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5.行き止まりの教室

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

 いったいどれほどの間、走り回ったことだろう。息も切れ、足も体もへとへとになり果てたころ、彰人はようやくある教室の前へと辿り着いた。

 壁に手をつき、深くうな垂れて肩で息をする。額や胸元に汗がにじみ出てくる。学生の頃はこんなにも早く息が上がることなどなかったのに、想像していた以上に体はいうことを聞かなくなっていた。運動不足だと痛感させられる。 

 彰人は顔を上げた。

 教室の出入口の上に掲げられたネームプレートを見れば、そこには「4-1」と書かれあった。そういえば俺も四年一組だったな、ここの教室を使っていたかどうかまでは覚えてないけれど……、などとどうでもいい事を思い出した。

 そして視線を下ろし、改めて出入口の扉へと目を向ける。

 美月らしき人影はこの教室の中へと逃げ込んだ。そして中に入ったきり今のところ出てきた様子は無い。

 ここは廊下の行き止まりにある教室だ。しかもここは三階。ここから先にはもう逃げ場はない。

「ようやく追い詰めたぞ」

 彰人は頬を伝って落ちてきた汗を服の袖で拭いつつニヤリと笑みを浮かべた。



 上がった息を無理矢理胸の奥へと押し込み、深呼吸をひとつして心を落ち着かせる。そして彰人は出入口の扉の前に立った。

 教室の出入口は、教室の前と後ろの二か所ある。彰人が立っているのは教室の前側の扉の前だ。

 彰人は横目で教室の後ろ側の扉を見る。

 美月らしき人影は、こっちが教室に入るのに合わせて反対側の扉から逃げ出そうという魂胆なのかもしれない。そんな事させてなるものか。体力的にも気力的にも、これ以上の追いかけっこはもうたくさんだ。絶対にここでとっ捕まえてやる。そして何か一言ガツンと言ってやる。そうでもしなければ気がおさまらない。

 彰人はふんと鼻を鳴らして意気込むと、扉の取っ手に指を掛けた。

 横目で反対側の出入口を警戒しつつ、ゆっくりと慎重に目の前の扉を開ける。


 カラカラカラ……

 

 幸いにも美月らしき人影は問いだしてこなかった。

 心の中でほっと一息。

 気持ちを切り替え、改めて気を引き締めて、そして彰人は教室の中へと足を進めた。 

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