏を出させなきゃいいじゃんって?
それがさ、しないと話が進まねぇんだよ。
裏は表にも影響があるらしくて、裏が出た後の夢は若干静かになる。
その若干の差で、会話が成り立つか成り立たないかが決まるって訳さ。
無駄知識はこの辺にして、会話を続けようか。
「で?一日で一番好きな時間?」
「そーなの!答えてっ♪」
一番好きな時間、ね。
「真夜中」
「え~?No.2と同じでいいの、慧ちゃん?」
「夢。それってどういう意味?」
いや、怖ぇぞNo.2。目が据わってるし。
ホント夢は怖いもの知らずだな。
「真麻は?」
「んー、私は朝かなぁ。何か新しいことが始まりそうな感じ」
「そう」
慧が話すのは相変わらず短いし。
単語の会話してて楽しいのか?謎だ。
「でさ!雄はいつなの!?」
なんでオレに振るかね、コイツは。
……あぁ、他のヤツはあんま反応返さないから、か。
なんせいつも相手してやってる霞が無反応だからな。
ったく、仕方ねぇか。
「夕方が、好きだったよ。だけど、今は一番キライだ。」
だって、夕方は終わりだろう?
昔は一番好きだった。
尤も『好き』っていう感情なんて、最近になって名前をつけただけだけど。
好きだとか嫌いだとか、そんな事考えるのも馬鹿らしいと思っていた時もあった。
でも、オレはそれを克服したから。
今は今。昔は昔。
そう割り切れなくて悩んでいる仲間を、オレは沢山知ってるけどさ。
だけど、オレはオレだから。
苦しんで、諦めて、でも諦められなくて、割り切って、そして最後には希望を持ちな。
オレはそうやって、日の光を見れたんだから。
なぁ、慧。過去は過去なんだって、そう思えよ。
「今は、昼が好きだな」
なぁ、霞。これが運命なんだって、簡単に諦めるなよ。
「太陽の光に照らされてると、全部が上手くいきそうな気がするだろ?」
昔のオレだったら、きっと鼻で笑ってた。
全てが上手くいくなんて事ありえねぇ、って。
でも、今は違うから。
大体んな事思ってたら、こんな仕事やっていけないしな。
今日は、雲一つ無いよく晴れた日。
久々に昔のことを思い出した。
「ま、昼が雄らしいよね」
「あはは。でも全部って楽天的すぎでしょ」
No.2や真麻のからかいも、気遣いだって分かってる。
スクライディでは、過去の話は禁句だから。
「まーな。実は昔のオレは妖怪マニアだったんだよ。だから夕方が好きだったんだけどさ」
でもこの程度だったらいいだろ?
こうやってヒントを出す位、仲間として当然だしな。
「本当に、昔は馬鹿なガキだったよ」
それは、今だからこそ言えるセリフ。
絶えず冷笑を浮かべていた頃のオレからは、考えられないセリフ。
スクライディの主要キャラは、あと一人で出そろいます。
今回のヒカリは前2話と違って前向きな感じで。
私の力量じゃギャグにはできませんでしたが…それぐらいの軽い気持ちで書きました。