蓮池の涙
冬休みが明け、3学期になった。
3学期の間中ずっと、俺の心は蓮池に夢中だった。
時には、かなりドキドキすることもあった。
あるときは、理科の実験で同じ班だったのだが、蓮池が俺に「左手の法則」を説明するために俺の手を使った。つまり、蓮池が俺の手に触れたのだ。これにはかなりドキドキした。しかし、緊張のあまり頭が真っ白になり、説明の内容は何一つ頭に入って来なかった。
そんなこんなで、もう2年生も最終日となった。
「金田、1年間ありがとう。」
蓮池が言った。
「俺の方こそありがとう。」
俺は、照れながら言った。
「金田にありがとうって言われるの、なんか変な感じ。」
蓮池は、笑いながら言った。
ところで、その時の俺達のクラスの担任が、その年をもって離任することになっていたのだが、蓮池は担任の先生に別れの手紙を渡しに言った。俺は、その光景を目の前で見ていた。
すると突然、蓮池が泣き出した。担任の先生が蓮池を慰めていたが、俺は何だか居心地が悪くなり、その場を離れた。初めて蓮池の涙を見た。
担任がいなくなるのが余程悲しかったのか、その日のクラスには蓮池の他にも泣いている女子が数人いた。
俺は、来年度も蓮池と同じクラスになれると良いな、と思った。