最悪の校外学習
夏休みが明け、2学期になった。俺と蓮池は同じ学習班で、自由研究を発表しあったりした。
様々な活動の中で、俺の心はますます蓮池に惹かれていった。しかしやはり1番忘れられないのは校外学習のときに蓮池が俺にかけてくれた言葉だ。
11月、俺の学年は校外学習で京都に行った。俺と蓮池は別の班だったが、俺の班には俺と仲の良い友達が多かった。
伏見稲荷大社に行った後、別の班と合流し、集合場所の平安神宮を目指した。しかしそこで困った事が起きた。
バスの中に人がいっぱいで、とても全員は乗れないのだ。何回待っても、人がいっぱいのバスしか来ない。俺は
「片方の班ずつでもいいから、乗っていったほうがいい。」と言った。(その時は2班一緒にいた。)
しかし、他の皆は
「片方ずつでも無理だ。」と言った。
結局、歩いて平安神宮を目指すことになった。そういえば、道中変な光景を見た。
総理大臣のポスターに鼻糞をつけたおじさんが、突如現れた軍服のようなものを着た人達に捕まり、無理やり車に押し込まれて何処かに連れて行かれたのだ。みんなで、この件について急いで移動しながらも意見を交わした。
「確かにあれは犯罪だったかもしれないけど、普通はあそこまでされないと思うな。かなり乱暴な扱いを受けてたじゃないか。」
「そもそも、あの人たちは本当に警察なのかな。普通の警察が着てる服ではなかったよね。かと言って、私服警官でもなかったし…」
「けど、話の内容を聞き取った限りは、犯罪者を取り締まる人達なのは間違いなさそうだったよ。」
結局、結論の出ぬままに道を急いだ。平安神宮についたのは、なんと集合時間の1時間後だった。
「今何時だと思ってるんだ!!」
と遅れた全員が担任の先生に怒鳴られた。到着する直前、体力が限界に達していたこともあり、少しペースが落ちてしまっていたのだが、そのタイミングだけを見た先生達は、俺達がゆっくり来たと勘違いしたようだ。
その後、他クラスの人達はもうバスに戻ってしまっていたが、クラスメイト達と記念写真を撮った。(遅れたもう一つの班も同じクラスだった。)
その時、多くのクラスメイトからは、
「お前ら遅すぎだろ。」
「何してたらそんなに遅くなるんだ。」
というような厳しい声をかけられた。
しかし、そんな中、蓮池だけは、
「金田、よく頑張ったね」
と優しく声をかけてくれた。
俺は、この一言にどれほど救われたことか。
ズタズタになった心が、ほっと温まる一言だった。
正確な時期は覚えていないが、この件があった時期か、あるいはもう少し後に、俺は、蓮池に恋をした。