高校授業料の無償化の話。
平等の思想自体はいいけど、私学まで全面的に補助するというのは、正直よく意味が分からない。
恵まれない家庭環境だけど、ポテンシャルがあり、将来に活躍が出来そうな子供たちの学費を行政で全面的に支援するという考えには、十分理解もできる。
素材としては優秀なのだから、一流の私学の教育を受ける機会を与える。
それは非常に良い考えでもあるが「偏差値の低い私学」にまで同様に補助を付けるというのは、いったいどういうことなのだろうか?
賢くもないのなら、無償化された公立の方に行け。
それがどうしても嫌なら親に金を出してもらって、自費で私学に通え。
これはさすがに精神的弱者を優遇し過ぎだし、甘えと平等とをはき違えている。
この国の行政は「平等=均質」というアフォな思想にまみれ過ぎている。
平等というのは、社会的に弱い立場の人間たちも、気遅れせずに社会に参画できるようにするための「配慮」であるはずなのだが「強者にも画一的に同じ下駄をはかせる」というのは、いったい「何のための補助なのか?」といつも頭にハテナがよぎる。
これで本当に「生まれ持った格差」が是正されるとでも考えているのだろうか?
「そこはその子の努力次第」なんてことをいう人間もいるかもしれないが、それなら「これまでと何が違うの?」という話でもある。
有権者全般に対する「アピールとしての無償化」なのだから、均一に振舞うのが打ち上げた政党の発想なのだろうが、そんなものは平等でも何でもない。
東京、大阪、神奈川、京都。
無償化を決定しているのは、この4つだが、今度は近隣の地方都市在住者たちとの不平等を生み出すことにもなる。
行政機関や官僚などの上級職には、いわゆる勝ち組世帯の子息たちがズラリと並ぶわけだから、本当の意味での「弱者への理解」には、遠く及ばない部分が多々あるのだろう。
おそらく彼らの辞書における平等と、一般庶民にとってのそれとには未だに大きな乖離があるようだ。
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2025年度、都立高校を第一志望とする受験者数が、前年度比でいきなり5ポイントも下げることとなった。私学と通信制へと希望が大きく流れた結果だ。
この平等行政によって、生み出される未来。
おそらくは知性の「中間層の空洞化」がさらに進むこととなるだろう。
現状維持はおろか、社会的劣化を加速させる、形だけの平等主義。
いよいよ「何がしたいのかよく分からない社会」になってきたと捉えるべきか、もともと訳の分からないことを社会はずっと繰り返してきていて、今このタイミングで、ようやく私自身がそれを理解できるようになっただけという話なのだろうか。答えはどっちだ?
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私学進学への補助は、学校自体にもランク分けを行う必要があるだろう、普通に考えれば。
反発に対する折衝が面倒だからといって、何でもサボって均一に扱うから、この国は「膨大な無駄な予算」で自分で自分の首を締め付け続けているんでしょ、いつも。
自分の財布から出す予算なら、そんなバカな平等なんてありえないわけだが、そこを平気で無視できるのが「生まれ持っての勝ち組たち」の勝ち組たる所以でもあるのか。
そういえば、今年度から大阪の公立受験は「第二志望(※同一高校の別学科)」まで書けるようになったのだったか。すべり止めで私学に行くよりも、こっちの方がよっぽど賢いし、空き枠のある公立を上手く運用できるので良い制度だ。